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TVガイドみんなドラマ編集部
2022.11.18
✒推しの作家さま #13 ふじきみつ彦さん
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2022年10月秋ドラマから注目したオススメの作家さまは「一橋桐子の犯罪日記」(NHK総合)のふじきみつ彦さんです。

"ふじき節"さく裂! シリアスとコミカルが融合した「一橋桐子の犯罪日記」

 この秋は見ごたえのあるドラマが目白押し。ドラマファンの皆さんはうれしい反面、追いかけるのが大変じゃないですか? そんなドラマ実りの秋、今回「推しの作家さま」でピックアップするのは、NHK総合で放送中の「一橋桐子の犯罪日記」(毎週土曜 後10:00~)の脚本を書いている、ふじきみつ彦さんです。
 
 コント・演劇をはじめ多彩な経歴を持つふじきさんですが、テレビドラマの脚本ということでまず思い出すのは、なんといっても「バイプレイヤーズ」(‛21年ほか、テレビ東京)シリーズでしょう。普段は主役を支える役回りのバイプレイヤーたちが本人役で主演するシチュエーションコメディー。本人たちの元々の性格に私たちが思う彼らのキャラクターが重なった上に、制作陣の若干の(かなりの?)ムチャ振りがミックスされ、第3シリーズや劇場版では、そこにパロディー要素もプラスされたりして、日本のテレビドラマにはとても珍しい大人のコメディーでした。そして、この独特のコメディー空間を支えていたのが、ふじきさんがメインで手掛けていた脚本です。

 例えば、ドラマを見ていて「どこまでが脚本でどこからがアドリブなの?」なんて思うことありますよね。ドラマというのは共同作業ですから(良くできた作品の場合は特に)何が誰の功績かということが、溶け合って分かりづらくなります。その中で脚本は、「脚」本、あるいは「台」本と言われるように、文字通り作品の土台としての役割を果たします。脚本の段階で登場人物のキャラクターが明確に示され、それを俳優たちが十二分に共有し身体に取り込んでいれば、もはやアドリブはアドリブでなくなります。このキャラクターを構築して提示する力、これがふじき脚本の大きな魅力です。「バイプレイヤーズ」なんて本人役だからシンクロしていて当たり前のようですが、これが意外と脚本の出来で左右されるものなんです。昨年放送された「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(’21年、NHK総合)なども、どこまでが現実なのか分からない絶妙なドラマ空間が立ち上っていましたよね。これこそまさにふじきさんの脚本の力だと言えるでしょう。

 その力は「一橋桐子の犯罪日記」でも存分に発揮されています。原田ひ香さんによる原作も、高齢者が直面する諸問題をシリアスかつコミカルに描いて反響を呼びました。全体が軽やかな筆致に彩られた後味の良い作品ですが、それでも伝統的なユーモア小説の枠組みの中で描かれる高齢者たちの深刻な現実にはリアリティーがあります。

 その点ドラマは、桐子役の松坂慶子さんのキュートさに代表されるごとく、全体的に非常にチャーミングな印象があります。親友を亡くして金銭的にも精神的にも追い詰められた桐子が刑務所で老後を過ごそうと“ムショ活”を始める、という大まかなストーリーや、主要な出来事は全部踏襲されているものの、人物配置やキャラクターのディティールには、かなり大胆に手が入れられています。そして、それら一つ一つのエピソードが実に愛らしい。ふじきさんの筆力が光りますが、おそらくこれは今回のドラマ化の大きなテーマでしょう。ふじきさん個人というよりも、制作陣全体の意志が感じられます。

 それはきっと、高齢者たちのシリアスな現実を描く一方で、それでもまだまだ捨てたもんじゃない日常のかけらや小さな幸せを描きたいという、ふじきさんや制作チームの思いでしょう。個人的には第4回で雪菜ちゃん(長澤樹)の狂言誘拐が見抜かれる“誘拐ごっこ”のエピソードが好きでした。人間関係もだいぶスリムに整理されていますが、そのすべてに“おとしまえ”をつけている。そして、それらに関わることで、桐子が自然に生きる希望を持てるようになっている。だいたい、寺田(宇崎竜童)にしても、薫子さん改めゆかりさん(木村多江)にしても、相当悪いことをしてるのになんとなく憎めない。ふじきさんのキャラクターへの愛情を感じます。

願うは久遠樹のスピンオフ⁉ ファンタジーをリアルに導く愛すべきキャラクター

 そして、そんなドラマのテーマを最も体現している存在が、岩田剛典さん演じる久遠樹でしょう。これはもう、完全にドラマオリジナルのキャラクターと言っていいと思いますが、本編とは別にスピンオフができるくらいの物語を背負った魅力的なキャラクターです。犯罪を犯すために桐子が教えを乞うポジションである久遠自身が、刑務所体験を悔いている。これが、ある種のファンタジーであるこのドラマの隠れた重しになっていて、ドラマ全体のリアリティーを裏から支えているわけです。見事と言っていいでしょう(いつも暗い目をしてる岩田さんがまたカッコいいんだ。最終的に悪い人じゃないだろうと思わせるところも、また岩田さんならではで)。

 また、これは演出の範囲かもしれませんが、頻繁に差し込まれてドラマの句読点になっている俳句の数々とか、コロコロ表情が変わるトモ(由紀さおり)の遺影とか、とにかくテレビドラマ的な魅力にあふれたチャーミングなドラマです。あと1回で終わってしまうのが残念ですが、彼らの行く末を最後まで見届けましょう。きっとハッピーエンドにしてくれることを祈りつつ。桐子さんはもちろんだけど、久遠さんにも幸せになってほしいなあ。

  
  
  
文/武内朗
TVガイド15代目編集長。毎年テレビ界を支える優秀な脚本家に贈られる賞「向田邦子賞」運営に長く携わる。現在、TVガイドアーカイブチーム代表として書籍「テレビドラマオールタイムベスト100」、「プレイバックTVガイド」などを手掛ける。今回、ドラマファンの立場から脚本家の方々についておしゃべりをする趣向で当コラムを連載。
  
※向田邦子賞とは、故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績を称え、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定されたもの。

■放送情報
「一橋桐子の犯罪日記」
NHK総合 毎週土曜 後10:00~

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