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TVガイドみんなドラマ編集部
2022.3.3
✒推しの作家さま#7 吉田恵里香さん
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ドラマになくてはならないのが、ドラマの作家さん。編集部では、日頃からドラマ作家をウオッチしている編集者・武内さんに、今旬で輝いている“推し”の作家さんを語っていただきます。ドラマのリアリティが創り上げる共感ポイント、その発見がありますように!

推しの作家さま 第7回は「吉田恵里香」さん

   
 「推しの作家さま」、今回は現在NHKの「よるドラ」枠で放送中の「恋せぬふたり」を手がけている吉田恵里香さんです。

 吉田恵里香さんは、テレビドラマだけでなく、映画、アニメ、ウェブドラマなど、さまざまなジャンルで活躍している注目の若手脚本家です。昨年一大ブームを巻き起こした連続ドラマ「チェリまほ」こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」も吉田さんの手になる作品です(おかざきさとこ氏と共同脚本)。映画「ヒロイン失格」やテレビドラマ「花のち晴れ〜花男Next Season〜」「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」など女性向けコミックの実写化に多く携わり、必然的にラブストーリーを手がけることが多かった吉田さんですが、最新オリジナル作「恋せぬふたり」は、アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない)&アセクシュアル(他者に性的に惹かれない)であるふたりが主人公です。

 近年、性自認や恋愛的指向の多様性への理解が進み、セクシュアル・マイノリティーがドラマのテーマとして取り上げられるケースが増えてきましたが、アロマンティック&アセクシュアル(以下アロマ・アセク)を真正面から取り上げたドラマはおそらくこれが初めてでしょう。アロマ・アセクの当事者から、そもそもアロマ・アセクという存在を知らない“マジョリティー”まで、それこそ多様な視聴者を念頭に、周到かつ慎重に物語は描かれます。

 それだけでも十分画期的なんですが、「恋せぬふたり」はそこにとどまりません。ここで描かれているのは、アロマ・アセクに限らずマイノリティーであることで生きづらさを抱えている人たちが自分らしく生きて行くことに対する共感です。彼らに寄り添う優しい視線に、ホッとしたという人は多いでしょう。人は誰でも、どこかの場面では必ず少数派ですからね。

    
 咲子(岸井ゆきの)と高橋(高橋一生)は、恋愛感情で結ばれているわけではありません(アロマ・アセクですからね)。でもふたりの交わす言葉、視線、微笑み、そこに流れる心の交流には、とても豊かな人と人との結びつきが感じられます。当初なんとなくリーダーシップをとっているように見えた高橋が、咲子の存在によって次第に変わって行く過程のなんとあたたかなことでしょう。分かり合えない家族、分かり合えない夫婦や恋人たちを、現実でもドラマでもさんざん見てきた私たちには、咲子と高橋の結びつきにやわらかい眩しさのようなものを感じます。「恋愛しないと幸せじゃないの?」という問いへのひとつの答えがここにあります。

    
 今回特にすごいと思ったのは、制作チーム全体として訴えたいテーマ(アロマ・アセクへの認知、理解を高めたいという気持ち)を共有していながらも、物語自体は極力フラットな構造になっているということです。意識の高い人物が場を支配することもなく、世間の“普通”を代弁して貶められるキャラクターも登場しない。カズくん(濱正悟)も、咲子の両親や妹も、それぞれがそれぞれの人生を生きていて、それが尊重されています。“嫌われもの”を作らない。必要な情報を多数織り込みながらそれを実現しているのは、まさに脚本の力だと思います。

    
 そしてもうひとつ。このドラマはまた優れた「ホームドラマ」でもあります。「家族になりませんか?」という咲子の呼びかけで始まるこのドラマには、まさに新しい家族のリアリティーがあります。

 テレビドラマの歴史は、常にホームドラマの進化によって更新されてきました。3世代同居の大家族中心の時代。郊外のニュータウンを舞台にしたドラマが増えた70〜80年代。女性の社会進出が定着した90年代以降は、出産・子育て、専業主夫、シングルマザー、引きこもり、虐待、ママ友問題など、様々な側面から家族のドラマが紡がれました。特に“家族の再生”というテーマは(「岸辺のアルバム」や「北の国から」の例を引くまでもなく)ホームドラマにおける最も重要なテーマでしたが、21世紀に入ってからは、必ずしも血縁によらない、いわば「疑似家族」による家族の再生が多く描かれるようになります。「家政婦のミタ」「あまちゃん」「Mother」「マルモのおきて」「義母と娘のブルース」など、それぞれの再生がそれぞれのスタイルで描かれ、多くの傑作が生まれました。もしかすると「恋せぬふたり」もまた、2022年の新しい家族の形を見せてくれるドラマになるのかもしれません。

 咲子と高橋にどんな未来が待ち受けているのか。最後まで見届けたいと思います。

「恋せぬふたり」(見逃し配信中) ※視聴にはご登録が必要です

   
   
   
※文中作品
「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」('20年・テレビ東京系)主演・赤楚衛二
「花のち晴れ〜花男Next Season〜」('18年・TBS系) 主演・杉咲花
「Heaven?〜ご苦楽レストラン〜」('19年・TBS系) 主演・石原さとみ
「岸辺のアルバム」('77年・TBS系) 主演・八千草薫
「北の国から」('81年・フジテレビ系) 主演・田中邦衛
「家政婦のミタ」('11年・日本テレビ系) 主演・松嶋菜々子
「あまちゃん」('12年・NHK総合) 主演・能年玲奈(当時)
「Mother」('10年・日本テレビ系) 主演・松雪泰子
「マルモのおきて」('11年・フジテレビ系) 主演・阿部サダヲ
「義母と娘のブルース」('18年・TBS系) 主演・綾瀬はるか


文・武内朗
(TVガイド15代目編集長。毎年テレビ界を支える優秀な脚本家に贈られる賞・「向田邦子賞」運営に長く携わる。現在、TVガイドアーカイブチーム代表として書籍「テレビドラマオールタイムベスト100」、「プレイバックTVガイド」などを手掛ける。今回、ドラマファンの立場から脚本家の方々についておしゃべりをする趣向で当コラムを連載。)


    

    

    

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