ドラマになくてはならない存在、それは作家さん。編集部では、ドラマ作家を常にウオッチしてきた編集者・武内氏に、今活躍されている推しの作家さんを語っていただきます。ドラマの楽しみがまたひとつ増えますように…
推しの作家さま 第1回は【安達奈緒子さん】
「おかえりモネ」が朝の連続テレビ小説として作られることが発表された時、多くの人が待ってましたと感じたと思います。清原果耶ちゃんに“朝ドラ”のヒロインを演じて欲しいと思っていたドラマファンは多かったでしょうしね。でももうひとつ、安達奈緒子さんの起用に快哉を叫んだ方も少なくなかったと思います。
おそらく安達さんは、現在活躍中の脚本家の中で最も“朝ドラ”向きの脚本家の一人だと思います。日常と非日常を並行して描き、多くの出来事を多彩な側面からバランス良く見せるのが巧みな作家なので、半年近い長丁場をともに過ごすには最適です。技術的にも申し分なく、清原果耶ちゃんとの相性も抜群だし、期待が膨らみました。
もうひとつ安達奈緒子さんの特徴として、柔らかく優しい語り口でシリアスな現実をきちんと描くテクニックが素晴らしい。「リッチマン、プアウーマン」も「失恋ショコラティエ」も「透明なゆりかご」も「きのう何食べた?」もみんな、ハードなテーマとハートウォーミングなリアリティーが共存していて、それが日常のセーフティーネットになっている。安心して見ていられる。テレビドラマの作家にとって大切な資質だと思います。
あと、俳優さんたちとの信頼関係が感じられるのも安達さんの特徴ですよね。「リッチマン、プアウーマン」「失恋ショコラティエ」の両作が、石原さとみさんの大きなジャンプボードになったことは異論のないところでしょうし、「透明なゆりかご」で注目された清原果耶ちゃんとの「おかえりモネ」での再タッグもまさにこれ以外にない配役です。他にも「モネ」には、これまで安達作品を彩ってきた俳優さんたちが大集合していて思わずニヤリとしてしまいます。それもすべて俳優たちの安達脚本への信頼感の賜物です。
そして最大のニヤニヤはなんといっても「きのう何食べた?」のシロさんとケンジ、西島秀俊、内野聖陽の2人が出演していることです。ともに重要な役でありながら、接点がないので共演は難しいかな、でもどこかで共演させてくれるかな、なんて思っていたら、たったワンエピソードでありながらも、物語を大きく動かす重要なシークエンスでの共演となりました。こういうところがキャストにも見ているファンにも嬉しいんですよね。小ネタの回収と思わせて、実はその後のストーリーに大きな影響を与えていく。これこそがテレビドラマの面白さなんです。
今後の「おかえりモネ」、そして今後の安達さんの活躍がますます楽しみですね。

連続テレビ小説「おかえりモネ」NHK総合ほか 毎週月曜~土曜 前8:00~8:15ほか
※文中作品
「リッチマン、プアウーマン」('12年・フジテレビ系) 主演・小栗旬
「失恋ショコラティエ」('14年・フジテレビ系) 主演・松本潤
「透明なゆりかご」('18年・NHK総合) 主演・清原果耶
「きのう何食べた?」('19年・テレビ東京系) 主演・西島秀俊・内野聖陽
文・武内朗
(TVガイド15代目編集長。毎年テレビ界を支える優秀な脚本家に贈られる賞・「向田邦子賞」運営に長く携わる。現在、TVガイドアーカイブチーム代表として書籍「テレビドラマオールタイムベスト100」などを手掛ける。今回、ドラマファンの立場から脚本家の方々についておしゃべりをする趣向で当コラムを連載。)

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