山下智久さん主演で絶賛放送中のドラマ「正直不動産」。皆さんが、放送後にも“火曜日”を味わえるミニ連載がスタート。まずは第1回です!
その名も、「うさPの正直アフタートーク」。今作のプロデューサーを務める、うさPこと宇佐川隆史Pに、ネタバレありの“正直アフタートーク”を披露していただきます。まずは、その➀。続くその②は、第5回放送後、5/3(火)後11:00に公開予定です!
第1話冒頭、永瀬の上半身裸のシーンは、山下さんだからこそ!
――今さらで恐縮ですが、永瀬財地=山下さんがドンピシャすぎて…、あらためてキャスティングの経緯など教えてください。
「私がプロデューサーとしてこの作品に参加した初日に、『主演はこの人がピンときているんだけど、どう思う?』と制作統括に見せてもらったのが、山下さんの写真でした。もう、電流が走りましたね。すごくピッタリのキャスティングだと思ったので、『何としてでもスケジュールいただきましょう! そのためなら、全身全霊で頑張ります!!』と、気づいたら言っていました(笑)」
――ビビビッときたのですね!?
「海外での撮影に単身挑んでいる山下さんの姿を以前から拝見していて、芸能界という華やかな世界にいながらも目標に向かって地道な努力を続けている、本当に真面目な方だと感じていました。主人公の永瀬も、一見派手ですが、嘘がつけなくなってからはひたすら愚直に進んでいきますよね。その姿が、山下さんの姿とすごくリンクしたのです。『これ以上ない!』と思いました」
――さらに、山下さんが演じる永瀬財地を見て、より確信したという感じでしょうか?
「清水(もう一人のプロデューサー)に言われて思わず膝を打ったのが、『嘘がつけない時の芝居には、役者の山下さんと、パフォーマーとしての山下さんが混在している』ということ。『あの芝居は、山下さんにしかできないんだ!』と、鳥肌が立ちました。実際に撮影現場でも、監督が出した要望に対して山下さんが体を使って表現するという、まるで振付師のようで」
――パフォーマーと言われると納得です! 言いたくないのに本音が出るシーンは、体がいうことを聞いていない状況なので、筋肉痛とか肩が凝ったりしないのかな? なんて思っていました(笑)。
「そうですよね(笑)。まさに、山下さんだからできたお芝居。体を使った部分と、海外でも培ったお芝居の融合だと思います。そもそも原作は漫画なので、動きがあるわけではないですから、一から立ち上げなければいけません。永瀬のあの動きを見るたびに、あらためて山下さんにお願いできてよかった…と(涙)」
――糸で引っ張られたような動きって、誰でもできるものじゃないですよね。
「1話で、本音を言わないようにするためにマスクをつける動きがありましたよね? あれはもう、コレオグラフ。ほかにも、その場から離れたいのに逆に体が向かっていってしまうという動きも、振り付けの領域で、見ていても美しいです」
――その本音シーンに欠かせないのが、何と言っても風です! あの風ってどのように撮影しているのですか?
「ブロワーと言って、枯れ葉などを吹き飛ばすために使う清掃用機械で、一気に風を起こしたりしています。ただ、風が吹くタイミングで笑えるか笑えないかも決まったりするので、難しい…助監督泣かせです。最初の実験の時に、うちわや下敷きなどで風を起こしてみたのですがピンとこなくて、『するならとことん!』となったのはいいものの、ブロワーは強風すぎて顔と髪の毛が荒れるんです。ただ、これが山下さんだとむちゃくちゃ格好よく決まって、スタッフもホッと一安心したという(笑)」
――ドラマのスタート前は、山下さんが様々な番組で今作について話されていましたよね。中でも、第1回の放送当日に生出演した「うたコン」の収録現場で、うさPが歴史的(!?)瞬間を目撃したと聞きました!
「『うたコン』のリハーサルが終わり、山下さんが最終準備に入られるということで、私は別の場所でドラマの反応をチェックしていたのですが、SNSが何だか騒がしい。見ると、山﨑努さん(第1話ゲスト出演)がホームページを立ち上げて、さらにTwitterも開設して、Twitter上で山下さんへのコメントを発信していたのです。一気に鳥肌が立って(この記事2回目の鳥肌!)、歌番組の前で集中されているだろうな…と分かりながらも、思わず山下さんにお伝えしてしまいました」
――こちらまで鳥肌です…。その時の山下さんの反応は、どうでしたか?
「『本当ですか? すぐ確認します!』と。その後、山﨑さんのメッセージを確認した山下さんは、本番前にも関わらず、ご自身で時間をかけてTwitterを開設されたんです。マネジャーさんや、周りの人の力は一切借りずに。恐らくですが、山下さんは『山﨑さんへの返信は、自分で開設したTwitterで、自分の手で送りたい』と思ったのではないのでしょうか」
――まさに、誰も知らない話ですね…。
「当然のことだとご本人は思っているので、山下さんご自身はきっと今後もお話しされないだろうと思います。私も勝手にこの話をしてよかったのかどうか…、でも話さなかったら、きっと誰も知らないまま埋もれていたと思います。誰も見ていないところで、自分の信念を曲げずに真摯に取り組む。これが山下さんなのです。あらためて、永瀬という人物を山下さんに託せてよかったと思いました。Twitter開設直後、ファンの皆さんに向けたメッセージもツイートされて、今現在も、ドラマのことなどをご自身のTwitterで発信してくださる…。ファンの皆さんを大事にされていることは知っていたので、『山﨑さんがその背中を押してくれたのだな』と、気持ちが温かくなりました」
――山﨑努さんと10年ぶりの共演は、我々視聴者にとっても素敵なプレゼントでした!
「山下さんも尊敬されている方ですし、ぜひ出演していただきたいと思い、早い段階でオファーをしようというのは決まりました。『初回に登場する石田努さんって、まさに山﨑さんですよね』という話をしながら。ただ、オファーしたものの受けてくださるか心配はありましたが、快く引き受けてくださいました。山下さんには『智久の作品だから出ることにしたよ』という連絡が山﨑さんからあったそうで、お二人の絆があってこそのご出演だったと思います」
――そんな初回、第1話の冒頭は、山下さんが上半身裸で…。いや、これは本当にありがとうございました!!!
「ははは(笑)。原作の冒頭にもこのシーンがあって、ドラマでも入れることは決まっていたんです。ただ、原作の時間帯は“朝”で、永瀬は“服を着ている”んです。これが根本さんの手に掛かると…『夜、半裸の男が―』と書かれていて、読んだ瞬間に『これだ!』と思いました。根本さんは元々、山下さんが出演するドラマの脚本を書いていたこともあって(『5→9~私に恋したお坊さん~』(’15年、フジテレビ系)など)、山下さんの魅力を十分に分かっていらっしゃるんですね。だから見事に最初のシーンからマッチして…みなさん、魅了されますよね(笑)。PR動画でも、あのシーンを入れようか、第1話の放送までとっておこうか悩みましたが、何度見てもすごいので、結局PRの冒頭でガッツリ使いました(笑)」
――話が飛びますが、第3話(4/19(火)放送)で、永瀬さんと榎本さん(泉里香)が「しょうじきもん」で会うシーンがありましたよね。一瞬映ったビール瓶のラベルが「いいわけ」だったり、そもそもの舞台となる町が「八起町」で「七転び八起きかな?」と思いながら、細部の仕掛けを見つけるのも楽しみです。
「八起町は、“七転び八起き”で、まさにその通りです。『いいわけ』は美術スタッフさんの遊びですが、関連するものを入れながら、『頑張れ正直者!』と永瀬のことも応援しているのです。ほかにもあって、登坂不動産に掛かっているスローガンも少しずつ変わっていきますよ。実は“今月の”スローガンになっているので、気にして見てください! 永瀬に発破をかける意味合いでもあったり…」
――まさか“今月の”だとは気づきませんでした…。ちなみに、同じく第3話では、突風が吹いて毒舌な本音が出るというより、風の吹き方も馴染んできたというか、自然な流れで本音が出ている気がしましたが…?
「まさにその通りです(笑)。風って、向かい風があれば追い風もありますよね。その風を生かすも殺すも自分次第というのが、テーマでもあるのです。風にあらがうよりも、風に乗って自分の素直な気持ちを伝える方がお客さんにとってもいい、ということに永瀬が気づいたのかもしれませんね。彼の成長を風への乗り具合で見せていくのも、実は一つの見どころだったりします」
――相手のためになる本音は大切ですよね。確かに、“いい本音”を言っている回数が、回を重ねるごとに増えているような気がします。
「ちなみに、第1話の最後にあった“いい本音”『1円にもなりませんね(笑)』では、小さな風が吹きましよね。あの音は監督が出したもので、監督のこだわりです」
――口で出した音ですか?
「川村(泰祐)監督が、『ここの風は優しくしたい』と、自らマイクの前でヒューと音を出したという…。加工も入っているかもしれませんが、元は監督の声です(秘)。私はあの音を聞いた時に、これで『風も永瀬を見守っていることが伝わる』と、うれしくなりました」
――この後、第1話をもう一度見てみます! みなさんもぜひ、第1話から振り返って、お芝居とパフォーマンスが融合した山下さんの演技、美術スタッフさんのこだわり、風など、楽しみながら見てください。
そして、次回「うさPの正直アフタートーク②」は、第5回放送直後、5/3(火)後11:00に公開予定です!
■お話しを聞いたのは…
宇佐川隆史(うさがわ・たかし)プロデューサー
’02年、NHK入局。大河ドラマ「龍馬伝」(’10年)からドラマ部へ。演出として、連続テレビ小説「半分、青い。」(’18年)、「“くたばれ”坊ちゃん」(’16年)、「4号警備」(’17年)など。プロデューサーとしては「うつ病九段」(’20年)や「家出娘」(’22年)を担当。現在は、ドラマ10「正直不動産」のプロデューサーを務めている。山下さんと一緒に仕事をすることになり、「うさP」と呼ばれていることを必死に隠そうとしたが、無駄だったそう…。
「正直不動産」放送情報
NHK総合
毎週火曜 後10:00~