推しの作家さま #19 政池洋佑さん

2023/06/25 12:12

 今旬のドラマ作家に着目する「推しの作家さま」。今回は日本テレビで放送中の「春は短し恋せよ男子。」ほか、引っ張りだこの脚本家・政池洋佑さんをご紹介します。

政池脚本の魅力は、原作のエッセンスをつかみ取る的確さ

 とにかく、その活躍が目覚ましい。今年の春に放送、配信のドラマだけでも「春は短し恋せよ男子。」のほかにテレビ東京の「ゲキカラドウ2」や「シガテラ」、Paraviの「俺の美女化が止まらない!?」「クロちゃんずラブ」など執筆作品がめじろ押しです。ここ数年深夜ドラマを中心に注目を集めている政池さんですが、深夜ドラマファン以外にもその名を知らしめた作品といえば、何と言っても2022年の劇場映画「ハケンアニメ!」でしょう。同作で、第46回日本アカデミー賞の優秀脚本賞も受賞しました。

「ハケンアニメ!」は、アニメ業界を舞台にした血湧き肉躍る青春熱血ストーリー。辻村深月さんによる原作はすでに圧倒的ですが、映画版はさらに熱い。プロデューサー、新人監督、アニメーターの3人の視点からアンソロジー形式で描かれていた原作を、映画版では実になめらかに一つの時間軸の群像劇へと再構築しています。その鮮やかさは、原作者の辻村さんをして「小説もこうすればよかったな」と言わしめたほどでした。何より、膨大な原作を2時間余の映画に収めるために、そこそこ手を入れているにも関わらず、原作の世界観がいささかも揺らいでいないのがすごい。むしろ、高い次元に昇華させているようにすら見える。この原作のエッセンスをつかみ取る的確さ、構成力の巧みさは、テレビドラマにおいても政池脚本の大きな魅力となっています。

 放送中の「春は短し恋せよ男子。」(以下「はるだん」)でも、その魅力は顕著です。ほぼ原作通りのストーリーながら、ちゃんと男子4人の青春ドラマになっていますもんね。恋や愛に全然関心がなくて無邪気にふざけ合っている時の関係性もきちんと描かれ、なおかつそれをキープしたまま、一人一人が恋に目覚めていく過程も、とても心地よいです。その後の展開のヒントが第1回に全部詰まっていたあたりも、再見する楽しみに配慮されていてなんとも心憎い。

 それにしても、主人公たちを演じる岩﨑大昇さん、那須雄登さん、藤井直樹さん、金指一世さんの4人のハマり具合は、ちょっと奇跡的です。設定は概ね原作通りなのに、彼らに当てて作られたキャラクターなのか、と思うくらい。4人の優れた表現力の賜物と言っても良いでしょう。主人公たちが胸に秘める恋は皆個性的で、それゆえ悩みも異なりますが、どの悩みにも彼らなりの切実さがあります。もちろん原作の力ではあるのですが、それ以上に、ドラマならではのリアリティーを感じます。まさに、ドラマの中でキャラクターが生きているんですね。

「はるだん」はまさに、”キャラクターが生きている”作品

“キャラクターが生きている”ことを一言で説明するのは難しいですが、例えば、何ということもないドラマのセリフが頭から離れないことってありますよね。登場人物が口にすることで言葉がキラキラと輝き、特別な価値を持ち始めるような…。今回の「はるだん」でいえば、刀磨(金指)が太陽(岩﨑)に事あるごとに言う「おまえ、ほんとにバカだな〜」ってセリフの愛情あふれる感じとか。やはりこれは、キャラクターと彼らの関係性に、独自の魅力があるからだと思います。もちろん脚本家一人ではなく、俳優や演出家とのコラボレーションでこそ成立することですが、ベースとなるのは、やはり脚本家の力でしょう。

 こうしたキャラクターを作る力、立たせる力は、ドラマの脚本家にとって最も重要な要素の一つです。テレビドラマは、「この後どうなるんだろう」「どんな結末なんだろう」と、ストーリーの面白さで語られることが多いですが、実はキャラクターが生きているかどうかが、連続ドラマを観る最大の醍醐味なのです。

「はるだん」では、政池さんのキャラクター力が遺憾なく発揮されていると思います。心の声が聞ける太陽(岩﨑)、寝起きの悪いイケメン青(那須)はもちろん、心優しい偉人(藤井)や優等生の刀磨(金指)は、ドラマになったことで原作コミックより明らかに大きく魅力的なキャラクターになっています。柊(永瀬莉子)やリカチ(香音)、紅(鈴木ゆうか)などの女性も生き生きと輝いているし…。そもそも女性群が、折に触れ芯を食った発言をして物語を進めているのが「はるだん」の特徴です。ドラマの結末とは別に、今後の彼らをずっと見ていたいような気持ちになる。これこそキャラクターが生きている証拠です。

 太陽が柊にどんどん惹かれていく気持ちの動きを軸としながら、刀磨とリカチのイチャラブ(杉山も格好良かった)、偉人の紅への恋心などを順に描き、最後はいよいよ青のターン。いろいろと伏線も回収されてきそうで、楽しみは尽きません。でもちょっと終わってほしくないような気もします。極端な話、キャラクターができてしまえばドラマはいつまででも続けられるのですから…。

 ちなみに、政池さんには、各年代で青春ドラマの傑作を手掛けた名脚本家・鎌田敏夫さんに似た資質を感じます。原作のドラマ化に力を発揮している政池さんではありますが、ここはぜひオリジナルドラマ、特にオーソドックスな青春ドラマやホームドラマを見てみたい。楽しみに期待しましょう。

  
  
文/武内朗

「春は短し恋せよ男子。」放送情報

日本テレビ
毎週月曜 深0:59~

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