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TVガイドみんなドラマ編集部
2021.11.19
 こんな時代だからこそ胸にささる、出会いが紡ぐ再生の物語『群青領域』に 今からでも追い付ける! 小松昌代エグゼクティブプロデューサー ロングインタビュー前編
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全10話のうち、折り返し地点となる5話まで放送された「群青領域」。シム・ウンギョン演じる主人公のキム・ジュニは一度バンドに復帰するも、生放送でピアノが弾けなくなるという大事件が。そこへ、逃避行した先で出会った下宿主のたえ(樫山文枝)が亡くなり、バンドもレコード会社との契約が解除に。一体どうなってしまうのだろう…と気が気でない皆さま! そんな不安な気持ちで1週間を過ごさなくてよいように、番組の小松昌代制作統括(エグゼクティブプロデューサー)に、ここまでの物語の解説や、今後の見どころ、また、オリジナル脚本であるこの作品が本当に伝えたいことを、たっぷりと語っていただきました。前後編でお送りする超ロングインタビューを、じっくりとお楽しみください✨

優しいつながりを描く“関係性の物語”の主人公を演じられる人は、シム・ウンギョンさん以外にいないと思いました

――5話まで放送を終えた時点で、見ている方にとっては「これから一体どうなってしまうんだろう?」という展開ですが、一方でとても丁寧に人物たち、物語を描いている印象もあります。このようにじっくり見せていく物語を作った経緯や思いをお聞かせください。

「まず一番最初に、心に孤独を抱えた人が、新しい出会いの中で楽になっていく、勇気を取り戻していく、という物語を作りたいなと漠然と思いました。『群青領域』は、出会いから紡がれていくようなドラマだと思うんですけど、今、人との距離が変わっていく中で、新しく出会った存在が、その人がそこにいると思うだけで心が強くなるような、優しいつながりというか“関係性の物語”を、とにかく作りたいと思ったんです」


――その物語に、外国の人、韓国人の俳優であるシム・ウンギョンさんを起用されたのは?

「新しい出会いを重ねていくためには、全く経験のない世界に放り込まれるような主人公が必要でした。それも、ひとつのことだけをやってきたような人間が、それをすべて“もぎ取られる”ところからスタートしたい、と。周りから見れば何でも持っているような憧れの存在なんだけど、実は本人は、不安だったり、実感が無かったり、そういうものを抱えていて。だけど一方で、やってきたことへのこだわりはすごくあって、という複雑な人間。

そういう人が、持っているものを全部もぎ取られて、いわゆる普通の生活や経験をして、その中で今まで出会ったことがないような人々と出会うことで、癒やされたり、新しい関係ができていったりする。人物像としては、プロとしてのクールさがあって、だけど、ナイーブで愛嬌があって、それでいて存在感がある。そんなリアルとおかしみ、人間の悲しみを両方体現できる人なんているのかなって思った時に、シム・ウンギョンさんだけが思い浮かんだんです。だから、韓国の人だということは、私にとっては全く大きな要素ではなくて、そんなことができる人間は、彼女だけだなと思ったんです。いろんな作品を拝見していたこともあるし、まだ日本に来て間もないころに舞台に出演された際、お会いしたことがあったのですが、その時の、独特の透明感みたいなものがちょっと忘れられなかったというのもあって、彼女以外には思い浮かばなかったですね」


――そのジュ二が、4話の最後でピアノが弾けなくなり、5話でついに、たえも亡くなってしまいました。

「2~3話では、言ってみれば海辺の町での暮らしがあって、そこで出会う人たちに癒やされていって、何かを取り戻していくのかと思ったら、4話は葛藤の回で、弾けない、と、またどん底に。『え、戻らなくていいのに戻っちゃうの?』って皆さん思ったでしょうし、挙句の果てに弾けないし、たえも看取って、傷は癒やされないまま。でも実は、5話の最後に、たえを見送りますよね。遺骨を抱えて蓮(若葉竜也)とジュニが帰ってくる場面で、クックの庭に、毎年たえが楽しみにしていたコスモスが咲いている。そこに戻ってきて、たえのことを思い出しながら、二人が最後、ちょっと笑うんです。

台本では泣いていたと思うんですが、本番の撮影では笑ったんですよ、二人が。その前に、たえの亡骸を二人で挟んだシーンで、ジュニがおばあちゃんに『私はダメだった』って謝ったことで、初めて蓮も、5年前、下宿に来る前に何があったのかを、ジュニに向かって話せるんですよね。そのことで、おばあちゃんを挟んでなんだけど、二人は共通項みたいなものを初めて見いだした。それで二人が最後に、笑うんです。だから、“兆し”というか、共通項を見いだした二人の間に少し光が見えてきて、これからの方向が見えてくる回だと思っています」


――5話にはこれからの物語の“兆し”が見える、と。では、もし二人が笑うところを見逃してしまった方は、ぜひもう一回「NHK+」で見ていただきたいですね!

「本当に折り返しで、6話から第二章じゃないですけど、新しい人生に向かっていく、折り返しの回なので、それこそ5話は、主題歌も、ものすごく長く使っているんです。フルに近い形で、おばあちゃんを思い出す二人に寄り添う形にしたんですね。そうしてじっくり、二人の関係が近づいていく。多分ここから二人は、お互いに寄り添いながら、少しずつ少しずつ背中を押し合うような関係になっていくと思うんですけど、その出発点になっています」

ここからは、人々がどう認め合っていくのか、分かり合っていくのかをじっくりと描きます

――ジュニのことにフォーカスすると、4話で弾けなくなくなった瞬間に、お母さんとのやり取りで感じていた、“過去のこと”がフラッシュバックする場面もでてきて、これは物語の最後までジュニが向きあう、大きな問題になるのでしょうか? 

「そうなんです。陽樹(柿澤勇人)とのことはきっかけで、彼に言われたことはすごく鮮明に彼女の中にあるけれども、その奥に、細かくはまだ明かせないのですが、多分ずっとしまっていた問題があるんです。蓮もそうだったように、その出来事について、話せるようになることがまず第一歩ですよね。この後、また新しい出会いがいくつもあって、いろんなことが起きていく中で、ちょっとずつちょっとずつ、登場人物たちが互いに自分のことを明かしていくような流れがあると思います。その中でもしかしたら、ジュニは弾けなくなっていたピアノと向き合うきっかけになるような出来事もあるかもしれません。そうやって、少しずつ少しずつ、みんなの中で眠っているものが目覚めていったり、互いの関係の中で影響しあって変わっていくことを、ここからはゆっくり、じっくりと描いていけるのではと思います」


――お話を伺っていて思うのですが、この作品は、あまり強い人が出てきません。弱くて、逃げて、そういう人たちがだんだんに集まってきて、触れ合っていく中で少しずつ癒やされ再生していく。それが実は、今の時代を映しているのかな、という印象を受けました。

「結局、ジュニがたえから言われたこともそうですけど、いろんな生きづらさを抱えた人が集まってきて、共生していくわけですけど、みんなそのままでいい、ありのままでいられるように存在をお互いに認め合おうよ、ということだと思うんです。だから、ジュニは、おばあちゃんからいろんな素敵な言葉をもらったし、そのことで癒やされてきたけれども、ここから先は、おばあちゃんはいないし、ジュニや蓮が、おばあちゃんにもらったものを、今度は自分の言葉だったり、自分のやり方で分けていくわけです。でも多分それは、何かとても力強い言葉を掛けるとかではなくて、本当に、もしかしたら横にいるだけかもしれないし、お互いに認めるだけかもしれない。今度は彼女が彼女のやり方で、どうやってその人と関わりあって、お互いに分かり合っていくかということが、ここからのテーマだと思います」

――6話では、たえからの遺言で下宿を託された蓮が、継ぐかどうかを悩みますね。

「はい。まさにその、蓮が迷っているときに、縁側でジュニが言葉を掛けるんですけど、お互いに決定的なことを言葉にはしないんですよね。何気ないことを二人でぽつぽつと喋っているんですけど、そこに出てくる空気のようなものが、ものすごく語っている気がして、私はそれを見たときに、『これなんだな、この先って』と、この空気が語っているものを、見ている方に感じてほしいなと、まず思いました。一方で、この物語は大きな事件が起こってそれを解決する、という話ではないので、人と人との関係性の中で話を進めていくために、制作サイドとしては台本の中にどうしても少し強い言葉とか、ある意味説明だとかを込めようとするんです。それを、出演者の皆さんが演じている中で『私たち、ここにいる空気で、何かを語れるんだけどなぁ』って、『そんなに焦らないで』って、お芝居を通して言われた感じがありまして。私たちもある時から、そういうのをちょっとやめてみようと思ったんです」


――確かに説明が要らない空気というものが、あるように思います!

「この先の展開で、ある人物が青木荘に来るんですけど、まったくなじめなくて、その時に、下宿の住人たちはどうするんだろう、と。今までだったら、その人を救う言葉を入れようと思うんですが、やめたんです。例えばセリフは『ごはん…おいしかった?』、『…うん』『…なら、よかったよ』とか。こういうことかも、と」

出演者たちとも相談しながら作り上げていく。こんなに“生モノ”を扱っている感覚を覚えるのは初めて!

――撮影の現場でも、出演者と制作者の出会いで新たな形が紡がれているんですね。

「ここらへんのことは演じている彼らに相談してみようと思って、監督にもですが、実は最近はかなり相談しています(笑)。きっと人って、ものすごく目覚ましい転換点はなくても、こういうじわりじわりとした空気の中で、徐々にほぐれていく。みんな少しずつ弱いものを持っているわけだし、言葉にしなくても分かり合う感じがシーンの中に表われれば、それが一番良いことだなって思うようになりました。なんだかとっても、“生モノ”を扱っている感じなんです!」

――すごい! お話を伺っているだけでも、モノづくりの臨場感にゾクゾクしています。

「当然これまでも、現場で役者さんが演じているところを見てきていますから、おお、こうなるのかっていう経験はしてきていますけれど、なんかちょっと初めての体験で。当然役者さん同士で出てくる相乗効果も、ものすごくたくさんあると思うし、あとやっぱり今回すごく大きいのは、シム・ウンギョンさんですね。あの、なんだろう…演技なんだけど、演技とか表現っていう言葉じゃなくて、もう『体現』なんです」


前編はここまで! 明日11月20日公開の後編では、“女優シム・ウンギョン”の凄みや、Indigo AREAの音楽面、物語の発端をつくった“彼”やバンドメンバーたちのこれから、そして「群青領域」というタイトルに込めた思いについても語っていただきます!!(聞き手:TVガイドみんなドラマ編集部T部員)

Profile

小松昌代(こまつ まさよ)
フリーで日本テレビやテレビ朝日でドラマ制作に携わった後、NHKエンタープライズでプロデューサーに。これまで連続テレビ小説「おひさま」(NHK総合ほか)、大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK総合ほか)や「少年寅次郎」シリーズ(NHK総合ほか)で制作統括を担当。

ドラマ10「群青領域」

NHK総合 金曜 後10:00~10:45 
※リピートあり


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