ブログでのドラマ情報の発信や、HISのオンラインロケ地巡りツアーで韓国ドラマファンから人気のソウル在住K-dramaライター、Misaさんにインタビュー。
韓国ドラマは化粧品選びと同じぐらい、人によって合う作品が全く異なる
――2004年の韓流ブーム時、「天国の階段」にハマったとMisaさんのブログで拝見しました。具体的には、同作のどんなどころにハマったのでしょうか?
「一番は、韓国に行ったことがなかったこともあり、韓国に対するイメージとドラマで見た印象が全然違ったことです。初めて見た時、ドラマの衣装やセットもそうですが、社会自体も私が想像していたよりもずっと洗練されているな、と。あとは、ドラマの続きが気になって止まらなくなる…。日本のドラマも好きでしたが、この没入する感覚は、私にとっては今までにはない感覚で、ハマる深さは全然違いました。感情を揺さぶるストーリー展開やセリフが、これまで見ていたドラマとは違うと感じたので、気づいたら、一気に見ていましたね」
――それから、韓国語の学習を始められて…?
「『天国の階段』を見てから韓国語を学ぶまで数年空いているのですが、当時、最新の韓国ドラマを日本で見るために1年ほど待たなければならず、私にとっては苦痛で…(汗)。字幕なしで見たい、何を言っているかもっと知りたかったので、2011年あたりから韓国語を勉強し始めました。韓国に初めて渡ったのは2005年だったのですが、そもそも初めての海外旅行だったので韓国に行きたい一心でパスポートを取得し、ロケ地を巡っていましたね。当時は韓国語も話せませんでしたし、韓国でも今ほど日本語が通じるわけでもなく、スマホもなかったので、英語を交えながらの会話。それこそ、韓流雑誌にあったロケ地の紹介ページを切り取って、持って行っていました」
――当時、実際にロケ地を訪れてみていかがでしたか。
「不思議な感覚で、感動しましたね。『天国の階段』に加えて、『冬のソナタ』のロケ地も行ったのですが、その時のことが印象深いです。『冬のソナタ』で一番有名な並木道に行ったのですが、いろんな国の人が来ていることに驚きました。さまざまな国の人が一つの作品を見てここに来ているのはすごいことだなと、その時の光景や感動は今でも鮮明に覚えています。今や、世界中の人が韓国ドラマを見ている世の中になりましたが、そうなる未来を見たような瞬間ですよね。その時に、『いろいろな人にドラマを見てもらう、そんな仕事に関われたらいいな』と思いましたが、その時は、具体的にどうやったらそんな仕事ができるのかは、イメージできていませんでした」
――それから、2018年に韓国に移住を決意されるまでの間にはどのようなことが?
「『いつか韓国ドラマに関する仕事ができたら』と思った当時は、IT業界に転職したばかりの頃だったので、実際には韓国ドラマは趣味として楽しんでいて、休みが取れるたびに1週間など少し長めに韓国に遊びに行っていました。『住んでいるように過ごしたいな』と、観光するでもなく、カフェで韓国語を勉強していましたね。ただその後、多忙から働き方を変えたくて『1年間休もう』という思いで会社を辞めて、2018年に韓国に渡りました。最初は、移住や仕事をするつもりではなかったのです。ただ、日本と韓国を行き来して1年ぐらいがたった頃、知り合いからたまたま韓国で仕事の話をもらって、正式に韓国で働くことになりました。ブログは韓国に来てから始めたのですが、最初は美味しいお店の紹介。今のように韓国ドラマやロケ地の情報を発信するようになったのは、コロナ禍になってからです。結果的に、ブログがきっかけで韓国ドラマに関するお仕事ができるようになりました」
――趣味でもロケ地を巡られていたとのことですが、今まで訪れた中で印象に残っている場所、作品は?
「『椿の花咲く頃』(’19年)のロケ地の浦項市クリョンポですね。一番好きなドラマということもありますが、街全体がロケ地になっていたので、ドラマの世界に入ったような感覚で、すごく好きな場所です。何度か訪れたので、ロケ地のお店の方とも親しくなりました。
同じ浦項市では、『海街チャチャチャ』(’21年)の撮影も行われていて、最近ドラマでよく登場する場所の一つです」
――書籍で紹介されている「愛の不時着」「梨泰院クラス」で、それぞれで印象に残ったロケ地を挙げるとしたら…?
「『愛の不時着』はやはり、セリ(ソン・イェジン)とジョンヒョク(ヒョンビン)たちが別れた涙のシーンの舞台となった道路(書籍P54『唐津市石門面通丁里』)ですね。実際は何でもない道路なので、ドラマの映像を一つ一つ見ながら、どこに線(38度線)が引かれていたのかを細かく確認しました。灼熱の中、2時間ほどかけて調べたので、今後も記憶に残ると思います(汗)」
――2時間ほどかけて…大変でしたね。
「そして、もう一つは、“平壌第一ホテル”のロケ地となった釜山にあるホテル(書籍P66『コモドホテル釜山』)ですね。ホテルは、この取材のために実際に宿泊したのですが、ドラマの世界に入った気分になれるので、本当におすすめです! 『梨泰院クラス』はロケ地ではありませんが、原作者の方が経営しているお店(書籍P90『クルバム』)がおすすめです。店内でドラマのOSTもかかっているので、ロケ地を回った後に行くとテンションが上がると思います」
――書籍を拝見すると、本当に細かくロケ地が紹介されているので、取材の準備もすごく大変ですよね? 具体的にどのような準備をされているのでしょうか。
「私は、旅行で韓国に行った皆さんが効率的にロケ地を巡るための情報を提供したいと思っています。取材時は、私も旅行で来た方が利用できる交通手段を使って、人が多い場所は早めの時間帯に、テンションを上げるために一番行きたい場所を優先して回るなど、ロケ地を回る順番もドラマ好きの旅行者の目線で考えて設計します。あとは、現地でドラマと同じ位置で写真を撮れるように、事前にドラマ映像を見返し、位置関係が分かるカットなどを確認しておく。そして、実際に訪問した際は、お店の方などに撮影で使った席まで詳しく聞き出すのですが、皆さん快く教えてくれます。韓国は、ロケ地をアピールする看板があるほか、『お店がもっと繁盛しますように』と制作陣が敢えてお店に小道具を残していくケースも多いんですよ。書籍では、各ロケ地が登場したシーンの話数と分数も記載しているので、現地で映像と見比べられるのはもちろん、韓国に行かなくてもこの本を読んでいただくと新たな発見があると思います」
――ちなみに、今、韓国ではどんなドラマが人気ですか? 流行などはありますか。
「大きな流れでいうと、Netflixなど動画配信サービスの普及によって幅広いジャンルの作品が生まれている傾向にあります。日本では、恋愛系のドラマやファンタジーなどが依然として根強い人気がありますが、韓国では、今は社会問題を扱ったものなどリアリティーのある作品が人気ですかね。最近では、日本をはじめ海外でも話題となった『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、韓国でも人気がありました。動画配信サービスのオリジナル作品なども含めると、作品の数自体も大幅に増えたので、“みんなが見ている”というような大ヒット作が生まれる頻度は減り、それぞれのジャンルで、特定のターゲットの人に深く刺さる作品が増えている気がします。ちなみに、私が今年見たドラマで一番面白いと思ったのは、『ユミの細胞たち シーズン2』(Amazon Prime Videoで独占配信中)です!」
――「ユミの細胞たち」(シーズン1)、私も大好きです! 例えば、どの作品を見たらいいか分からないという方にお薦めするとしたら、Misaさんが選ぶ作品は?
「私の1冊目の書籍(『韓国ドラマの知りたいこと、ぜんぶ』)で、『愛の不時着』と『梨泰院クラス』のどの部分を面白いと思ったかによって、好きな作品のジャンルを大まかに分類することができる、と書きました。この2作品は、日本の方にとってはストライクゾーンが広い作品なので、まずはこの2作品を見ていただけたらと思います。その後に、『どこが面白かった?』と聞いて、その方が好きなジャンルの作品を次にお薦めしますね。ただ、話数の長さがハードルになっている場合は、『イカゲーム』(’21年)など全10話以下のNetflixオリジナル作品から見るとよいと思います。1作品目から離脱、挫折をしてほしくないので…。韓国ドラマは、化粧品選びが肌質によって合う商品が全然違うように、人によって合う作品が全く違います。なので、いつもお薦め作品を聞かれたら、『過去に気に入った韓国ドラマや映画は?』と質問返しをしてから、お薦め作品を答えるようにしています」
――最後に、僭越ながら…ファンタジーは好きではないですが、ラブはあってもOKで、癒やし要素のある作品が好きな私に、Misaさんがお薦めしてくださるとしたら…?
「ラブは嫌いではないけど、ファンタジーが好きではないということは、現実的な方がいいということですよね? となると、『海街チャチャチャ』(’21年)はいかがですか? ヒューマンドラマにラブが入っている作品がいいのかな、と思ったのですが、もっとヒューマン寄りがお好きできたら、『賢い医師生活』(’20年)がお薦めです」
■Prolife
Misa(みさ)
韓国ソウル在住のK-dramaライター。’04年の韓流ブーム時に韓国ドラマに魅了され、ドラマを字幕なしで観られるまで韓国語を習得。’18年に会社を退職し、渡韓。現在は、ソウルで会社員をしながら、ブログ「One more Korea」で、ドラマの解説をはじめ韓国情報を発信している。ほか、定期的に開催しているHISのオンラインロケ地巡りツアーも人気。著書に、「韓国ドラマの知りたいこと、ぜんぶ」(青春出版社)、「韓ドラTrip! ロケ地巡り完全ガイド VOL.1」(東京ニュース通信社刊)がある。