永瀬廉&小池徹平インタビュー後編「頑張る同志の存在」

2022/01/03 11:11

長崎を舞台に、若者たちの熱き冒険を描くドラマ「わげもん~長崎通訳異聞~」で主人公・壮多を演じる永瀬廉さん、森山を演じる小池徹平さんのインタビュー後編。

オランダ語をオランダ語だと脳に理解させるところからスタート

――今回はオランダ語でのセリフがあって大変だったと思いますが、やはり苦労されましたか?

小池「正直なところ、どうだった?」

永瀬「いや大変でしたよ。オランダ語は、日本語にはない発音が多いんですよね。例えば『g』の発音が『ガッ』っていう、ちょっとうがいをした時のような発声になるんです。この発音は、二人でめっちゃ練習していたので、撮影現場ではうるさくして周囲に迷惑をかけたかもしれないですね(笑)」

小池「はっはっは(笑)」

永瀬「隙があれば声に出していましたよね、『ガッ』て。『君らは、どんだけ痰がからんでんねん!』と思われていたかもしれないです」

小池「そうかも(笑)」

永瀬「傍から見たら、僕らは相当変だったと思います」

小池「でも、それぐらい練習が必要だったんです。というのも、僕は今回、オランダ語を初めて聞いたに等しい状態でした。まず、この難しい音を、『これがオランダ語なんだ』と認識するところから始まって、最初から大変でした。英語は聞き馴染みがあって、誰かが喋っているのを聞いてもすぐに、『英語を喋っているんだな』と分かると思うんです。でも、オランダ語をいきなり聞いても、話している言葉がオランダ語だと分からないですよね。だから、オランダ語をオランダ語と脳に理解させるところから始まって、意味を理解して、実際に言葉として発するに至るまで…、すごく時間がかかりました。本当に大変だった(涙)。あと、廉くんもかもしれませんが、お話を頂いてからクランクインまで2週間ぐらいしかなかった(涙)」

永瀬「マジですか?」

小池「うん。で、とにかく2週間でオランダ語を上手に話せるようになって、有能な通詞役を全うしなければならなかった。なので、僕は相当頑張りましたよ(笑)! リモートでひたすらオランダ語の先生とやり取りをして、意思に関わらず毎日オランダ語を喋る。それこそね、『g』の、うがいみたいな『ガッ』の発音は、僕は撮影現場だけじゃなく、移動中も家に帰ってもずっと声に出して練習していました(笑)。子どもがオランダ語をちょっと喋るようになるんじゃないか、っていうぐらい。本当に、今までで一番苦労したんじゃないですかね、役作りとしては。でも、そういう努力を厭わない気持ちにさせてくれる素敵な作品でしたし、僕自身も『どうしてもこの作品は挑戦したい』という思いが強かったので、必死に頑張りました。僕に声を掛けてくれた、という期待にも応えたかったですし」

一緒に頑張る同志が隣りにいたからこそ、完走できた


――苦労されている分、お互いに英語やオランダ語を話すシーンでは、「すごいな!」と感じるところはありましたでしょうか?

小池「いや、めちゃくちゃ感じます」

永瀬「いや、本当ですよ」

小池「廉くん、すごいと思いました」

永瀬「いやいや、僕のほうが感動していますよ(笑)! 小池さんの最初の撮影シーンが『わげ(和訳)』していく場面だったと聞いて、『いきなりそこからなんや!』って驚きました。ある程度、作品全体や現場の雰囲気に慣れたり、日本語の場面から入っていったのかと思ったら、いきなり通訳のシーンからって…すごすぎる。何か、小池さんの努力を怠らない姿勢が垣間見えた気がして感動しました!」

小池「いやいや、初日は英語だけだったから」

永瀬「それでも感動ですよ! 第1回を見て思ったんですけど、英語のシーンが多くて、よく撮り切れたなと」

小池「良く撮り切れたって(笑)」

永瀬「英語もオランダ語もそうですけど、セリフの量が増えてくると、どんどん難しくなるんですよ。例えば、英語のセリフを話しているうちに意味とか言葉がこんがらがって、セリフの順番を間違えちゃったり…、そういう懸念が出てくるんです。でも、小池さんはちゃんと外国語を自分のものにして、シーンを成立させている。僕は実際に立ち合ってそのシーンを見ていないので、どのように乗り超えたのかは分からないですけど…」

永瀬&小池「(爆笑)」

小池「僕が、廉くんをすごいと思ったのは、やはり対応力というか…。お互いオランダ語をマスターすることは一緒で、劇中できちんと話さなくてはならないことも一緒。ただ、オランダ語のセリフは、圧倒的に廉くんの方が多いんですよ。先ほど少し話しましたが、ほんのちょっとした一言でもオランダ語は難しくて、すごく練習しないと芝居の域にまで持っていけない。ただ読む分には、ある程度練習すればなんとかなりますけど、言葉をきちんと覚えて、自分の言葉として発するまでが、すごく大変なんです。ものすごく練習しないとその域には達しない。だけど、初回を見たら、見事にオランダ語のセリフをやってのけている。『うわー、こいつすげー』って、本当に感動しました。台本のト書きに“伊嶋壮多が喋るオランダ語に一同が聞き惚れる”と書いてあったりするんですよね。これってけっこうプレッシャーがかかると思いますが、それもそつなくこなしちゃうんですよ。オランダ語のシーンでNGを出したこともなく、いきなりバーンと演じ切っちゃうから、もう驚きですよ! だって、廉くん忙しいじゃないですか。紅白に出ているんですよ! グループ活動もあるのに、本当にすごいなと思います」

永瀬「いやいやいやいや(汗)。一緒に頑張ってくれる同志が、こんな近くにいたからこそです!」

小池「本当に同志だったよね。撮影をしていると、急遽変更ということはよくあることで。オランダ語に関しても同じ。ちょっとセリフを追加するとか、変更しますとか…。正直なところ、『マジやめてくれ!』って僕は思ったんですよ。『もう無理、無理無理ー!』って思うんです。でも、廉くんを見ていると、この作品以外の仕事でも忙しくしているので練習時間も限られているだろうに、変更があっても本番でビシっと決めてくる。すごいなって思ったし、廉くんがいたから僕も頑張れたところがあります」

――大変だったことがあった一方で、楽しいこともあったのではと想像するのですが…いかがですか?

永瀬「楽しかったところ? どこだろう…」

小池「ないの(笑)?」

永瀬「いや、あるんですけど(笑)、どこにしようかなと思って」

小池「まあ、いっぱいあるから(笑)」

永瀬「僕は、琵琶湖に行ったのがすごく楽しかったですね。確か最後の方のシーンだと思うのですが、琵琶湖で撮影をしたんです。待ち時間に、みんなで缶に火をくべて暖を取りながら、気温当てゲームをしたのが楽しかったですね」

小池「言葉が大変だったとお話ししましたが、オランダ語でのお芝居は、めちゃくちゃ楽しかったです。お芝居に入るまでの準備過程がすごく大変だった分、しっかり演じられた時は、何とも言えない達成感があったというか…。すごく楽しかったよね?」

永瀬「楽しかったです。めちゃくちゃ楽しかったですよ」

小池「ね! 演者さんも、いろいろな国の方がいらっしゃって、外国語で普通に会話していたよね」

永瀬「はいはいはい」

小池「当たり前の光景になりすぎていて忘れていたけど、俺たち、オランダ語で芝居していたんだよ!」

永瀬「すごいっすよね!」

小池「そうでしょ!」

永瀬「めちゃめちゃすごいことをしているじゃないですか、僕ら(笑)!」

小池「映像チェックをした時に、『いや、すごいことしているな』って改めて感じて…。頑張ってよかった、って報われるような気持ちがあって、本当にお芝居が楽しかったです」

永瀬「あと、僕としてはかつらを被って着物を着る、いわゆる本格的な時代劇に挑むのが初めてでした」

小池「ああ、時代劇がね!」

永瀬「はい。なので、そういう雰囲気の中でお芝居をさせていただく経験も、めちゃめちゃ楽しかったですね」

教科書に載っていない歴史をたどっていくので、物語の全てが発見

――最後に、作品を通して気づいた発見や、語学への興味関心について、お二人の気持ちを教えていただけますか?

永瀬「語学に関しては、高校生のときに英検準2級に合格しました」

小池「すごいじゃん!!」

永瀬「ただ、そこがMAXであり、ピークでした(苦笑)。そこからは、単純に勉強する機会が減って、語学力も落ちる一方です。作品を通しての発見については、全てが発見でした。この時代に関する出来事で、学校の授業で学んで記憶に残っているのは多分、“ペリー来航”ぐらいじゃないですかね(汗)。今回の『わげもん』は、その時代に裏側で活躍した通詞の物語で、ほとんどが教科書に載っていないこと。なので、僕にとっては全てが新しい知識で、歴史をたどりながら、今まで知らなかったことを知っていった感覚です。頂いた資料と照らし合わせながら台本を読んで、一つ一つのことを学んでいったので、毎回新たな発見があって楽しかったです」

小池「僕は、まず、学生時代の語学に関しては普通です。英語の授業がピークです(笑)」

永瀬「英語ですよね!」

小池「なので今回、オランダ語を猛特訓しました。作品での発見に関しては、ちょうどペリー来航の1年ぐらい前の森山栄之助について、プロデューサーさん、監督さんにいろいろと聞くことができたんです。その辺りのことを書き留めていた森山の書物が残っていて、その中に、ペリーが来るという情報を察知していた…、ということが書かれていたようで。それは、知られざる歴史に触れたみたいで、発見でしたね! ほかにも、この作品に携わったからこそ知れた歴史がいくつもあるので、もう全てが発見でした。森山という実在の人物がいることも知らなかったので驚きましたし、彼のような通詞がいたことにも感動しました。今回のドラマを通して、より多くの人に森山の存在を知ってもらえたらなと思います」




■Profile
永瀬廉(ながせ・れん)

1999年1月23日生まれ、東京都出身。’18年、King & PrinceとしてCDデビュー。翌年には、映画「うちの執事が言うことには」(’19年)、ドラマ「FLY!BOYS, FLY!僕たち、CAはじめました」(フジテレビ系)でそれぞれ初主演を務める。’21年には「おかえりモネ」で連続テレビ小説初出演を果たす。待機作に、1月22日公開の主演映画「真夜中乙女戦争」。

小池徹平(こいけ・てっぺい)

1986年1月5日生まれ、大阪府出身。ドラマ「天体観測」(’02年・フジテレビ系)での俳優デビュー以降、ドラマや映画、舞台などで幅広く活躍。チャーリー・プライス役で出演するブロードウエイミュージカル「キンキーブーツ」の上演を、今秋に控える。

「わげもん~長崎通訳異聞」放送情報

NHK総合ほか 
1/8(土)スタート 毎週土曜 後9:00~
※NHKプラスでも配信中

  
文/水上賢治