韓ドラシーンのウソ・ホント 第6回【すべての酒道は成功に通ず①】

2022/03/28 10:10

韓国ドラマで気になるあのシーンのウソ、ホントを現地在住16年目の、るみさんにインタビュー。リアルな韓国文化をお届けします。

胸キュンシーンもさることながら、“飲み会”シーンも印象的な韓国ドラマ。職場仲間との飲み会をはじめ、友達同士、家族や恋人とお酒を囲む光景もよく目にしますよね。その中で、「乾杯!」をした後の仕草に疑問を抱いたことはありませんか? 杯を交わすのは日本人も同じですが、よく見ると、横を向いてお酒を飲む人が1人、2人…。「なんで正面を向いて飲まないの?」など、思ったことがある方もいるはず。

そこで、第6回では、韓国流“お酒の飲み方”について、お伝えいたします!

お酒なくして成功はなし!? 


――韓国ドラマでは、飲み会や食卓を囲むシーンが多いですよね。中でも、横を向いてお酒を飲む人が多いですが、これは何か理由があるのですか?

「まず韓国では、お酒に関する基本的なマナー、『주도(チュド)=酒道』というものがあります。お酒の席における“通り”という意味ですね。儒教文化から来たであろうといわれてはいますが、韓国の人はそういったことは意識せず、お酒の席では当然のマナーとなっています。それが、飲み口を目上の方に見えないようにする飲み方。でも、飲む時に限らず、注ぐ時や受ける時も、目上の人よりもグラスを下げるなど、当然のマナーがありますね」


――飲むところを見せてはけないんですか?

「そうですね。マナー違反ではありませんが、食べたり飲んだりする時、口の周りを見せないという習慣が昔からあったようです。さすがに、食事の時はそうはいきませんが、飲酒の際は口元を隠すことが一般的ですね。とは言え、極端に横を向いてお酒を飲むのは、会社など明確な上下関係がある場合で、家族間では、やや横を向いて…という程度でしょうか。韓国に17年住んでいる私の感覚では、お互いの関係性によって横を向く角度に違いがあるような気がします。旅行会社に勤めていた当時のチームは、カジュアルな上下関係だったので、やや横を向いて…でしたね。ただ、どんな関係であれ、上司を前にして横を向かないで飲酒をすると、『常識がない』と見られることはあると思います」

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――そもそも、この「주도(チュド)=酒道」は、どこで学ぶのですか?

「韓国では、『お酒は親に学ぶもの』と言われているんですよ。ドラマ『梨泰院クラス』(’20年)で高校生のセロイ(パク・ソジュン)が、お父さんに焼酎を勧められるシーンがあります。そこでお父さんは、『こういうもの(酒道)は親が子に教えるものなんだ』と言い、セロイが両手でお父さんに焼酎を注ぎながら、『お酒は両手で受けて、飲む時はこう』と教わっているんですよ。何でも、昔は、お酒を飲めない=社会生活ができない、と言われることがあったそうです。だからこそ、お酒を飲めなくても、マナーは心得ていなければならない。今は少しずつ変わってきましたが、“親睦を深めるにはお酒”という風潮のある韓国は、飲み会文化も根強いですし、何しろ飲酒量がものすごい…(汗)」

――確かに、お酒を受けたり、注ぐ時に手添えをしている光景をよく見ます!

「そうですよね。目上の人から注がれる時は両手で受けるか、片手で受けてもう片方の手は体に添える。あとは、焼酎のラベルが見えないように注ぐとか…、これらは上級者向けかもしれませんが…(汗)。ただ、注ぐ時も『소주잔(ソジュチャン)=焼酎グラス』いっぱいはダメで、7、8分目くらいまで。さらに、目上の人にお酒を注ぐ時は、立膝をつくなど、これらは社会人1年目の時は、特に重要な項目です!
  
  

――“お酒は親から教わるもの”という考え方しかり、社会に出る前にお酒のマナーを教え込まれることは新鮮に感じます。

「お酒に関しては、韓国と日本で文化の違いが大きいと思います。例えば、同席した目上の人が、『自分でするから、注がなくていいよ!』と言ったとしても、年下の人はぼんやり見ているだけではダメなのです。そういう場合は、相手のグラスに手を添えなきゃいけません。“一人で注いでいる”状況を作ってはいけいなので、“お酒の席では、目を光らせる”、これに限ります(笑)」



   

■今日のハングル

주도(チュド):酒道    소주(ソジュ):焼酎    잔(チャン):グラス、盃

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■お話を聞いたのは……るみさん
韓国在住17年目。’04年に韓国の女子高に1年間留学。この1年間で得た経験から、’07年、韓国の4年制大学に正規入学。卒業後、旅行会社での勤務を経て、韓国人男性との結婚を機に一昨年退職。Instagramでは、グルメやスポット、アイテムなど、韓国の“リアル”を発信中。