『リビングの松永さん』みんなが集まるリビングはキッチンから始まった

2024/01/30 10:10

中島健人主演の火ドラ★イレブン『リビングの松永さん』(毎週火曜 後11:00)は、シェアハウスを舞台に、恋に不器用な堅物アラサー男子・松永純(中島)とピュアで一生懸命な女子高生・園田美己(髙橋ひかる)が、時に衝突し、時に助け合うことでお互いを認め合い、成長していくラブコメディー。

同名の人気マンガを原作とし、『恋はつづくよどこまでも』や『俺の可愛いはもうすぐ消費期限⁉』などを手掛けた田辺茂範が脚本を担当。最悪な出会いからの、一つ屋根の下の共同生活、ぶっきらぼうなようで実は優しい松永と、そんな‘松永さん‘にときめいてしまう美己、そして一見チャラいバーテンダーの鈴木健太郎(向井康二)をはじめとした個性豊かな同居人たち…キュンキュン要素がぎっしり詰まった王道ラブストーリーとなっている。

このドラマを支えているのが、登場人物たちが集うシェアハウスの「リビング」。ドラマ制作における、美術セットはどのようにして作られるのか。美術デザイナーの久渡明日香さんに話を聞きました。

『リビングの松永さん』でセットに関わる全てをディレクション

――まず、ドラマ制作の美術スタッフのお仕事とは、どんなものなのでしょうか。

「画面に映るモノを用意する仕事です。美術の中にもいろいろな部署があって、デザイン、大道具、小道具、料理などの消え物など担当が分かれています。今回、私が担当したのは、セットデザイナーで、セットに関わる全てをディレクションしています」


――今回の『リビングの松永さん』のセット制作は、どのように始まったのでしょうか。

「制作前に、監督とイメージのすり合わせなどする場合もあるんですが、今回はマンガ原作なので、原作を読んで私の中でイメージを固めて、絵に描いたものをプレゼンしました。監督にも『こういうイメージ好きです』って言っていただいて、割とすぐに方向性が決まりました」

人がいなくても、生活が見えてくるようなリビングに

――特に、今回のセットで一番最初に思い描いたもの、中心に据えたものは何ですか。

「キッチンです。シェアハウスなので、そこに住んでいる人たちの生活が見えたらいいなと思って、みんなのお皿を全部見せるような、オープンキッチンに決めました。鍋も、調理器具も、コップもお皿も人数分見せて、人がいなくても生活が見えてくるような空間作りをしました」

――確かに、物がたくさん見えることで人の気配を感じます。冷蔵庫にもマグネットがいっぱい貼りついていますね。

「旅好きのオーナーが、いろんな土地でマグネットを買ってきているという、裏設定がありまして。リビングに飾ってある小物も、オーナーが若いころから海外に行っては集めてきた土産やビンテージグッズというテーマになっています。そこは原作にはない設定ですが、リビング作りのベースになっています」

――ゴミ出しや洗濯物のルールも壁に貼られていたり、大きなホワイトボードがあったりするのもシェアハウスならではですね。

「他人同士が共同生活をする空間なので、ルールは大切ですよね。よく見ると、結構、細かく書いてあります(笑)。ホワイトボードも、住人同士の伝言板になっていて、シーンによって内容が変わるんです。内容や文字に、それぞれのキャラクターの個性が出ていて、面白いです」

大きなホワイトボードは原作にも登場している。
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セットから演出の肝になるようなセリフが生まれることも

――『リビングの松永さん』は、マンガ原作ですが、オリジナル脚本の場合は、セットデザインの手法も変わってきますか。

「原作があるものは、自分が読んだ素直なイメージを基本に、イメージを壊し過ぎないようなプランを考えます。原作がない作品は、もう、自由ですね。どっちが難しいのかは、わからないんですけど」


――例えば、自由な中で久渡さんがデザインを制作した作品を教えてください。

「最近だと、お正月に放送したバカリズムさん脚本の『侵入者たちの晩餐』(※)がそうです。あの作品はセットが次の主役、みたいな作品だったんですけど。マンションの部屋でいろいろなことが展開していくんですが、台本があって、セットを考えて、さらにセットのプランに合う台本に直してっていう作業を繰り返しながら制作しました」


――舞台を作っていくような感覚に似ている?

「そうですね。セットから演出の肝になるようなセリフが生まれて、それを俳優さんが面白く言ってくださると『よっしゃ!』って。やりがいを感じます」

※『侵入者たちの晩餐』(2024年/日本テレビ)…バカリズム脚本、菊地凛子主演のサスペンスドラマ。やり手社長の豪邸に侵入する3人の女。彼女たちの目的は、社長が脱税で溜め込んだ金を見つけることだったが…。

年季の入ったソファはみんなの憩いの場

インタビュー後編では、久渡さんが美術セットをデザインで心がけていることや、実際にリビングを見た『リビングの松永さん』出演者たちの反応を聞いていきます。

1月30日放送の『リビングの松永さん』は…

松永(中島健人)に恋をしていると自覚した美己(髙橋ひかる)は、親友のマホ(志田こはく)とりっちゃん(臼井萌音)に相談。りっちゃんの提案で、健太郎(向井康二)と凌(藤原大祐)を含めた、シェアハウスの男子3人との合コンを企画するが、美己は松永たちに話を切り出せず、事態は思わぬ方向へ…。

■プロフィール

久渡明日香(くどう・あすか)
大阪府出身。大阪芸術大学を卒業後、(株)テレビ朝日クリエイトを経て、2020年からフリーランスに。関わった主な作品に『時効警察』シリーズ、『dele』『ハコヅメ』など。

火ドラ★イレブン『リビングの松永さん』放送情報

カンテレ/フジテレビ系
毎週火曜 後11:00~
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写真/カンテレ提供 取材・文/陰山ひとみ

その他

「リビングの松永さん」美術デザイナー久渡さんインタビュー後編サムネイル