道兼とは真逆!? 玉置玲央「出世欲なし」コロナ禍で変わった人生観

2024/02/02 17:05

千年の時を超え、今もなお語り継がれるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部の生涯を描く大河ドラマ『光る君へ』。

幼少期のまひろは目の前で、母親・ちやは(国仲涼子)を理不尽に刺し殺される瞬間を目撃する。犯人は「ミチカネ」だと訴えるも、父親・藤原為時は「急な病で死んだ」と真実を伏せる。

そんな父親に反発心を募らせながら成長したまひろ(吉高由里子)は、ある日、幼いころに出会った「三郎」(柄本佑)と再会し、ひかれ合う。一方で、右大臣・藤原兼家(段田安則)は、子どもたちを使い、出世のためにあらゆる策を巡らせていた。

第4話で、まひろは「三郎」が、実は兼家の息子・藤原道長で、「ミチカネ」が藤原道兼であること、2人が兄弟であることを知り、ショックのあまり倒れてしまった。

早くも一つの山場を迎えた『光る君へ』。

物語のキーマンである藤原道兼を演じる玉置玲央さんに話を聞きました。

道兼について説明する時間が足りなかった

――インタビュー前編で、1話の道兼の言動について、視聴者に「どこまで受け取ってもらえるのか、納得してもらえるのかわからない」とおっしゃっていました。

「そうですね。道兼について説明しようにも時間的に足りなかったので心配でした。道兼の中には父親に認められたい気持ちや、兄弟に対するやっかみや羨望、母親から愛されたいという思いがものすごく蓄積しているんですよね。それから出世欲とか、今でいう承認欲求みたいなものがすごくある」


――初めから「嫌なヤツ」ではなかった?

「そうなんですよ。たぶん、優等生の兄と自由な弟に挟まれて、子どものころからずっと鬱屈した思いを抱えていて。それが溜まりに溜まって突発的に逆上して、あの行動に出てしまったと思うんです」

――1話で道兼のピークを見た気がします。これからどうなってしまうんでしょうか。

「ちやはを殺してしまったのはドラマの創作の部分なんですが、いい流れを作っていただいたなって本当に思います。道兼はこの先、有名な『七日関白』というやっと関白になったと思ったら数日で亡くなるんですね。いろんな人との出会いや兄弟間でのやり取り、親との関係性の中で、道兼が改心するのか、このまま闇へと踏み込んでいくのか。どうやってその『七日関白』に至るのかっていうのを、予想しながら楽しみに見てほしいですね」


――劇中では、いろんな思惑が絡み合っている藤原家かと思いますが、撮影の雰囲気はいかがですか。

「家族が揃うシーンはそんなに多くないんですが、プライベートでも仲良くしていただいている俳優さんが多いので安心感がありました。段田さんは舞台で共演していて、とても尊敬していますし信頼関係もある。道兼を演じる上でそれこそ兼家に対しての尊敬の念とか、この人に認められたいという思いがいい具合に重なって。普段の関係性のまま地続きでお芝居ができて、かつ、それが映像に乗ったような気がしてそこは良かったと思います」

コロナ禍を経て自分にとっての幸せを考えるように

――玉置さんご自身に「出世欲」などはありますか?

「それがないんですね。ありがたいことに今、お仕事をいただけて、作品に参加させていただいたら反響もあって、こうして取材もしていただけて。本当にありがたいところに身を置かせていただいているんですけど、コロナ禍を経て『自分が一番幸せなことって何なんだろう』と考えるようになったら、別の生き方も悪くないなって思うようになりました」


――俳優以外の選択肢ということですか。

「はい。農業をやりたいんです。コロナ禍で辞めていく仲間もたくさんいましたし、俳優業やりながら農業を始める仲間もいたりして。そういう仲間を目の当たりにして、元々、土いじりやDIYが好きなので二拠点生活に憧れはじめました。俳優業で『出世欲』を持ってしまうとそういうことができなくなると思うので、身軽に、長く、俳優をやっていたいです」

――3月には舞台公演も控えていますが、玉置さんの2024年の抱負は?

「『自分の意志を貫く』というのを大切にする一年にしたいなと。40歳も近いのでいろいろと考えなくちゃいけない局面を迎えている気がしていて。自分を持って、自分が正しいと思うことを粛々と続けていこうかなと思っています」

■プロフィール

玉置玲央(たまおき・れお)
1985年3月22日生まれ。東京都出身。劇団「柿喰う客」の中心メンバーとして活躍。最近では映像作品にも活躍の場を広げ、2018年の「教誨師」で第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。主な出演作に、ドラマ10『大奥Season2』(NHK)、『七人の秘書スペシャル』(テレビ朝日)、連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK)など。2024年は舞台PARCO PRODUCE 2024「リア王」の公演が控える。

推しドラマ・エピソードトーク

記憶に残っているのはエンタメっぽくないドラマ

――これまで観たドラマの中で、思い出に残っている作品を教えてください。

「パッと思いつくのは木村拓哉さんの『ギフト』っていうドラマ。あとは『きらきらひかる』とか。色味や題材が暗くて、当時は10代だったと思うんですけど『なんでこんなにエンタメっぽくないことやってるんだろう』って思ったのを覚えています。でも自分の好みはたぶんそっちで(笑)、劇中で使われていた音楽とかも記憶に残っています。ああいうドラマ、今ももっとあっていいのになって思います」

『ギフト』(1997年/フジテレビ)…木村拓哉主演。恋愛ドラマ全盛の中、異色を放った社会派サスペンス。記憶喪失の青年・由紀夫(木村)は「届け屋」として働くが、それには別の目的があった。

『きらきらひかる』(1998年/フジテレビ)…深津絵里主演。新人監察医・ひかる(深津)を主人公にしたサスペンス群像劇。「死」を扱う職業を通して事件の真相を暴いていく。

大河ドラマ『光る君へ』放送情報

NHK総合 日曜 午後8:00~/再放送 翌週土曜 午後1:05~
BS・BSP4K 日曜 午後6:00~
BSP4K 日曜 午後0:15~

撮影/尾崎篤志 取材・文/陰山ひとみ
ヘアメイク/村上知久
スタイリング/長谷川睦子
衣装提供/ジャケット¥70,400(税込)、パンツ¥36,300(税込)/T-JACKET(三喜商事)

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