デビュー作で、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した染井為人の同名小説を原作にした「連続ドラマW 正体」。本作で死刑囚を演じる亀梨和也さんにインタビュー。
殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑宣告を受けた鏑木慶一を演じる亀梨さん。死刑囚である上に、脱獄し、名前や容姿を変えながら潜伏を続け、あろうことか、行く先々で出会う人々を窮地から救っていくのです。その人格は、殺人犯と似ても似つかず、助けられた人々は「鏑木慶一は本当に殺人犯なのか?」と口を揃えますが、果たして真相は!?
苦境にもめげずに貫く強さ、鏑木慶一の人柄を大事にしたい
――まず、衝撃のシーンから物語が始まりますが、台本を読まれた時の感想、こみ上げた思いなどをお聞かせいただけますか?
「最初に原作を読み、『すごく壮大なお話だな』と思いました。例えば、『雪山のシーンはどのように描くんだろう?』とか。僕が演じさせてもらう、という視点で原作を読んでいたからなのですが、『こんなにうまくいかないことってある?』という切なさというか…。でも同時に、『実際にこういうことって、あるよね』とも感じました。こういった苦しい状況でもめげずに、決めた覚悟を貫く強さや、鏑木慶一という彼の人柄は大事にしたいな、と。結末に向けて物事を成立させようと考えたり、僕の我が強く浮き出てしまったら、鏑木のキャラクターの良さが半減してしまうという思いがあったので、器用にしていい部分としない方がいい部分、そのバランスは意識しました。どう作り上げていくか、という思いでしたね。非常に優れた原作、脚本の中で役をいただいたので、僕自身にとっては、どういう新しいアプローチで挑むか、という挑戦でもあったのです。撮影を終えた今だから話せますが、撮影前のゼロ地点の時は『エンターテインメントに特化した方がいいのかな?』と思ったことも…。でもそれでは違うかな、という考えの下で色んなものをそぎ落としていき、今回の形になりました」
――つまり、みなさんと“どう作り上げていくか?”ということですね?
「本当に、スタッフさん、キャスト、この作品に関わる全ての人で作り上げました。前回、映画でご一緒した時に中田監督が、一つのチームとして僕を迎え入れてくださったので、今回も信頼して、初日から細かい部分まで意見交換をしていきましたね。毎回の撮影現場でも、スタッフさんと常に意見を交わしながら、柔軟に対応できたと思います。ベースをしっかりと共有していたので、撮影しながら、その時々で作り上げていった感覚に近いかもしれません。そういったチームの雰囲気を感じたので、『キャラクターや物語の設定はあるけど、流れに沿って演じていけば大丈夫』と、言葉にできない確信がありました」
――意見交換をされたというお話ですが、具体的なエピソードを教えていただけますか?
「僕が主導権を握っていたということではなく、みなさんとの会話の中で言い合う感じでコミュニケーションを取っていました。絵として見えている部分は、一つ一つ、全て話し合いましたね。今回、ビジュアルとして見えるのは、大きく分けて4つある鏑木のキャラクター。監督から、特殊メイクで一重のキャラクターを一つ作りたいという話があり、ほかのキャラクターはどうしようかな、という感じでした。例えば、ヘアスタイルを金髪にして“那須隆士”を名乗るキャラクターでは、衣装合わせの機会を2回設けてもらったり…。というのは、最初は、金髪でヒゲを生やして、色付きのサングラスをかけているという設定だったのですが、僕の中で、”那須”のビジュアルに、説得力を持たせたかったのです。というのも、貫地谷しほりさん演じる沙耶香と出会った那須が、初対面で彼女から、『私の家に来ない?』と言われるんですよ。つまり、パッと見て、キュンとして、『家に来ない?』と相手に言わせられるようなビジュアルでなければいけない。そう思ったので、再度衣装合わせをお願いして、8割ほど変更してもらいました。当初はカツラを提案していただいたのですが、『金髪のカツラは、一番難しいな』と、僕が思って…」
――難しいというのは、どういう部分ですか?
「男女の物語の中で、金髪のカツラでどこまでリアリティーを出せるのか、というところです。なので、そこはもう、大人のみなさんにお願いをして…。大人って、僕も十分大人ですよね(汗)。そうですね、カツラではなく地毛で金髪にすることになり、5時間ほどかけて染めてもらいました。あれほどまでの金髪に染めたこと人生初めてぐらいだったので『わぁ、金髪―!!』って、新鮮でしたね」
――”那須隆士”に名前を変えた鏑木の金髪が、なぜか誠実そうに見えて、不思議でした…。
「本来の鏑木は、金髪にできないタイプの人間だと思います。僕の想像ですけど、いきなり『元気―??』というテンションが高めの人間となって逃走をしたとすれば、それはWOWOWの“連続ドラマW”ではないかもしれません(笑)。おそらく、金髪にするのが彼の中でできる精一杯なのかな、と。あくまでも、容姿や服装を変えるだけであって、極端に七変化することを伝えたいわけではないのです。あとは目線でいうと、普通は目を見て話すところも、あまり目を見ないで話す。そして、その行動が自然に見えるように、と意識しました。特に、貫地谷さん演じる沙耶香と那須のシーンでは、目線について細かく考えながら演じていましたね。とは言っても、どうしてもいわゆる“普通”のお芝居になってしまいがちなのです。だからと言って、脱獄犯であることを出し過ぎるのも違う。中田監督、谷口監督とも、『取捨選択が難しいよね、鏑木が脱獄するだけのドラマじゃないから』と、ずっと話していました」
――ありがとうございました。鏑木を、生きている人間として、どう見せていくか…。名前は変えるけど、人格は変わらないという繊細な部分に対する亀梨さんの思いを知ることができました。続く【後編】では、そんな鏑木の人間性や、彼を取り巻く人物について、お話しを聞いていきます!
■Prolife
亀梨和也(かめなし・かずや)
1986年2月23日、東京都出身。’98年にジャニーズ事務所に入所し、翌年、「3年B組金八先生 第5シリーズ 」でドラマ初出演を果たす。’05年のドラマ「ごくせん」第2シリーズでの出演でさらに知名度を上げ、翌年の3月にKAT-TUNとしてCDデビュー。以降は、音楽活動、映画やドラマ、番組MCのほか、CMやラジオパーソナリティーなど多彩な才能を生かし、活躍の場を広げている。
「連続ドラマW 正体」放送情報
WOWOWプライム
3/12(土)スタート 毎週土曜 後10:00~
※第1回無料放送
※リピート、WOWOWオンデマンドで全話アーカイブ配信あり
Hair&Make/豊福浩一(Good) Styling/佐藤美保子