毎回イチオシのドラマ作家をご紹介している「推しの作家さま」。今回はいよいよこの方! 現在、テレビ朝日系で「星降る夜に」が放送中の大石静さんです。
時代に挑み続ける大石脚本が伝える、愛することの素晴らしさ&俳優の新たな魅力
大石静さんは、’80年代の後半から現在まで35年以上の長きにわたって第一線で活躍し続けている、まさにドラマ脚本の第一人者です。「恋愛ドラマの名手」と称されることも多いですが、彼女のキャリアはそこにとどまりません。コメディータッチのホームドラマから青春群像もの、ハードな社会派ドラマやお仕事ドラマ、そして実在人物の評伝など、作風は実に多種多彩。「ふたりっ子」(’96年)、「オードリー」(’00年)と朝ドラも2回手掛け、「功名が辻」(’06年)以来2作目となる’24年の大河ドラマ「光る君へ」も控えています。原作ものでもオリジナルでも、あらゆるタイプのドラマを自在にこなし、平成以降のテレビドラマを牽引してきました。その守備範囲の広さは、他の追随を許しません。
何より特筆すべきなのは、どのドラマにも必ず新しい切り口や味わいを忍ばせ、時代に挑み続けるその姿勢です。大石作品の根底には常に既成の価値観にとらわれない自由さがあり、同時代の問題意識への目配せがあります。そして、人生に対する希望がある。つらい物語が描かれることもあるけれども、大石さんのドラマにいつも明るさがあるのは、それゆえでしょう。
もちろん、それは「恋愛ドラマ」の分野でも存分に発揮されます。大石さんのラブストーリーには、人を愛することはいかに素敵で幸せなことか、がいつも描かれています。生きていくことは楽しいことばかりではないし、逆に誰かを愛することで新たな苦しみが生じることもあるけれど、それでも人を愛することで人生に一筋の光が差し、生きる価値が生まれることがある。困難に立ち向かっていく勇気を得られることもある。そんな人を愛することの素晴らしさが、私たちを惹きつけて止まないのです。
放送中の「星降る夜に」でも、生と死が隣り合わせの世界で生きる産婦人科医の鈴(吉高由里子)と遺品整理士の一星(北村匠海)が、互いを愛し、愛されることで、それぞれの人生を前向きに生きていく姿が描かれています。というかこのドラマ、胸キュン&イチャラブシーンが縦横無尽に駆け巡りすぎですよね。主人公の二人だけでなく、登場人物みんなが愛にあふれていて心が温かくなります。二人の恋にとどまらず、夫婦や家族の問題、医療の問題など、さまざまなテーマを織り込みながら物語が進んでいく様はさすがのひと言で、その構成の上手さと展開の見事さには、ほれぼれします(セリフのスゴさも際立っていますよね。手話での会話が多いことで、セリフの良さは語尾や言い回しのニュアンスに左右されるものじゃないんだな、と改めて気づかされました)。
大石ドラマにあるもう一つの楽しみ、それは俳優の新たな魅力が味わえるということ。内野聖陽さんや佐々木蔵之介さん、長谷川博己さんなど、大石さんのドラマからイケメン実力派男優が多く輩出されたのは有名な話ですが、藤原紀香さんや永作博美さん、鈴木京香さん、北川景子さん、戸田恵梨香さんなど、大石作品が新たな代表作となった女優も数知れません。俳優の中にある、本人も気づいていないかもしれない魅力を、大石さんが見抜いて引き出しているという何よりの証でしょう。
ディーン・フジオカの真骨頂⁉ 大石脚本が作り出す天然キャラ
「星降る夜に」の吉高さんや北村さんも、生き生きとした演技で新しい魅力が満載ですが(ゴールデンレトリバーなのか、サモエドなのか…北村さんの大型犬男子ぶりは特に!)、今回新境地を見せてくれた俳優といえば、なんと言っても佐々木先生役のディーン・フジオカさんでしょう。これまでにない天然キャラが炸裂していて、まさに隠れた才能が開花したというところです。ほかにも、マロニエ産婦人科や遺品整理のポラリスの面々もみんな個性的で、優しくて、いろいろ悩みも持っていて。演出も素晴らしいのですが、こうした人生の豊かさを確かに感じさせてくれるのは、やはり脚本の力が大きいと思います(それにしても、佐々木先生とポラリスの北斗社長の役名は絶妙ですね)
そして第6回(2/21(火)放送)では、過去の医療事故をきっかけに主人公の鈴につきまとう男として、姿を隠して描かれてきた伴宗一郎役のムロツヨシさんが登場。ここからドラマは、新たなステージに突入します。息苦しさの中で生きる鈴に懸命に寄り添おうとする一星。二人はどんな答えを見つけるのか。最後まで見届けましょう。
「星降る夜に」放送情報
テレビ朝日
毎週火曜 後9:00~
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文/武内朗