「孤独のグルメ」が結ぶ縁。斉藤暁さんが新丸子・三ちゃん食堂を訪問!

2025/03/18 17:05

東京都と神奈川県に路線網を持つ東急線沿線各地のさまざまなつながりをまとめ、新たな街の魅力発掘をサポートするサイト「縁線図鑑」。



ドラマをきっかけにした沿線との「ご縁」を紹介するTVガイドみんなドラマ版「縁線図鑑」では、現在のグルメドラマブームを生み出した超人気シリーズ「孤独のグルメ」のSeason2、第1話で登場した「三ちゃん食堂」を紹介。店主役を演じた俳優・斉藤暁さんが、久しぶりとなる東急東横線・東急目黒線の新丸子に降り立った。

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おしゃれな帽子とすてきなカバンで新丸子に現れた斉藤さん!

「それにしても、すごい情報量だ。ここから選ぶのは大仕事だぞ…」。松重豊さん演じる、あの井之頭五郎をも唸らせた新丸子の名物大衆食堂。「孤独のグルメ Season2」第1話の舞台となった「三ちゃん食堂」は、2012年10月10日の放送から13年を過ぎた今でも、当時と変わらない豊富なメニュー(なんと140種類!)が揃い、地元を中心としたお客さんの胃袋を満たしている。

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東急東横線・東急目黒線の新丸子駅を西口に出て、徒歩1分。東急東横線・東急目黒線の武蔵小杉駅北口からは7分ほど。「大衆食堂 三ちゃん」と書かれた暖簾が見えてくる。 「懐かしいね~。早く入りたい」と、再訪の喜びを隠しきれない様子でソワソワとするのは、「孤独のグルメ」で「三ちゃん食堂」のご主人(劇中ではマスター)・中山知久さんを演じた俳優の斉藤暁さんだ。

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歩くこと3分。すぐに現れる、この街ではおなじみの暖簾

実は、数年前にも息子さんとプライベートで店を訪れたという斉藤さん。ドラマ出演をきっかけに育まれた中山さんとのご縁や撮影裏話、料理人と俳優――それぞれ違う道を歩みながら、どこか共通するお二人に話を聞いた。

13年前の撮影当時と変わらぬ店内。2026年でお店は60周年!

――久しぶりの再会となる、マスターこと中山さんと、中山さんを演じられた斉藤さんです。

中山「どう?(斉藤さんと並んで)二人、そっくりだよね?」

斉藤「撮影の時も、このお店を知っている人に似ているって言われたな~(笑)。でも少し太ったんじゃない?」

中山「腰、やっちゃってさ~。それ以来、運動不足になっちゃって」

斉藤「それならね、いい運動がありますよ。ゆっくりスクワットするの(と、しばらくストレッチの実演を…)」

中山「腰痛もあるんだけど、75(歳)になったから、そもそもがしんどいんだよな~」

斉藤「僕は71歳。まだまだ一緒にがんばんなきゃ」

中山「まあ、死ぬまで厨房には立つけどね」

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挨拶するなり談笑するお二人。たしかに醸し出す雰囲気が似ている

――「孤独のグルメ Season2」の撮影から13年ほど経ちましたが、店内の様子はいかがですか?

斉藤「変わらないね。(店内を見渡して)壁に大きな液晶テレビが付いたくらいで、ほかは一緒。あ、入口のガラス戸が変わったかな?」

中山「みんな酔っぱらっているから、前の(手動の)扉だと開けっ放しになるんですよ。で、自動ドアだと電気代だ、故障した時にどうするんだとなるから、これにしたの。病院で使われている、自然にドアが閉まるヤツ。ほかはまるっきし、一緒ですよ」

斉藤「何年経っても、何十年経っても変わらないで迎え入れてくれる。今日も全く、久しぶりな気がしない。そこが、こういう地元で長く愛されるお店のいいところですよね」

中山「2016年の12月に50周年を迎えて、来年で創業60周年になります」

斉藤「60年! すごい歴史だね。『三ちゃん食堂』って名前はどうして?」

中山「創業したてのころは、餃子とラーメンを中心に出していたから『中華食堂』と名乗っていたんだけど。“三ちゃん”っていうのは、先代の親父さんのあだ名でね。本名は中山三之助といって、終戦後にロシアから戻ってきて、裸一貫ここで八百屋を始めて。それを16年間やって、昭和42(1967)年に食堂にしたんだ。高度成長期だったから、近くの大学に通う学生や若いサラリーマンに『腹いっぱい食べてもらいたい』ってことで」

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斉藤「それで“三ちゃん”が店名に?」

中山「そう。昔は親父さんのお父さんが近くで畑をやっていて、そこでネギを作っていてね。ドラマで井之頭五郎が食べたネギ肉イタメは、当時の名残。今は野菜の値段が高くなっちゃったけど、当時は売るほどあったから(笑)。あとドラマ本編が終わった後のコーナー(「ふらっとQUSUMI」というコーナー)で、なぎら健壱さんが好きだって言ってた焼肉ライスも当時からあるメニュー。それで創業から10年後くらいに彼女(取材を見守る奥さまの初枝さん)と結婚して婿になって。親父さんが病気で入院してからは、俺が店を切り盛りするように。本格的に店を継いで30年くらいになるかな」

――30年ほど前というと、斉藤さんが1997年にスタートした「踊る大走査線」で秋山晴海副署長を演じ、北村総一郎さん、小野武彦さんとともに“スリーアミーゴス”としてブレークされたころですね。

斉藤「ブレークって言っていいか分からないけど、広く顔を知っていただけるようにはなりました。ようやく一人前になれた気がしました」

中山「俺も40年くらい前から自分のメニューを作り始めて、やっと親父さんから認めてもらえて。ちょうど30年くらい前に社長になって。やっと正式に二代目になれた気がするね」

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料理はすべてこの店で覚えたという中山さんの鍋さばき

どこか似た境遇の二人。斉藤さんは演じるべくして中山さんを演じた?

斉藤さんは福島県郡山市のご出身。ご実家が電気店を営まれていて、学生時代は地元の工業高校の電気科に進学。兄とともに家業を継ぐものの、次第に自分には向いていないことに気づき、地元テレビ局で照明や大道具の仕事に。

やがて福島の劇団での活動を始め、試しに受けた劇団「自由劇場」の試験に合格したことから創立メンバーとして上京。紆余曲折ありながらも、俳優として着実にステップアップを果たした。

――最初は家業を継ぐつもりで。

斉藤「高校に入って、すぐに“ああ、進路を間違ったな、合わないな~”と思いました(笑)。で、何かクリエィティブな仕事をしたいとは思っていたから、地元の友達の紹介でテレビ局に入って、4年ほど勤めました。話すと長くなるけど、小さいころからチャンバラ映画が大好きだったから劇団に入って。23歳で上京して、俳優をやることになりました」

中山「俺も、もともとは建築の専門学校に通う学生で。自分がラーメン屋をやっているイメージなんて全然なかったけど、なっちゃったよね(笑)」

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懐かしそうに店内を眺め、撮影当時の思い出や息子さんと訪れた時の話をしてくれた斉藤さん

斉藤「奥さまと出会ったことがきっかけで?」

中山「そう。彼女と出会って、土日とか休みの日に店を手伝うようになって。いずれ結婚するだろうな…って思ってからは、建築の資格を取るのはやめて、こっち(三ちゃん食堂)に専念した。不思議と未練はなかったね」

斉藤「それまで料理の経験は?」

中山「料理どころか包丁も握ったことがない、ゼロからのスタートだったけど、親父さんの見様見真似で覚えて。“お前にはできないだろう”って思われているのが悔しくてさ。右も左も分からないから逆に夢中になれたっていうのはある。要は、ただの負けず嫌いなんだけど(笑)」

斉藤「僕も福島の訛りに苦労したけど、何とか踏ん張ってここまでやって来られた。年齢も近いし、境遇もどこか似ているところがあったんですね、二人は」

中山「今は少し太っちゃったけど、体形も似ているしね(笑)」

斉藤「なんだか演じるべくして回ってきた(中山さん)役だったんだな~と思いますよ。こういうのも“ご縁”ですよね」

「孤独のグルメ」を見て来店したお客さんは、頼むメニューで分かる(笑)

そんな「どこか似ている」お二人。今回の再訪で、さらにご縁が深まったわけだが、ここで気になる撮影の思い出を聞いてみよう。

――「三ちゃん食堂」は12時のオープンから20時まで通しで営業(土日祝日は18時まで)。「孤独のグルメ」では、昼間から飲んでいるお客さんの多さに五郎さんが圧倒されるシーンが描かれました。

中山「今日も開店から、ほぼ満席。ありがたいですよ。前は21時までやっていたんだけど、コロナ禍の時期があったり、自分たちが年を取ったりで終わりを1時間早めて。そうしたらお客さんが前倒しで来るようになって、昼飲みの大衆酒場みたいになってきちゃった(笑)」

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75歳になるとは思えない元気の中山さん

――劇中のマスターは、自分が飲みに行きたいからその時間で店を閉めると。

中山「毎日、必ず行きつけのスナックに行くからね(笑)。あとは今時、せがれとか孫の予定があるじゃない? 運動会とか。そういう理由もあって、その時間に閉めるようにしているの」

斉藤「昔は忙しくて、どこにも行けなかったでしょ?」

中山「俺が結婚したてのころは旅行にも行けなかったからさ。今はたまーに定休日以外でも休んで、どっか行くこともあるよね」

斉藤「いいですね~、家族孝行だ」

――「孤独のグルメ」で紹介されて以降、お客さんは増えましたか?

中山「そりゃあ、増えましたよ~。今、映画(『劇場版 孤独のグルメ』)をやっているでしょ? 韓国が舞台の。向こうでも大人気みたいで、わざわざ来てくれてね。韓国ではグループで食卓を囲むから、一人で食べている井之頭五郎に憧れるんだって」

斉藤「へえ~、海外からも。そりゃすごいね」

中山「日本はもちろん、韓国、台湾、いろんな国からやって来て。土日は開店前から外に60~70人くらい並びますよ。ずっと来てくれているお客さんは『急にどうしちゃったんだ、この店は!?』って驚いていました(笑)」

――五郎さんは、先のネギ肉イタメとみょうがの天ぷら、チーズ入りウインナー、海鮮春巻き(えび・いか・たこ・カニ入り)にライスとみそ汁を付けて注文。訪れるファンもこのメニューを頼みますか?

中山「それをセットで頼むからすぐ分かりますよ。だから、この4品はやめられない。せっかく来てくれたのに悪いからね」

井之頭五郎が注文したメニュー

斉藤「五郎さんの座った席も人気なんじゃないですか?」

中山「平日は予約できるから『この席で』って指定する人もいますね。ほか一番の人気は、入って右側のベンチ席。うちは全部が丸椅子で、壁際だけ背もたれがあるから、すぐに埋まっちゃう」

――斉藤さんは、その後「三ちゃん食堂」には?

斉藤「実は、何年か前にも息子と来たんですよ。(撮影時)僕の出番が終わって、お店の人に挨拶する時に『こんなお店が近くにあったら、しょっちゅう来ますよ』って言ったから、いつか行ってみようと思っていて。その時も大賑わいだったな」

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店内には、以前斉藤さんが訪れた時のサイン色紙も

――ワイワイ賑やかだけど、決してうるさくない。そこがいいですよね。

斉藤「とにかく活気がある。昭和にタイムスリップしたみたい。だから撮影の時はエキストラの方を大勢呼んで満席にしてね。『三ちゃん食堂』の雰囲気がよく出ていた。スタッフさんは苦労したと思いますけど」

中山「60席以上あるからね。(撮影時は)バタバタして大変だったな。それだからか分からないけど、『孤独のグルメ』の映画のポスターを、スタッフの人がわざわざ持って来てくれてさ。チケットもくれて。放送して13年も経つのに、しっかりしているな~と思ったよ。こういうところも人気の秘密なんだろうね」

撮影はエキストラが約60人! 料理を用意する厨房もてんやわんやに…

ドラマ撮影の当日は、普段の賑わいを再現するべく予算を度外視で60人以上のエキストラを配置。通常のドラマでは専門のスタッフが料理を作ることが多いなか、「孤独のグルメ」ではすべてお店の方に作っていただくのが流儀だと聞く。

また五郎さん役の松重さんは、テストの時は食べる真似をするだけで、実質は本番一発勝負。お店側の協力もドラマ作りには不可欠だ。それもあって、ポスター持参でお礼に訪れたのかもしれない。

ドラマで描かれた店内。この人数分の料理を中山さんたちが用意!

――撮影では中山さんがお料理を作られたのですか?

中山「うちのスタッフと手分けして作りました。60人前だから厨房もてんやわんや(笑)。五郎さんには、ちょうどいいタイミングを見計らって出しました。やっぱり熱いうちに食べてほしいからね」

斉藤「『孤独のグルメ』に出てくるご飯は、いつもアツアツ。夜中に見ていると、食べたくなっちゃうんだよね~」

――劇中に出てくる他のお客さんの動向や言動は、監督と脚本家が店の下見をした際に出会った人をシナリオ化しているとのこと。

中山「ドラマに出てきた必ずカレーを2つ頼むお客さんも、実際の常連さん」

斉藤「えっ、そうなの!?」

中山「今も来ますよ。カツカレー普通盛りを2つずつ頼みます」

斉藤「こんなにメニューがあって、お酒もあって…って思うけど、よっぽどここの味が好きなんだろうね」

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にこやかに話すお二人。店は営業中で、隣の列では一般のお客さんたちが楽しそうにわいわい

――劇中のマスターが常連さんに言う「30代、40代はまだパシリなんだ。一人前は50(歳)になってから」というセリフは中山さんのモットーなんですか?

中山「それは基本ですよ。30、40はハナタレ小僧。あれから13年経っているから、今はなんなら一人前は60過ぎてからじゃない?(笑)」

斉藤「(笑)、ずうっと先輩でいたいんだ?」

中山「ドラマみたいに(若い常連客に)タバコを買って来させたりはしないよ? でも飲み仲間の40代、50代には頼むよね(笑)」

斉藤「『踊る大捜査線』が始まったころ、スリーアミーゴスの北村さんが62歳、小野さんが55歳くらい。僕が44歳だったかな? 一番年下だから、いつも走っていました(笑)」

斉藤さん演じるマスターが煙草を買いに行かせる場面

再開発があったりして街は変わっても、隣り同士が仲良くなる雰囲気は守りたい

「昔の、ここ(二人)の4歳差は全然、違うんだから。だって高校2年と中学1年だよ?」と中山さんが言えば、「もういい年だよ? そんなに変わんないって~」と斉藤さん。いつの間にか、ベテランの常連客のように他愛もない話で盛り上がる。これも、きっと「三ちゃん食堂」の雰囲気と、ご縁の賜物だろう。

ふと見れば、長机と丸椅子が並び、知らない客同士の距離も近い店内では、昔ながらの下町・新丸子と再開発によって変化し続ける街・武蔵小杉の住人たちが、老いも若きも相席で昼飲みを楽しんでいた。

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厨房横のカウンターには長年の常連さんらしき方が

斉藤「ドラマでも五郎さんが、おぼん・こぼんさん演じる常連さんに話しかけられていたけど、すぐ友達になれそうな、この距離感が絶妙なんだよね。実際(取材当日)あそこに座っているお客さんたちも、普段なら絶対に知り合わなそうな組み合わせじゃない?」

中山「隣が近いからイヤがる人もいるかもしれないけど、“これがいい”って人も大勢来てくれるからね。変える気はないです」

斉藤「客側の勝手な意見だけど、変わらないでほしいな~。お年寄りは若い人としゃべって元気になるし、若い人は大人たちと接するから社会勉強にもなる」

中山「武蔵小杉の再開発があったり、時代によって街は変わっていくけど、うちはずっと変わらず。お客さん同士がいつの間にか仲よくなっているような、アットホームな雰囲気を守っていきたいよね」

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五郎さんも歩いた新丸子の目抜き通り・医大モール。劇中に登場した懐かしの和菓子店「昭和堂」は残念ながら閉店し、その場所は今はラーメン店に

――五郎さんが驚いたメニューも約140種類と、当時と変わらず揃っています。

中山「常連さんからの要望を聞いているうちに、こうなりました(笑)」

斉藤「すごい数だよね。しかも、どれも旨いし、すぐに出てくる。壁の額に(ポスターが)貼ってある八海山をはじめ、僕が大好きな日本酒も品揃えが多いから、前に来た時もついつい飲み過ぎちゃった(笑)」

――厨房とフロアとの間に貼ってある白い札のメニューは80種類以上、その下には黄色い短冊に約30種類。壁やホワイトボードにもびっしりと。

中山「白い札のほとんどが先代からあったメニューで、短冊は季節や仕入れなんかで変わります」

斉藤「どの料理もすごくリーズナブルだけど、お値段も13年前と同じ?」

中山「ほとんど変わらない。さすがに物価高騰で、この3月からは一品100円くらい値上げさせてもらうけど、何とかがんばりたいよね」

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黄色い短冊が後から増えたメニュー

斉藤「支店を出す気はないの?」

中山「ないね。やっぱり職人は、全部に目が行き届かなきゃダメなのよ。フランチャイズとして大きくなればシステムができるんだろうけど、そんな気もさらさらないしね。今は、せがれが厨房を、娘がホールをやってくれているから今後は若いヤツに任せるけど、店を広げていくとかはない」

斉藤「息子さんが継いでくれるんなら、常連さんも安心だ」

中山「せがれはね、調理師学校に行って日本料理を習って、首席で出てさ。卒業後は丸の内の店に入って修業したから、包丁さばきから何から一流なんだよ」

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開店から満席が続き、厨房は大忙し!

斉藤「じゃあ、これからの『三ちゃん食堂』も楽しみだな~」

中山「さっきの先輩後輩の話じゃないけど、うちの厨房ではちゃんと『郷に入っては郷に従え』でやっているからね。この店のやり方に物言いをつけるようなことはしないね」

斉藤「来てすぐ挨拶させてもらったけど、頼もしいね」

中山「ちょっと油断すると出汁の取り方が違っていたり、ラーメンの醤油が変わっていたりはするんだけどさ(笑)、それはそれで好きにすればいいと思ってる。俺も黄色い短冊のメニューを自分なりに考えて作ったりしていたから」

――最後に、これから「三ちゃん食堂」を訪れる読者にオススメを紹介してください。

中山「どれも手抜きをしていないから全部、だね」

――ですよね~。では、60年の歴史を感じさせる、変わらない定番メニューは何ですか?

中山「さっき言ったネギ肉イタメでしょ。あれは60年出しているから。で、焼き肉とか野菜イタメ、もやしイタメ。中華が始まりっていうこともあって、炒飯も人気。あと、うちはいいクジラも手に入るから、刺身も旨いよ~。背肉だから筋がない。みんな赤身。これは、ぜひ食べてみて」

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創業当時からの人気メニュー・ネギ肉イタメ

――常連さんが食べるというカレーのご飯抜き、というメニューは?

中山「コロッケカレーの“あたま”ね。もともと食が細い常連のお客さんが頼んだことがきっかけなんだけど」

斉藤「カレーの染みたコロッケをつまみにして?」

中山「そう。追加でハムカツとか。たまに、いつもとは違うエビフライを頼んでいると“お、今日はなんかいいことあったのかな?”って思っちゃう(笑)」

斉藤「ほかにも常連さんならではのメニューはあるの?」

中山「これも、食が細いお客さん始まりなんだけど、焼きそばの野菜抜きっていうのも人気。お酒が好きな人は、パリパリに焼いたそばをつまみに飲んでる。初めて来た人も、遠慮せずやってみてほしいね」

斉藤「そういうのも歴史だよね。何ごともそうだけど、長く続ける。これが一番、大事。今日は元気出ました。どうもごちそうさま!」

中山「このへんに来たら、また寄って。お互いがんばろう!」



来年2026年12月10日で創業60周年。「袖すり合うも他生の縁」とはよく言ったもので、今日も「三ちゃん食堂」の暖簾をくぐると、誰もが笑顔で、昔からの知り合いだったかのように会話している。

五郎さんは劇中で「自由に、思うままに。この店、中華の店なのに、ノリはラテン系だ」と評したが、まさに。年齢も性別も仕事も関係なく楽しめる「昼から飲める」新丸子の大衆食堂。一度のぞいてみてはいかがだろうか。

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最後はお店の皆さんと斉藤さんでにっこり



■Profile

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今回も訪問の記念に色紙へサイン

斉藤暁(さいとう・さとる)
1953年10月28日生まれ。福島県出身。オンシアター自由劇場を経て、東京壱組創立メンバーとして活躍。’97年にフジテレビ「踊る大捜査線」湾岸署の秋山副署長役で共演者らとスリーアミーゴスを名乗り人気者に。「科捜研の女」(’99年/テレビ朝日)シーズン1に物理担当・榎戸輝男役で登場、シーズン5から日野和正役で科捜研メンバーとして出演中(シーズン11で所長に昇格)。


■店舗情報

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三ちゃん食堂
住所: 神奈川県川崎市中原区新丸子町733
TEL: 044-722-2863
営業時間: 12:00~20:30 ラストオーダー19:30
     (土日は~18:00 ラストオーダー17:00)
定休日: 水曜日

店舗情報は2025年3月の取材時点のものとなります。

アクセス

「孤独のグルメ」シリーズ

2012年よりテレビ東京系列で放送されている人気グルメドラマシリーズ。営業のため訪れた街々で、腹が減っては飲食店を探し、一人飯に舌鼓を打つ井之頭五郎(松重豊)の姿を描く。これまで10シーズンの連続ドラマと、特別編、スペシャルドラマが放送。2025年1月、松重豊の監督・脚本・主演による映画「劇映画 孤独のグルメ」が公開された。

孤独のグルメ最新作 「それぞれの孤独のグルメ」 Blu-ray&DVD BOXが4月23日(水)発売
©️2024久住昌之・谷口ジロー・fusosha/テレビ東京

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撮影/武重到 取材・文/橋本達典