シム・ウンギョン前編「私もジュニも作品を通して成長できた」

2021/12/10 11:11

「群青領域」が最終局面を迎える前に、主演のシム・ウンギョンさんに独占インタビュー!

ジュニというキャラクターを大事に演じてきた思い、残る9話、10話の見どころ…前後編で、大いに語っていただきます。

ジュニにとっての音楽と私にとってのお芝居…向き合い方や姿勢に共感

――いま最終回の収録中と伺っています。まずは、ここまで演じてこられて、率直な心境をお聞かせください。

シム・ウンギョン(以下、シム)「『群青領域』という作品に出会って、キム・ジュニというキャラクターを演じることができました。最初は、ジュニも芸能界で活動している人物なので、私と似ているところ、共感するところがあると思いました。でも、それが全てではなくて、自分とはまた違うとこもあって。ジュニが持っている元々の繊細さを、ドラマの流れの中で視聴者の皆さんにどのように見せていけば、彼女の気持ちに共感していただけるか、すごく悩ましかったです。もうひとつは、やはり一人の成長を描いていくドラマなので、キャラクターの中心を大きい一本の線に乗せてちゃんと失わないように保ちながら、最後の最後まで演じ続けていくこと。それは役者としては、いつも向き合う一つの課題なのですが、そういう難しさも感じていました。でも、確かに感じられたものは、私もジュニも、このドラマを通して成長してきたんじゃないかということです」


――ジュニのどんなところに成長を感じますか?

シム「ジュニは最初のころ、表には自分の弱さをあんまり出していなかったんですけど、実はすごく心が疲れていて、弱い状態だったんですね。この物語は、そんな彼女が、心の疲れや傷をどういうふうに解決していくのかのお話なんですけれども、私もそういうところが深く共感できたんです。私もいつも、役者としてひとつひとつの作品と出会うたびに、すごく悩ましかったり、お芝居への壁をどういうふうに自分が乗り越えなきゃいけないのかを、考えたりしてきました。ときどき、壁にぶつかるような気持ちになったりもします。ドラマ後半の展開で、ジュニが青木荘に行って、蓮さんを含めていろんな人と出会って感じるものが、たくさんありますよね。その中でジュニが感じたものは、お互いへの真心とか誠心誠意というものだと思うんです。ドラマを撮影ながら、私の頭の中にそういう言葉が残っていました。誠心誠意という言葉は、いろんな場面でよく使われるじゃないですか。でも、その本当の意味を、このドラマを通して、やっと分かってきたというか、つかめたと思っています。だから、そういう心持ちがあれば、自分の仕事に向き合う姿勢とか、これから自分が出会う方々とのお互いの姿勢とかが、少しでも通じ合えることがあるんじゃないか、と。いろんな意味で誠心誠意という言葉の意味を、考え、確かめた、そういうお時間を頂きました」

――先ほど、韓国から来られて日本で俳優のお仕事をしているという意味で、ジュニとご自身が重なるところ、共感できるところがあるとおっしゃっていました。具体的にはどんな部分でしょう?

シム「確かに、ジュニが日本に来て芸能活動をしているというところは、それは完全に私と重なるところではありますけれども、自分が実際に本当にジュニに共感できたところは、バックグラウンドが似ていることよりも、アーティストとしての向き合い方や悩みのところです。ジュニはピアノを弾くか弾かないかで悩んでいますし、心の中に“自分はピアノを弾く、音楽をやる資格がある人間なのか”という悩みを抱えているんです。私も、どんな作品をやっても、またどこの国の作品をやってもお芝居の悩みがありますので、自分がやっていることに向き合う姿勢や、やり方が、とても彼女に共感できて、そういうジュニが持っている繊細さと孤独感を理解しながら、ちゃんと自分の気持ちも入れて演じてみたかったんです」

たえのもとに戻るという決断は、ジュニが自分で物事を決めるきっかけの出来事

――ありがとうございます。ではここからは後半の物語に沿ってお伺いします。5話で、たえ(樫山文枝)が危篤になったことは、実はビジネスのために戻って辛い思いをしていたジュニを呼び戻してくれたんじゃないか、という印象を持ったんですが、演じていてどうお感じになりましたか?

(ここでシム・ウンギョンさんより、物語については同席されていた小松EPのお話も聞きながら、とおっしゃり、以下、小松さんからも適宜、解説や補足をいただきました)

シム「たしかに、そういう解釈もできるとは思います。本当に短い時間の間でしたが、ジュニは青木荘で時間を過ごして、おばあちゃん(たえ)からしてもらったこともたくさんあるし、寄り添って学んだこともたくさんあると思います。そんなおばあちゃんが危篤になってしまった。そこで、メンバーも『行かせたほうが良いよ』というセリフも、確かにあったんだけれども、やはり、おばあちゃんに会いに行くという決心というか、決めたのはジュニが決めたんですよね。そのことが、いろんなことを自分から決めるようになるきっかけになったんじゃないかなと思っています」

小松EP「5話のあのシーンは、ホテルに隠れていて、蓮(若葉竜也)から連絡を受けたという話を聞くわけですけど、最初はやっぱりあんなことがあって演奏ができなくて、メンバーのことを考えても、一人だけ海に戻ることって、なかなか決心しづらいですよね。だから最初は、メンバーたちに背中を押されてジュニが行くっていう展開を考えたんですが、ウンギョンさんと話をしていて、やっぱりそこはジュニがちゃんと、行きづらいけれども、本当は言っちゃいけないんじゃないかと思うけれども、でもやっぱり行くべきだって自分で決めるシーンにしようねという話になったんです。それくらい、本当にジュニが自分で決めたことです。だけどたぶん、向こう(青木荘)に行っておばあちゃんを見送って、5話のいちばん最後におばあちゃんのお骨と共にクックの庭に帰って来て、蓮と二人でちょっと笑い合うわけですけど、あのころにはすごくおばあちゃんから導かれてというか、改めてそれを感じたことはあるかもしれない。けれども、行くときはジュニは自分で決めて行ったようにはしたいと。そこはすごく自然にウンギョンさんもジュニの気持ちに強く導かれたと思います」

シム「もちろん、おばあちゃんとの時間、過ごした時間で寄り添ったところもあったと思いますけれども、なにより、瞬間瞬間、おばあちゃんから頂いた教えが、確かにジュニをそこに呼んでくれたんじゃないかな、とは思っています」

毎日一生懸命生きる映里を見て、ジュニは逆に救われているのだと思います

――ありがとうございます。そうして6話から、青木荘に戻ってきたジュニの新しい生活が始まるわけですが、彼女の雰囲気がすごく変わったというか、傷ついたアーティストではなく、普通の一人の人間になっていったように感じました。

シム「意識して6話から変化を入れようというよりも、ドラマの流れに自然に乗ったというか、脚本の流れに乗ったという感じではありますね。台本に描かれているジュニの姿を見て、こういうふうに気持ちが少しずつ変わっていくんだと見ていきましたが、それをこの回からは行動とか性格も変わるからといったような意識だけが頭にあると、うまくいきません。なるべく台本に集中して、描かれている行動や変化に少しずつ自分の気持ちを、演じる気持ちを乗せたというか、そういうやり方をしているので、一つ一つを分けて考えるよりもすべて自然に流れに乗る、という感じでした」

――これから9話、10話にむけて、最大のポイントは、ジュニと音楽との向き合いがどうなっていくのかという点ですよね。6話で登場した映里(伊東蒼)との出会いが大きいのかなと思うのですが?

シム「映里との出会いは、ジュニとして何かのきっかけになるんだと思います。いつも大変だけど、一生懸命頑張って毎日をすごす映里ちゃんを見て、むしろジュニが救われているんじゃないかと思っています。映里は、初めてジュニが、誰かのことをちゃんと見守って、守ってあげる、そういう存在じゃないかなと思っていまして、映里ちゃんから、すごくいろんなことを感じて、いろんなものをもらう場面があります。それはまだ言えないんですけれども、映里ちゃんはそういう存在なんじゃないかと。むしろ映里ちゃんからジュニが救われるという。これからの回はぜひお楽しみにしてください(笑)」




■Profile
シム・ウンギョン

1994年5月31日生まれ。韓国出身。2004年に韓国のTVドラマで子役としてデビュー。以来、数々の作品に出演し、実力派女優としての地位を築いた。2019年からは日本での活動も本格的にスタート。映画「新聞記者」(’19)では第43回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。ほか「七人の秘書」(テレビ朝日系)、「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(テレビ東京系)などに出演

「群青領域」放送情報

NHK総合
毎週金曜 後10:00~ 

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