向井理インタビュー「時代劇はSF。『もしかしたら?』と楽しんで」

2021/12/26 06:06

大政奉還目前の京を舞台に、敵同士の坂本龍馬と土方歳三が幕末の人物を相手に探索を繰り広げる時代劇「幕末相棒伝」。放送を前に、土方歳三役・向井理さんを直撃!

時は、幕末の京。敵同士の坂本龍馬と土方歳三が、将軍暗殺未遂事件の真相を探るため手を組み、西郷隆盛や桂小五郎、岩倉具視らを相手に探索を繰り広げる「幕末相棒伝」。ときに対立しながらも協力し合って真犯人を追い、やがてお互いに認め合っていく“相棒”を演じた土方歳三役・向井理さんに、物語の見どころや永山さんの印象を伺いました!

ありえないと思われるかもしれないけど、実際にあったことだと思って演じました!

──まずは、コメディー時代劇の名手といわれる土橋章宏さんによる脚本を読んだ印象をお伺いしたいです

「あんまりこの作品はコメディー要素が多くないと思います。時代劇ってわりとテンポがゆったりしていて、意識的にセリフもゆっくり話したり、時代劇ならではの空気感やお芝居の仕方みたいなものがあるんですけど、今回はあんまりそういうことを気にせず、現代劇風に。テンポを意識して、情報を伝えつつも、それだけではなくて感情の部分も伝える。会話劇でもあったので、そのスピード感なども気にしながら演じようと思いました」

──土方歳三といえば、これまで新選組の副長として登場する作品が多かったと思いますが、本作では敵の龍馬とバディを組むことで今までの土方とは違う一面が見られると思います。どう演じようと思いましたか?

「土方については、自分なりに調べてはいたんですけど、歴史って、残っている記録や史実が全てを網羅しているとは限らないですよね。僕は、時代劇というものは全部SFだと思っているんです。だから、よく“こういうことはなかったです”とか言われますが、それを言ったらもう面白い時代劇はできないと思っていて。“これはなかっただろう”って決めつけちゃうと、表現の可能性がどんどん狭まってしまうので、史実とは違ったとしても、『もしかしたらこういうこともあったんじゃないか?』って描けるのが時代劇の面白さだと思っていて。この作品の土方と龍馬がバディを組む設定なんて、絶対にありえないって言われるかもしれないですけど、でも本当に“無かった”とは誰にも証明できないですからね。時代劇のキャラクターを演じる時にいつも考えているのは、『それはしていません』ではなくて『いや、やったかも』というところをちょっと想像するのが好きなんです(笑)」

――史実と史実の間の見えない部分に、もしかしたらあったかもしれないという想像を楽しむ、ということですね!

「史実っていうのは、何年何月何日に何が起こったっていう“点”でしかなくて、当事者たちの感情とか、そこに至るまでの過程の、いわゆる“線”みたいなものがないわけですよ。本当に点と点でしかなくて、それを線で繋いだ時に、一直線ではなくて、ぐにゃって曲がっているかもしれないっていう。例えば徳川幕府みたいな強い政権にとって都合が悪いことは、歴史から抹消されている可能性もあるわけじゃないですか。そこが今回ような時代劇の面白さだなと思っていて。なので今回の設定も、ありえないって言われるかもしれないけど、自分たちとしては実際にあったことだと思いながら演じていました」

瑛太くんとは久しぶりの共演で、腹を割って話せました

──本作の最大の魅力は坂本龍馬×土方歳三の最強バディですよね。この“バディ感”を視聴者の方に楽しんでもらうために、瑛太さんや堀切園(健太郎)監督と話し合って作り上げたものはありますか?

「最初から仲が良いわけではなく、むしろ反発するところから始まっているので、バディ感というのはあえて意識はしなかったんです。だんだんお互いに認め合っていくさまっていうのができればいいかな、と思っていたので。二人仲良く息ぴったりっていうのは、逆にない方が良くて、むしろお互いの思想がまったく違うので、話をしていても全然合わないっていうことの方が今回は多いですし。最初、僕(土方)は龍馬を斬ろうとしていますし(笑)。そんなところから始まって、直接的な言葉ではないけど、最後は認め合うという関係性かなと思っていたので、土方が龍馬のことを認めている表現っていうのは、なるべく出さないように、と。だからあんまり仲良しバディではない感じです」

──瑛太さんとは2度目の共演だと思いますが、あらためて共演されていかがでしたか?

「すごく面白かったです。普段の瑛太くんは静かだし、龍馬とは全然違うタイプですけど(笑)。以前共演した時から、また久しぶりに会って、その間に家庭の環境やいろんな考え方が変わっていて。お互いが変化してきた中でまたもう一度会うとすごく新鮮でしたし、本当にいろんなことを考えながらやっているんだな、って思いました。もちろん会っていない間にテレビで拝見することはありましたけど、実際に会うと瑛太くんの素の部分みたいなところとか、本当に考えていることも分かりますし。わりと腹を割って話しましたね。同世代の彼がいろんなことに挑戦しているんだなって思うと、すごく刺激になりました」


──本作の撮影中には、SNSでのお二人の姿も話題になりましたよね。

「僕はSNSをやっていないので分からないんですけど、瑛太くんが一人でカシャカシャ撮っていたから、『何やってるのかな?』って遠目で見ていたんですけど(笑)。一緒に撮ろうっていう話になったので『どうせ撮るなら面白い方がいいね』って、二人で構図を考えながら撮りました。時代劇を撮っている後ろにあえて車を映り込ませてみたり。楽しんでやっていました」

──最後に、2022年に向けてトライしたいことや抱負があれば教えてください。

「抱負は毎年一緒なんですけど、とにかく健康に過ごすことですね。体調を崩したりケガをしてしまうと作品に穴を開けてしまいますし。舞台でも映像作品でも、本番に向けて準備をしっかりするということ、あとは単純に体調管理ですね。こういう仕事をしている以上は、見た目もそうですけど、食生活もきちんと考えていかないと、と思います。毎年同じですが健康第一で(笑)」




■Profile
向井理(むかい・おさむ)

1982年2月7日生まれ。神奈川県出身。2006年芸能界デビュー。2010年連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」でヒロインの夫を演じて人気に。以降、数々の作品に出演。近年の主な出演ドラマは、大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK)、「着飾る恋には理由があって」(TBS系)。1月8日から「婚活探偵」(BSテレ東)がスタート予定。

正月時代劇「幕末相棒伝」放送情報

NHK総合
2022年1月3日(月)後9:00~

  
撮影/尾崎篤志