永瀬廉&小池徹平インタビュー前編「言葉の大切さ」

2022/01/02 10:10

ペリーの黒船来航まで4年に迫った嘉永2年の長崎を舞台に、若者たちの熱き冒険を描くドラマ「わげもん~長崎通訳異聞~」。放送を前に永瀬廉さん、小池徹平さんを直撃!

本作の主人公は、たぐいまれな語学センスと好奇心を持つ青年・伊嶋壮多(いじま そうた)。この地で通詞(※)として活躍した父の失踪の謎を追うべく江戸からやって来た彼が、名通詞・森山栄之助(もりやま えいのすけ)の英語塾で英語を学びながら、長崎で起きる事件に挑んでいきます。明後日に迫った放送を前に、主人公・壮多を演じる永瀬廉さん、彼の師匠的立場となる森山を演じる小池徹平さんに、物語を通して伝えたいことなどを伺いました!

※通詞(つうじ):通訳者。当時のオランダ通詞たちは、通訳に加え、政治的な交渉に立ち会う情報収集に当たるプロフェッショナル集団でもあった。

小池さんは先輩ですが、苦労をともにした“同志”のような存在

――はじめに、共演する前と後の、お互いの印象やイメージについて教えていただけますか?

永瀬「うちのグループ(King & Prince)のメンバー神宮寺勇太が、小池さんと共演していたので、『小池さんってどんな方?』って聞いたんですよ。そうしたら、撮影現場でめちゃめちゃお子さんの話をされていたと聞きまして(笑)。その情報を頭に入れて、いざ撮影現場に行くと、想像よりもさらに上をいくといいますか…。小池さんが、とにかくお子さんの話を本当に嬉しそうにされるんですよね(笑)。神宮寺に聞いた通りだと思いました。あと、僕がボケると、必ず拾ってくれて突っ込んでくれるところには、ものすごく親しみを感じます。そこは、お互い大阪にゆかりがあるということですかね。小池さんも僕もボケたり、ツッコんだりしますし、漫談っぽい感じのやり取りでとても楽しい時間を過ごしています」

小池「僕も、神宮寺くんに聞いたんですよ、『永瀬くんって、どんな人?』って(笑)。多分、廉くんと同じタイミングで質問したので、神宮寺くんには迷惑だったのかな、と思ったんですけど(苦笑)。神宮寺くんからは『真面目で頑張り屋ですし、僕よりしっかりしていると思います』と。神宮寺くんも相当しっかりしているので、『それ以上にしっかりしているって、どんだけ、ちゃんとしているんだろう?』と(汗)。ちょっと警戒じゃないですけど、僕もしっかりしないと、と構えたところがあったんです。でも、実際に会ったら、まず関西弁で、ものすごく親しみを感じました。感じのいい、関西の兄ちゃんみたいだな、って思ってから、一気に距離が縮まりました。今は、それぞれの役を演じる上で学ばなくてはいけないことが同じで、同時期に勉強を始めたこともあって、『大変だけど一生懸命勉強を頑張ろう』と、お互いに励まし合う仲になっています(笑)」


――兄弟のような感じですか?(笑)

永瀬&小池「いや、兄弟ではないと思うんですが…(笑)」

永瀬「なんですかね…」

小池「苦労をともにした“仲間”みたいな感じになっています」

永瀬「そうですね。同志というのが近いかもしれません。もちろん小池さんは先輩ですが(汗)」

偉人を陰で支え、国と国を繋いだ“通詞”に着目した斬新な作品

――では、作品について、出演の決め手になったドラマや役の魅力についてお伺いできますか?

永瀬「タイトルから『うわぁ! 何だこれ? 「わげもん」ってどういう意味?』と、ものすごく興味を持ちました! それからプロットや大まかなストーリーを読んで、僕の中で知識がなかった時代のことではあるのですが、『この時代にこういう人たちがいたんだ』という驚きが大きくて…。長崎にすごく興味が沸きましたし、知らないことを知れるという面白さが物語にもあったので、まずはやってみたいと思いましたね。あとは、僕自身、いろいろなジャンルの作品に携わりたい、いろいろなことにチャレンジしていきたいという気持ちが強いので、このタイミングでNHKの時代劇の主演を任せてもらえることが本当に光栄で、めちゃめちゃ嬉しかったです。なので、出演が決まってからは、伊嶋壮多という人物にずっと思いを馳せながら、ワクワクしながら脚本を読んでいました。毎回、『早く、次の脚本がこないかな』と、新たな脚本が届くのを心待ちにしていました」

小池「僕が一番面白いなと思ったのは、やはり“わげもん”という“通詞”にスポットを当てているところ。いろいろな時代劇があって、いろいろな人物が描かれている中で、『通詞という存在をクローズアップした作品というのは、これまであったのかな?』と思ったんですよね。少なくとも僕は聞いたことがないし、見たことがない。それから、時代劇はやはり歴史上の偉人に焦点を当てることが多いと思うんです、何かを成し遂げた人が主人公になるというふうに。そういう中で敢えて、偉人たちを陰で支え、偉人と偉人、国と国をつなぐ役割を担った人に着目した点が素晴らしいですし、斬新で、ぜひ参加したいと思いました。通詞は“言葉”が重要になってくるので、難しい役になるんだろうなぁと予想しながらも、チャレンジしたいと感じましたね」


――永瀬さんは、通詞で失踪した父の謎を追って江戸から長崎にやって来た壮多を演じ、小池さんはオランダ語通詞の栄之助を演じられます。役を演じる上で大切にしたことはありますか?

小池「森山栄之助はとても有能な通詞なので、そう見えるように、というのがまず大前提にあったのですが、僕の中では、他にも彼が担わなくてはいけないものがあると感じたんです。それは、当時の長崎という場所を体現する役割ですね。日本は鎖国の真っただ中で、異国と交流できる場所は限られていた。この時代において長崎は、非常に特殊な場所で、長崎だったら何でもできる、というような他の地域とは違う文化交流や人の往来があった。長崎出身の森山は、通詞として時代の流れを全部体験してきている。全編にわたり、長崎弁で演じているんですが、当時の長崎がどういう場所で、どういう雰囲気だったのかが皆さんに伝わるように…、との思いを込めて演じたところがあります。森山という通詞を通して、『当時の長崎ってこんな感じだったんだ』と伝わったら嬉しいですね」

永瀬「壮多に関しては、置かれた境遇がまず複雑。謎の失踪をした父を探して江戸から長崎にやって来て、さまざまな事件に巻き込まれながらも、どうにかして真相を解き明かそうとする。その行動力と勇気はすごいな、と思います。ただ、ある意味ヒーロー然としたところでは終わらせたくないというか…。彼も壁に当たればくじけそうになるし、弱気になることだってあります。強いところもあれば弱いところもある、そういう部分を大事に演じることで、一人の人間として作品の中で生きられたら、と思いました」

時代や言語は違っても、「言葉」で伝えることの大切さは同じ

――そういった思いを抱きながら演じる中で、今回の物語と現代が繋がっていると感じた部分はありましたか?

永瀬「物語の数年後にはペリーの来航がありますし、日本という国が大きく変化していく頃ですよね。西洋からいろいろなことが流入してくることで、社会も生活も変わっていく。いわゆる、激動の時代。ただ、時代って常に変化していて、いつの時代も、その変化に翻弄されながらも必死に生き抜こうとする人がいると思うんです。そう考えると、今も激動の時代で、世界の情勢は絶え間なく変化していますよね。そういう意味で、今の時代、今を生きる僕らにも繋がっているのではないかと思います」

小池「廉くんの話にも少し繋がりますが、この時代は、『もう明日はどこの国がくるんだろう?』のような、心が落ち着かない空気が世の中にあったのではないかと思うんです。異国から何かが入ってきて、否応なしに対応しなくてはならなかった。それくらい、大変な時代だったと思うんですよ。でも、そんな中、みんな必死に生き抜こうとした。今も同じように必死に生き抜こうとしている人がいる。その生きる力は、実は同じなのかな、と思いましたね」

永瀬「あと、もう一つあるとすると、『言葉』じゃないですかね。言葉を使って相手に何かを伝える。コミュニケーションの大切さは、いつの時代も変わらないんだな、と今回演じて感じました。言葉で相手に気持ちを伝える、その言葉の大切さを実感しています」


――お二人ともに初回をご覧になったということですが、いかがでしたか?

永瀬「いやあ、まずは無事に始まったなと。いろいろな点で苦労をしたので、個人的に思い起こすこともいっぱいありました。そんな中でも、初回を見ての率直な感想は、『これからどうなっていくんだろう』という、この先に期待する気持ちですね。この先、どうなっていくのかは、演じているので分かっていますが、それでもめちゃめちゃワクワクしちゃいました(笑)。『壮多とこの人たちとの関係性がどう変化していくんだろう』って。初回では、壮多が後に深く関わることになる重要な人たちと出会って、おおよその人物相関図と物語の背景が分かるような内容になっているんです。その中でも、言葉は通じないけど、相手に気持ちが伝わる、という場面があって…。その時、壮多は、コミュニケーションが取れることの嬉しさに目覚めるんです。一つの気づきを得た彼がこれからどうなるのか、本当に楽しみになりました」

小池「感想を一言で表すなら、手前みそかもしれないですけど、すごく面白かったです。正直なことを言うと、第1回に関して、ちょっと危惧していたことがあったんですよ。というのも、さっき廉くんが言ったように、誰と誰がどういう関係性にあるのかという人物相関図が見えてくるのですが、いろいろな人が登場して複雑に関係が絡み合う。台本を読んだ僕の印象では、これだけだと理解するのが難しくて、視聴者のみなさんを置き去りにしてしまうのでないか、と心配していたんです。ですが、本編を見たらナレーションを担当されているクリス・ペプラーさんが素晴らしくて…。クリスさんの声が映像に乗ると、物語の背景がすーっと頭の中に入ってくるんですよね。僕の心配は、杞憂に終わりました(笑)。この第1回で、だいたいの物語の背景と人物の相関図をつかんでもらって、これから続く回に期待してもらえたらと思います」



■Profile
永瀬廉(ながせ・れん)

1999年1月23日生まれ、東京都出身。’18年、King & PrinceとしてCDデビュー。翌年には、映画「うちの執事が言うことには」(’19年)、ドラマ「FLY!BOYS, FLY!僕たち、CAはじめました」(フジテレビ系)でそれぞれ初主演を務める。’21年には「おかえりモネ」で連続テレビ小説初出演を果たす。待機作に、1月22日公開の主演映画「真夜中乙女戦争」。

小池徹平(こいけ・てっぺい)

1986年1月5日生まれ、大阪府出身。ドラマ「天体観測」(’02年・フジテレビ系)での俳優デビュー以降、ドラマや映画、舞台などで幅広く活躍。チャーリー・プライス役で出演するブロードウエイミュージカル「キンキーブーツ」の上演を、今秋に控える。

「わげもん~長崎通訳異聞」放送情報

NHK総合ほか 
1/8(土)スタート 毎週土曜 後9:00~
※NHKプラスでも配信中

  
文/水上賢治