池田エライザ×田口トモロヲ ドキュメンタリードラマ秘話

2022/08/17 16:04

8/17(水)スタートのドラマ「名建築で昼食を 大阪編」に主演する池田エライザさんと田口トモロヲさんの独占インタビュー。

今作でドラマとドキュメンタリパートの境界線が整理されてきました

――今回の新シリーズ、第1話を拝見して、お二人のコンビネーション、距離感がすごく良くて嬉しく感じました。お久しぶりにお二人で演じてみて、率直にいかがでしたか?

池田「私は、別の作品で全く違うタイプの役柄が終わってすぐこの作品だったので、ギャップが大きくて藤ちゃんに戻るのが最初はすごく難しかったんです。でも、植草さんと実際にお芝居してみると、ちょっとずつ戻っている感覚がありました。髪が短くなり、雰囲気もガラッと変わったので、それに合わせて衣装もちょっとハンサムライクにしてみようと衣装部の方と話したりして、また新たな気持ちで挑むことができました」


――藤さんは、だいぶ大人っぽくなった印象です。

池田「そうですね。しっかり者のようなキャラクターになって、師匠に慣れてきた弟子みたいな感じで『師匠、いきますよ』みたいに突っ込んでいますね」

田口「僕は、ようやくちょっと慣れたかなと感じました。シーズン1は、全員が手探りで作り始めたというのがありました。というのが、この作品の特徴であるドラマパートと、ドキュメンタリーパートの境界線が、まだ明確ではないままに、模索しながら現場で進行していくという形でした。僕自身も、植草千明を演じながら、自分自身と植草さんのキャラクターの線引きが少し曖昧なままに撮影に臨んでいました。それが今回の『大阪編』になって、ここはこうすべきなんだなという方向性が見えて、整理されてきたという気がします」

「アドリブパートに入ったかな?」と見計らって言葉を発していることも

 
――ドキュメンタリーパートという言葉がありましたが、名建築を巡っている場面では、お二人のセリフのすべてが台本にあるわけではないということですね?

池田「植草さんは、その建物について詳しいという設定なので、こういう建築物で何年に建てられて、どういう方が関わっていて、というセリフが台本に書いてあります。そういう意味では田口さんはアドリブだけでなく、決まったセリフの量も多いので大変だと思います。逆に私は、ドキュメンタリーパートはセリフがほとんど台本に書かれていないので、初めて行った場所で素直に思ったことを言えばよくて、すごく楽をしています(笑)。それでまた、ふと沸いた素朴な疑問などを、本当にそこに詳しいわけではない田口さん(が演じる植草さん)に聞いてしまって、困らせてしまったこともありました」


――では、田口さんは自然体に見える中でも大変なことが色々あったんですね?

田口「そうですね。シーズン1の時は藤さんに質問された時、『俺も知りたいよ、聞きたいんだよ』と心の中で叫んでいました(笑)。そういう葛藤などがあった後の『大阪編』ですね」

――一方の池田さんは、楽をしているとおっしゃいましたが、独特の世界観の中で役に入っている状態で、素直な感動を芝居にしていく作業は、最初はかなり難しかったのではないでしょうか?

池田「建築を巡っている場面では、セリフのパートが終わった後に、監督がカメラを回したまま、『じゃそのまま好きに見ていってください』とおっしゃるんです。『自由に見てください』と。シーズン1で最初にこの作品に入った頃は、『自由に見る…とは?』と悩みましたね。話した方が良いのか、それともただ歩いた方が良いのか、気になるところを見たほうが良いのか。その頃は、最終的にどのように編集されるのかが全く分からなかったので、本当に手探りでした。でもその後、実際の放送を見て、ああ、こういうことだったのかと理解できました。その結果、シーズン2では、なるべく田口さんと二人で編集点(カットや繋ぎをするための間)を作るように意識しました(笑)」

田口「ははは(笑)」

池田「そういうところ、ありましたよね(笑)。きっとこの建物を知らない方だったら、ここはディテールを見てみたいだろうから、カメラが寄ってじっくり撮れるように、とか。例えば、シーズン2に登場する大阪市中央公会堂(写真下)の中集会室という場所に、すごく大きなアーチがあるんです。それをよくよく見てみると、なすびの装飾があって『なんだこれ?』と思うんですよね。行く先々の名建築にある特徴的でユニークな部分を探そうという視点で動けるようになったので、そういう意味では成長したのかな、と思います」

――シーズン2第1回の綿業会館でも、お部屋の壁のくぼみについてガイドさんに質問する場面が出てきますが、あれもご自身で見つけたのですか?

池田「そうです。台本にあったわけではなく自分で気づきました。変わっているなあと思って、たぶん今アドリブパートに入ったかな? というタイミングで言いました」


――なるほど! その、アドリブパートに入ったのかどうかというのも、演じながら感じて移行していく場合があるのですか?

池田「セリフが終わってからなんとなくこれは、続ける、のかな? と」
田口「うん、そうですね、カメラが回っているなあと感じた時はそのまま続けます。同時に僕は、そういう(専門的な)質問は僕にはしないでねという、それはガイドの方に聞いたほうが良いよ、という雰囲気を醸し出します(笑)。『大阪編』では、そんな感じに臨機応変にできるようになったと思います」

吉見監督は建築に対して乙女! 植草さんの「乙女建築キャラ」は監督由来

――すごい! お二人の息も、より合ってきたということですね?

池田「撮影の合間などに少し、ここは、こういうのがあるんですねというような雑談が、そのまま本番に生かされたりすることはありました。でも、このカットはこれを言いましょう、みたいなことは全然なかったですね。なので、ドキュメンタリーパートで『よーいスタート』と本番が始まったら、『なんか喋ろうかな?』など…お互い探り合いながら、だったような気がします(笑)」


――撮影の合間にも、お話はよくされていたんですか?

池田「はい。どちらかというと私から『田口さん田口さん』と声を掛けて」
田口「そういうコミュニケーションができてきて、お芝居も良くなってきたのかな、という気はします。最初のころは、お互い人見知りの人間同士が出会って、距離感を測りながら…という設定でもありましたし、俳優同士がどのくらい親しくなって良いのかという思いがありました。そういう経験がありつつ今回にたどり着いたので、そこはシーズン1よりも心地良くできたのかなと思います」

――吉見拓真監督とは、現場ではどんなやり取りをされるんですか?

池田「実は一番乙女なのは監督だと思います。乙女建築に対する情熱や知識がとても強くて、たぶん植草さんの乙女建築に対する情熱は、監督由来なんじゃないかと思うほどです。すごく感受性が豊かな方ですね。ある時、なかなかカットが掛からないことがあって、どうしたんだろうと思ってチラッと監督の方を見たら、アドリブでポンっと出た我々の言葉が監督の胸に刺さったらしく、『感心してカットを掛け忘れていた』とおっしゃっていたことがありました。とても素直な方で、本当に建築が好きなんだなと思います」

毎回、何かしらのプチ災難に遭う植草さん。今回は…?

――植草さんについてもお伺いします。今回はお仕事で大阪に来ているというお話ですが、大阪でも行きつけの喫茶店が出てきます。

田口「馴れ初めみたいなことは描かれていないんですけど、関西方面に仕事で行った時は必ず立ち寄る名喫茶、という設定だと思います。安奈淳さんはそこのママさんで、植草さんが心を許して話せる存在。いろいろな愚痴、迷いなどを話している時の、ママさんの言葉の中から、なにか植草さんの心に刺さるようなアドバイスを受け取るんですよね」


――植草さんと言えば、犬にほえられたり、お巡りさんに呼び止められたりといったくだりが楽しみなのですが、今回は?

田口「実は制作担当のスタッフさんで、必ず犬に吠えられる方がいらっしゃいまして」


――なんと、実際にいらしたんですか!?

田口「はい。『あ、本当にいるんだ』と思って、その方を観察しましたね。よく吠えられる人物っていうのは、たぶん、そういうオーラがあるんですよ」


――ご自身のお芝居の中で、それを生かせる場面はあったんですか?

田口「生かせればなと思って、見ていました。密かに、ですが」

進境著しい俳優さんとのお仕事は嬉しいし、ありがたい!

――お二人は1年以上、間が空いて再びお芝居をされたわけですが、お互い俳優として成長した印象などありますでしょうか? 池田さんはそれこそ秋に放送が控える「WOWOWオリジナルドラマ DORONJO」の主役だったり、昨年放送された「古見さんは、コミュ症です。」(NHK総合)のヒロインだったり、印象的な役柄が多かったです。

田口「池田さんは伸び代しかないですよ! シーズン2で一緒に撮影している時は、乗っているなという印象でした」

池田「それは『調子に』ということですか(笑)?」

田口「いやいや『仕事が』ですよ! いま、進化の途中にある俳優さんと一緒に仕事ができるというのは、こっちも持ち上がりますから。こちらは年齢的にもう伸び代がない世代なので、ないところを伸ばしてくれている気がします。嬉しいし、ありがたいですね」

――池田さんご自身はどう感じていらっしゃいますか?

池田「成長を感じたことはまだ、ないです。何を成長とするかというのも難しいですし。ただ、カメラマンさんを良い景色に誘導するのは上手になったかなと(笑)。神戸女学院(写真下)という名建築の回では、360度美しいというその建築のパノラマが美しく見えるように動きました。そうやって、『名建築で昼食を』チームの一員として、役に立てることが増えたのかなという思いはあるのですが、私個人としての成長は、私には全然分かりません!」

――田口さんに伺いたかったんですが、あるインタビューで「演じている役に、自分の生活が影響される」というお話をされていました。今回の「名建築~」にも、影響を受けている部分はありますでしょうか?

田口「この作品をやっている時は、ちょっと目線が変わりますね。過去にル・コルビジェが好きだったことを思い出したり、

前作を愛してくださっている方、まだご覧になっていない方々に、新たな物語が届けられることが幸せ

――また行ってみたい名建築はありますか?

池田「田口さんがフォーを食べてらっしゃったところはどこでしたっけ?」

田口「ああ、ベトナム料理のお店が入っていたのは…芝川ビルですね(シーズン2で登場)」

池田「そこのレストランのフォーがすごくおいしそうで。植草さんがフォーだったんです。私もフォーが食べたかった(笑)」

――そういえば、いつも藤さんと植草さんは別の料理を食べていますよね。

田口「そうなんです。それが食べたかったなあ…というのと、『東京編』の山の上ホテルで植草さんが食べていたカレーも、いいなあと思って、山の上には絶対行くぞって思っています。お食事もこのドラマの魅力なので、そういう意味で、行きたいところはたくさんあります。全部おいしかったです!」

――では最後に、読者の方々に伝わったらいいなというところを一言ずつ頂けますでしょうか。

田口「何も考えずに、登場する名建築の世界に漂って、見て、そして癒やされてくださればいいなあと思います」

池田「私もびっくりだったのが、このドラマが放送され始めてから、本当に自分の想像を超える反響を頂いたんです。賞を頂いたこともそうですし、配信という形になってからも、さらにどんどん輪が広がって、今も多くの方が『名建築~』を見続けてくださっています。この作品を愛してくれている方々に、新しい物語をお届けできることがすごく嬉しいですし、まだ見ていらっしゃらない方々にお届けできるのもすごく幸せだなあと思います。どうぞご覧ください!」

■Profile
池田エライザ(いけだ・えらいざ)

1996年4月16日生まれ。福岡県出身。2009年、「ニコラ」(新潮社)の第13回ニコラモデルオーディションでグランプリを獲得。2011年、映画出演をきっかけに女優として注目を集め、映画、ドラマと活躍の場を広げる。主な出演作はドラマ「名建築で昼食を」シリーズ(’20年~、テレビ大阪)「古見さんは、コミュ症です。」(’21年、NHK)など多数の作品に出演。2022年8月19日公開の映画「ハウ」に出演。2022年10月7日スタート「WOWOWオリジナルドラマ DORONJO」で主人公を演じる。また、監督を務める映画「Good night PHOENIX」(「MIRRORLIAR FILMS」SEASON4)が2022年9月2日に公開。

田口トモロヲ(たぐち・ともろを)
1957年11月30日生まれ。東京都出身。俳優、映画監督、ナレーターと多岐にわたり活躍。ドラマ「植物男子ベランダー」シリーズ(‘18年~、NHK)「バイプレーヤーズ」シリーズ(’17年~、テレビ東京)などに出演。2022年9月9日公開の映画「LOVE LIFE」出演。

「名建築で昼食を 大阪編」番組情報

テレビ大阪
8月17日(水)スタート 毎週水曜 深0:00~
※テレビ東京 毎週水曜 深2:35~

  

  
撮影/為広麻里