韓ドラシーンのウソ・ホント 第8回【韓国の食卓事情】

2022/10/21 15:03

韓国ドラマで気になるあのシーンのウソ、ホントを現地在住16年目の、るみさんにインタビュー。リアルな韓国文化をお届けします。

韓国ドラマに必ず登場する、食事シーン。韓国料理は日本でも身近ですが、おかずの種類や食事のマナーなど、ドラマを見ているだけでは分からない韓国の食卓事情を、豆知識とともに紹介いたします。渡韓の際に、観察&実践してみてください!

郷に入っては郷に従え!

――韓国も主に“お米”が食卓に並びますが、日本でいう一汁三菜のような定義はありますか? むしろ、おかずがたくさん並んでいるシーンをよく見るので、料理の種類は豊富ですよね!?

「明確な基準はないように感じます。日本はご飯に汁物とおかずといったセットが基本で、メインのお米に合うおかずを用意するという感覚が強いですよね。ですが、現在の韓国では、一汁三菜というような決まりは、恐らくないと思いますし、三菜だと少ない…。お米、汁物もしくはチゲ、小さなおかずが複数あるのが食卓の基本スタイルです。大学生の時に、『日本はお米がメインゆえに、ご飯の大盛やお替わりが無料のことが多い。一方の韓国は、おかずがメインなので、おかずは無料でお替わりできる一方で、お米のお替わりは有料』と学んだことがありました。『なるほど!』ですよね」


――実際の家庭でも、ドラマのようにおかずはテーブルいっぱいに並ぶのでしょうか? 日本のように納豆に和え物のような定番おかずも教えてください!

「韓定食(テーブルに数種類の料理が並ぶ韓国のコース料理)のようにたくさん並ぶほどではありませんが、基本的に4種類ぐらいはあると思います。といっても多くの家庭では、作り置きしているものを順番に出すイメージです。ちなみに、キムチも『고추(コチュ)=唐辛子』&ディップ用のお味噌も、それぞれで一品とカウントするので、少量をたくさん並べるイメージでしょうか。ただ、私の夫はキムチが苦手なので、一品分、損をしています(涙)。韓国の定番おかずは、キムチ、ナムル…。野菜が高騰した時の救世主として、『어묵(オムク)=魚の練り物』の炒め物も欠かせません。(写真内、右上の赤いおかずがオムクの炒め物)オムクは安い上に、切って野菜と一緒に炒めて味付けするだけで完成なので、とっても簡単。野菜と異なり、練り物は大幅な価格変動がないので、オールシーズンいつでも食卓に並びます。あとは、卵! “卵は毎日食べるもの”という意識が強いので、卵料理の品数もさまざまありますよ」

――卵と言えば、韓国の食料品店の卵の棚に驚きましたが、韓国の卵料理には、どのようなものがありますか?

「代表的な卵料理は、『계란말이(ケランマリ)=卵焼き』『계란찜(ケランチム)=(韓国の)茶碗蒸し』、あとはラーメンにも入れたり、本当に卵はよく使います。単体でも食べられますし! 私の家では、残り10個になったら『買わなきゃ!』という感覚なので、絶対に切らすことはありません。卵の棚…そうですね(笑)。韓国では1ケース30個入り(写真上)が一般的です。日本と同じように10個入りも売っていますが、単価が高くなりますし、特に私の家では、『卵は毎日食べるものだからね』と、冷蔵庫に数十個は軽く常備しています。(冷蔵庫の中の卵を数えて)50個くらいでしょうか(笑)。料理だけでなく、おやつとして、スポーツする時にはバナナの代わりとしても食べるので、韓国の人には欠かせないアイテムです」

――50個!? 日本の一般的な食料品店では珍しい光景です。少し話を戻しまして、ほかに韓国ならではのおかずはありますか?

「たまに出てくるのは…『번데기(ポンテギ)=さなぎ』(写真上)ですね。韓国の人は結構好きで、お酒のつまみとして食べることが多く、定食屋さんなどでも前菜として出されることもあります。見た目も匂いも苦手なので、私は今でも食べられないのですが、『こんなにおいしいのに、何で食べないの?』と、不思議な顔をされます。高たんぱくで体に良いことはわかるんですけどね…(汗)。 “食べ歩きグルメ”として親しんだ世代もいますし、それこそ、キムチが苦手な人がいないのと同じくらい、ポンテギが苦手な人に韓国では会ったことがないかもしれません」
  
  

――ポンテギ…。缶詰を見かけたことはありますが、手が出ませんでした。ちなみに、お米やお箸など、日本と韓国の食卓では共通していることもあると思うのですが、韓国では、お箸とスプーンがセットで並んでいますよね!?
  

「韓国では、お皿を手で持ってはいけない、という食事のマナーがあります。となると、お箸で汁物を飲むのは難しいですし、器に口をつけると“犬食い”や“福が出て行く”などと言われることもあるので、汁物が欠かせない韓国の食卓には、スプーンが必要なのです。器を持ってはいけないところは、日本と逆ですよね。“ルールが真逆”という観点で、韓国のテレビ番組で日本の食事マナーが紹介されることもありますよ!」

――ご飯をスプーンで食べるところもよく見かけますが、これもマナーの一つですか?

「私も、ご飯をスプーンで食べるのがマナーなのかと思っていたのですが、お箸で食べてもマナー違反ではないそうです。ただ、こぼさないためにも、子どもの頃から使ってきて慣れているスプーンでご飯を食べることもあるそうで…。と言いつつ、スプーンの場合はご飯を一気にすくえてしまうことから、最近では、肥満に繋がりやすいという考え方もあるのです。そういう観点から、お箸でご飯を食べる方も増えてきたように感じますね。ちなみに私はお箸とスプーン、夫はお箸で食べることの方が多いような気がします!」 

  

――時代とともにマナーにも変化が!? もう一つマナーで伺いたいのですが、座敷や床などで立膝をついたり、あぐらをかいて食事をするのも、韓国のお食事マナーでしょうか。
  

「立膝をつくのは、女性が多いですね。昔は、主に床での生活だったので、女性はあぐらよりも立膝をつくような姿勢で座っていたことが多く、それが次第に、女性にとって楽な姿勢として定着していったと言われています。ただし、家族や友人同士の場ではOKですが、それ以外の席で立膝をつくことは、ほとんどありません。もっと言うと、イスとテーブル中心の生活の現在では、立膝をついて座る女性は少なくなってきたと思います。ちなみに、日本では正座が正しい姿勢と言われることもありますが、韓国では謝罪や罰を受けているイメージが強いため好まれません。『悪いことをしたわけでもないのに、何で正座をするの?』と言われるんです。お正月に親戚などに会うと、正座をして挨拶をすることもありますよね? 韓国の人の目には不思議な光景に映るようで、夫もすごく不思議がっていました。『お互いに土下座し合っているの?』と(苦笑)。私が正座をしていると、脚を崩すように言われます(笑)」
  

――やはり国が変われば、マナーも変わりますよね! るみさんは、これらのマナーをどのように学ばれたのでしょうか。
  

「誰に教わるでもなく、生活の中で身に付きました。大学生の頃は一人暮らしだったので、マナーを意識することは少なかったですが、社会人になって会社やメディアを通して見聞きして、“これが普通”と自然に染みついていきましたよ。と言いながら、私は器を持ってご飯を食べていました…(笑)。普段の生活ではあまりマナーに縛られていませんが、会社など重要な席ではマナー厳守という意識が自然と働いていましたね!」
  

――ありがとうございました! 

少しずつ、コロナ禍以前の生活に戻りつつあるということで、数年ぶりに渡韓された方も多いのではないでしょうか? これから渡韓される方は、ぜひ、韓国の食料品店や食堂で、韓国の食卓を堪能してください!
  
  

■今日のハングル■

고추(コチュ):唐辛子    어묵(オムク):魚の練り物    계란말이(ケランマリ):卵焼き    계란찜(ケランチム):(韓国の)茶碗蒸し     번데기(ポンテギ):さなぎ


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■お話を聞いたのは……るみさん
韓国在住16年目。’04年に韓国の女子高に1年間留学。この1年間で得た経験から、’07年、韓国の4年制大学に正規入学。卒業後、旅行会社での勤務を経て、韓国人男性との結婚を機に一昨年退職。Instagramでは、グルメやスポット、アイテムなど、韓国の“リアル”を発信中。