友達同士で、身近にあった出来事を報告し合う。うれしいこと、悲しいこと、ムカついたこと、翌日には忘れているようなくだらないことでも、内容は何だって良い。話せる人がいて、本音を言い合って、一緒に笑い合える人がいる。気の置けない仲間との‟ガールズトーク”はいつだって私たちの味方だ。
そんなドラマがテレ東で始まった。その名も、「ブラックガールズトーク」。
原作は、小学館のコミックアプリ・マンガワンで人気連載中のマキノマキによる同名作品。朝日奈央、関水渚、石井杏奈のトリプル主演の3人が、ほんの少し‟ブラック”を交えた‟ガールズトーク”で身の回りにいるお騒がせ人物たちを斬っていく。深いテーマも、難解なトリックも、事件性も一切ないところが見ていて心地よく、ちょっと疲れた心にちょうどいい。
このドラマを「友達のようなドラマになれば」と紹介する、テレ東・祖父江里奈プロデューサーに話を聞きました。
「友達にいたら楽しいな」というキャスティング
――「ブラックガールズトーク」放送開始後の反響はいかがですか。
「SNSで思いのほかたくさんの好意的な感想が見られ、本当によかったと安心しました。意外だったのはテレ東社内の年配の男性社員の何人かから『面白かった』という感想を言われたこと。ガールズトークの話なんですけどね(笑)。月曜の夜に『一週間始まっちゃったよ』って気が重い人が、寝る前に見たらちょっと笑えて、気が楽になるようなドラマにしたかったのでうれしいです」
――トリプル主演の3人もハマり役ですね。
「一番のターゲットが女性なので、女性視聴者が親しみを持ってくれるキャスティングを考えました。その結果、朝日さん、関水さん、石井さんの『友達にいたら楽しいな、おしゃべりしたいな』って思ってもらえるようなキャストが揃いました。女三人集まれば姦しい(かしましい)とはよく言ったもので(笑)、撮影もめちゃくちゃ盛り上がっています。まさにガールズトークというか。カメラが回っていなくても、ずっとしゃべっているんですよ。その空気のまま撮影しているので、もしかしたら原作のイメージよりもにぎやかに見えるかもしれません」
――メインビジュアルも、3人の楽しそうなおしゃべりが聞こえてきそうです。
「原作マンガのカバービジュアルをオマージュしていますが、吹き出しのセリフはドラマで実際に使われるセリフになっています。ドラマ本編のクランクイン前に撮影したんですが、その段階から3人はとても仲が良さそうでした」
――原作者のマキノマキさんが、マンガワンで、ドラマ化が決定するまでの様子を描いていたり、Xで感想をポストしていたりと、ドラマを楽しみにされている様子がうかがえました。
「マンガも読んでいただけるとわかると思いますが、原作を実写化するにあたっては結構なプロセスを踏むんですよ。作品にもよりますが、『ブラックガールズトーク』の場合、企画書は1年前にはあって、さらに、ドラマとして成立させるためには、どうしても改変しなきゃいけない部分も出てくるので、マキノ先生や担当編集の方と密にやり取りさせていただきながら制作しています」
濃すぎるキャラが次々と登場
――見どころはどんなところでしょうか。
「1回で2つのエピソードを放送するので、すごくテンポ良く、何にも考えずに見られるところ。あとは、毎話のゲストのキャラが濃いところでしょうか(笑)。‟とんでもキャラ”というか、‟困ったさん”を毎回、毎回、次々と繰り出してくる作品なので『こんな人いる?』って思うときもあれば『あー、いるわ』って納得してしまったり。エンタメなので当然、多少誇張されていますが、身近な人の顔が思い浮かぶこともあると思います」
――エンディングでは、‟困ったさん”たちのその後も描かれていて、思わず笑ってしまいます。
「ONE N’ ONLY の爽やかなエンディング曲とともに、毎話ゲストのその後のエピソードを描いています。だいたい何かしらの天罰を下された後の話ですが、ヤバい人たちではあってもどこか愛せるような、可愛らしい一面を描いているので、ぜひそこまで見てほしいです」
――祖父江さんご自身が「いる、いる!」って思うキャラは出てきますか?
「2話に登場したパワハラ上司・榊原(猫背椿)さんです。すごく高圧的で嫌な人なんだけど、ふと私が作った資料をほめてくれたりして。ときどき優しくて、それがうれしかったりする。具体的に誰とは言わないですけど(笑)、『悪い人じゃないのかも』みたいな」
――そのセリフ、劇中で聞きました。
「ありましたね(笑)。それがこの作品の『共感型リアル体験』という部分です。私自身、共感するコンテンツを見つけたときにすごく気持ちが楽になって。『この主人公は私と同じだ』とか『この物語、私のことじゃん』っていう瞬間が、エンタメを見ていて一番スッキリするんです。心のデトックスをエンタメに求めている部分があるので、そういう作品を作っていきたいっていう思いはあります」
――これまで関わった作品で、反響が大きかったものは何ですか?
「自分の企画として最初に手掛けた『来世ではちゃんとします』(※)が、一番反響が大きかったです。シーズンを重ねていくつか作りましたし、未だに『来世ちゃん、見てました』っておっしゃってくださる方も多いです。当時は女の子がこっそりお家で見られるような、ちょっとエッチなコンテンツってなかったんです。本当だったら見ているのを隠そうとする人も多いかと思うんですけど、こっそりでも伝えてくれるのはうれしいですし、それだけ熱意を持って見てくれていたんだなって思います」
――「来世ではちゃんとします」が放送されたのは2020年ですね。
「ちょうどコロナ禍に入って、家で楽しむエンタメの需要が増えたときです。配信文化が一気に浸透したのも重なって、たくさんの人に見てもらえたのかなって思っています」
――「ブラックガールズトーク」も、リアルタイム配信から見逃し配信まで、いろんなところで楽しめますね。
「考えさせられるとかじゃなく、エンタメ性の濃い、疲れた人に寄り添うような、デトックスドラマになっていると思います。オンエアでも、配信でも、気軽に見ていただきたいですし、まだ読んでいない方には、原作も併せて読んでほしいです」
※『来世ではちゃんとします』(2020年/テレビ東京)…内田理央主演。性をこじらせたイマドキ男女の赤裸々ラブコメディ。シリーズ化し、2021年シーズン2、2023年にシーズン3が放送された。
■プロフィール
祖父江里奈(そぶえ・りな)
2008年テレビ東京入社。バラエティ番組制作として「YOUは何しにニッポンへ?」「モヤモヤさまぁ~ず2」などの現場を経験。2018年にドラマの制作へ。主なプロデュース作品は「来世ではちゃんとします」(2020年)、「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記」(2020年)、「生きるとか死ぬとか父親とか」(2021年)など。
40歳の節目を迎える2024年の目標は「より良く働くために、ちゃんと休む」。
■エピソードトーク「祖父江Pの推しドラマ」
「美女か野獣」(2003年/フジテレビ)
「好きなドラマはたくさんあるんですけど、マスコミ業界への憧れという意味では、テレビ局の報道番組が舞台の『美女か野獣』が印象に残っています。お仕事ドラマというか、何かにポリシーを持って仕事をしている人ってすごくいいなと思っていて。いろんな人がそれぞれの立場で頑張っている作品が好きです」
ドラマプレミア23『ブラックガールズトーク』放送情報
テレ東系
毎週月曜 後11:06~
TVerでリアルタイム配信
各話放送終了後から、U-NEXT、Leminoにて第一話から最新話まで見放題配信
広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東 HP、TVer)にて見逃し配信
取材・文/陰山ひとみ 写真/テレ東提供