韓国ドラマで気になるあのシーンのウソ、ホントを現地在住16年目の、るみさんにインタビュー。リアルな韓国文化をお届けします。
何かと、乾杯シーンが多い韓国ドラマ。前編では、韓国におけるお酒の席のマナー=酒道(チュド)」についてお話いただきました。さて今回は、テーマ「酒道が成功に通ずる」と言われるその全容に迫ります!
酒は飲んでも、飲まれるな!
▲イム・シワン主演で、“ミセンシンドローム”を巻き起こしたサラリーマンのバイブル「未生ーミセンー」。飲み会での接待事情が忠実に再現されている。
――前回、「お酒の席では目を光らせることが大切!」と仰っていましたが、るみさんの経験談をお願いします!
「そうですね…(苦笑)。『한잔해~(ハンジャレ~)=一杯飲もう』と言われるたびに、焼酎を一気飲みして空になったグラスに注いでもらい…のエンドレスでした。『飲め飲め!』と言われたら、飲むしかないんです。会社の飲み会は、断れない空気なので、会食や接待の席が大変でした(苦笑)。学生の時とは、違いましたね…」
――会食や接待の雰囲気とは、具体的に…?
「お酒の席では、焼酎だけ、ビールだけの時もあれば、『소맥(ソメク)=焼酎+ビール』の時もあるんです。特に韓国は、소맥(ソメク)が好きな人が多い! ドラマなどでも、焼酎とビールを入れて“シャカシャカシャカ”って混ぜているのを見たことありますよね? アレです(笑)。この소맥(ソメク)には、『소주(ソジュ)=焼酎』と『맥주(メクチュ)=ビール』の黄金比率があるので、上手に混ぜられる人がソメクを作るケースが多い。特に私はソメクが好きで、大学生の時によく作っていたので、取引先との会食でも、日本人の私が『私がお作りします』と言って、横でシャカシャカシャカ作るんです。そうすると、『面白い日本人だな~!』と気に入ってもらえるのはよい反面、『飲め飲め!』と一気飲みの連続でした(苦笑)」
――想像しただけでも大変そうです(涙)。
「それはもう(汗)。さらに、最初の一杯は、『원샷(ウォンシャ)=一気飲み』が基本で、上司が一気飲みしたら部下も一気飲みする、という暗黙のルールもあります(涙)。でも、これは基本中の基本。お酒の席での基本的なマナーが身についている=社会生活ができる、と判断されることが多いので、酔っぱらうこともできません。私は、芋焼酎と大学生活でお酒に慣れていましたが、社会人になってからは“精神力”と“超強力な酔い止め”必須で飲み会に臨んでいました。今は、こういう風潮も和らいできましたが、組織に属している以上は、そこのルールに従うべきとされるんですよね。なので、お酒を飲めない=社会生活ができないと言われることもあるのです」
飲み会や接待で酔っぱらってもいいのは、上司や取引先(右)だけ!?
――なるほど、酒道=成功の密接な関係性が分かってきました。
「なので、お酒を飲めない人が成功を収めるということは、とても珍しいと言われます。何か突出した才能や血のにじむ努力をした人でなければ、お酒の席を通らずに成功するのは難しいのかな、と思います」
――ちなみに、お酒を注ぐ、受ける…以外の酒道はありますか?
「乾杯もすごいですよ(苦笑)。面白いこと、気の利いたことを要求される風潮があるので、『건배사(コンベサ)=乾杯音頭』がとても重要。この掛け声も飲み会のたびに作らないといけないので、会が始まる前から大変でした。“センスのある건배사(コンベサ)”をまとめた個人ブログなどもあって需要があるほど、絶対必要な項目。周りが感激するようなことを言うと『いやぁ、君、なかなかやるなぁ!』と、上司からのウケが良くなりますから。なので、特に会社の飲み会は、業務よりもきついことかもしれません…」
――韓国では、お酒を飲める体力はもちろん、忍耐力も必要ということでしょうか?
「まさにそんな感じです。韓国では、若い世代のお酒離れも話題になっているので、これまでお話しした飲酒文化が今でも通用するとは一概には言えません。ですが、近年の韓国ドラマにも、以前のような飲酒シーンがあるということは、お酒に関しては、まだまだ昔の認識が根強く残っているのだと思います。もちろん、楽しく自分たちのペースで飲める席も、ありますよ!!」
■今日のハングル
소맥(ソメク):焼酎+ビール 소주(ソジュ):焼酎 맥주(メクチュ):ビール
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■お話を聞いたのは……るみさん
韓国在住17年目。’04年に韓国の女子高に1年間留学。この1年間で得た経験から、’07年、韓国の4年制大学に正規入学。卒業後、旅行会社での勤務を経て、韓国人男性との結婚を機に一昨年退職。Instagramでは、グルメやスポット、アイテムなど、韓国の“リアル”を発信中。