エランドール賞 深掘りレポート「祝福シーンに見えたスタッフと出演者の幸せな関係」

2024/02/09 20:08

 

日本映画テレビプロデューサー協会が主催で、1年を通じて映画・テレビ界で顕著な活躍をしたプロデューサーや将来有望な俳優を選出して表彰する「エランドール賞」の授賞式が2月8日、東京・京王プラザホテルで開催されました。今年の受賞者の顔ぶれと喜びのコメントを、ドラマ作品にスポットをあてて紹介。受賞したプロデューサーをお祝いすべくゲストとして登壇した出演者たちと制作陣、また新人賞を受賞した俳優と共演者たちの、いわば“戦友”のように喜び合う姿に会場全体が幸せなムードに包まれた模様を、たっぷりお楽しみください!

※「第48回エランドール賞」選考期間:2022年12月1日~2023年11月30日

プロデューサー賞テレビドラマ部門受賞
「VIVANT」飯田和孝プロデューサー

テレビドラマ部門のプロデューサーとして最高の栄誉であるこの賞を受賞したのは、昨年7月期にTBSで放送された日曜劇場「VIVANT」のプロデューサー・飯田和孝氏。敵か味方か、味方か敵か。巨額の誤送金に関する調査を任命された冴えない会社員は、やがて世界規模の壮大な冒険に巻き込まれていく――。日本と中央アジアを舞台に、モンゴルで2カ月半にも及ぶ大規模なロケも行われた今作。テレビドラマとしては異例の製作費が投入されたことも話題を呼んだが、この大作を仕切る飯田プロデューサーの手腕がこのドラマを成功に導いてくれたと、お祝いに駆けつけた主演を務めた堺雅人さんの言葉が印象的でした。


■飯田和孝プロデューサーが手掛けた主なドラマ
「半沢直樹」(2013年)
「陸王」(2017年)
「義母と娘のブルース」(2018年)
「集団左遷!!」(2019年)
「ドラゴン桜2」(2021年)


■受賞の声
「ありがとうございます! 国内外のスタッフ・キャストみんなに報告したいです。それと、報道されているよりもですね、多くのお金がかかってしまっておりますが(笑)、この前代未聞の企画を決断してくれたTBSに感謝いたします。長期にわたるモンゴルロケなど、本当に過酷な撮影に大事な家族を送ってくれた、スタッフ・キャストの家族に感謝したい」 「『VIVANT』に関することは、福澤監督がいろんなところで話してくれていますので(笑)、私は今日TBSドラマについてちょっとだけ話したいなと思っています。TBSドラマというのは、社員が一番下の助監督から、演出、そして制作を徐々に学びながら、時間をかけてプロデューサーやディレクターになっていくシステムを今もなお継続してやっています。これはもう他局にはほとんど残っていない、ガラパゴスのようなシステムと言われていますが、TBSがこれを続ける一番の理由は、やはり継承になると思います。それはドラマ作りのスキルだけではなくて、コミュニケーションだったり、交渉力、人間力、そしてリーダーシップなどを徐々に学びながら育っていき、自分のスタイルを構築し、そしてまたそれを下の世代に伝えていく――。それは現場だけではなくて、コンテンツ戦略だったりプロモーションだったり関わっている人間たちが、先人たちが残してくれたそれを今の時代に応用していく。これが今のTBSドラマのスタイルだと思っています。そんなスタイルを貫いて、踏襲して作ったこのドラマが評価をいただけたことに、本当に今日は感謝しています」

■お祝いゲスト・堺雅人

「栄えある賞を『VIVANT』の飯田プロデューサーが受賞されて本当にうれしく思っています。プロデューサーの仕事というのは、簡単そうに見えて実は難しい仕事もあるでしょうし、その逆もあるかもしれませんが、でも『VIVANT』のプロデューサーは、本当に大変そうに見えて本当に大変なお仕事です(笑)。人や物、国と国など、あらゆるものを繋ぎながら、すべてをうまく回してくれていました。そして、何が何でも完成するぞ! 何が何でも前に進めるぞ! 何が何でも今日の撮影を終わらせるぞ! と、そういう思いを一番強く持っている方がプロデューサーなんだと思います。一番の大人がなる役職なのではと思っております。本当におめでとうございます」

プロデューサー奨励賞テレビドラマ部門受賞
「大奥」藤並英樹プロデューサー、舩田遼介プロデューサー

男女の役割が逆転した江戸時代を舞台とした、よしながふみ原作漫画を森下佳子脚本でドラマ化し話題を呼んだNHKの「ドラマ10『大奥』」がテレビドラマ部門プロデューサー奨励賞に輝き、プロデューサーを務めたNHKの藤並英樹氏、舩田遼介氏にトロフィーが手渡されました。原作ファンから「神キャスト」と絶賛されたキャスティング、長い原作を幕末のフィナーレまで初めて描いた見事な構成、緻密な時代考証に裏付けられた細部までこだわりぬいた美術、衣装、設定などプロデューサーの力量がいかんなく発揮された作品といえそう。同番組で将軍・吉宗を演じた冨永愛さんがお祝いに登場し華を添えました。


■藤並英樹プロデューサー、舩田遼介プロデューサーが手掛けた主なドラマ(演出を含む)
「ちむどんどん」(2022年)
「おかえりモネ」(2021年)
「麒麟がくる」(2020~2021年)
「おんな城主 直虎」(2017年)
「とと姉ちゃん」(2016年)
「軍師官兵衛」(2014年)


■受賞の言葉・藤並英樹プロデューサー
「このたびは栄えある賞をいただき、ありがとうございます。これからも視聴者の皆さんに満足していただける番組を作っていきたいと思います。このドラマがこうした評価をいただけたのは、隣にいる若いプロデューサーがスタッフとキャストを愛して、いろんなアイデアを出してくれたおかげだと思っています」


■受賞の言葉・舩田遼介プロデューサー
「このような光栄な賞をいただき、ありがたく思います。僕自身ドラマの世界に入りまだ5年と短いキャリアですが、この『大奥』という大きい作品に携わるチャンスをいただいた環境に心から感謝しています。『大奥』での経験のひとつひとつが、自分のドラマ人生にとってかけがえのない財産になっていくと感じています。この賞を励みに、この先も皆さんに愛されるようなドラマを一つでも多く届けられるように精進していきたいと思います」

■お祝いゲスト・富永愛

「『大奥』という作品に、吉宗役で選んでくださったことに感謝しています。時代劇は初めての経験でしたが、藤並さん、舩田さんはじめ、スタッフの皆さんの熱い思いとご指導のもと、人生の中で絶対心に残る作品になりましたし、私の代表作になったなと確信しています。それほどこの作品がすばらしかった。今、思い返しても一瞬一瞬が鮮明によみがえってくるんです。この作品がたくさんの賞を受賞して、私も感極まる思いです」

特別賞 「ブラッシュアップライフ」制作チーム 水野格氏、小田玲奈氏、榊田真由子氏(日本テレビ)、柴田裕基氏(日テレAXON)

昨年1月期に放送された日本テレビ系ドラマ「ブラッシュアップライフ」が特別賞を受賞。 不慮の事故で命を落とした平凡な30代独身の麻美は、死後の世界の受付係の案内で、来世への転生がオオアリクイであることを知る。人間への転生でないことに落胆する麻美だが、その理由は生前の徳が足りなかった可能性を示唆され、更には人生のやり直しという選択肢を提示されたとき…。バカリズムが脚本を担当し、不思議な日常を描くタイムリープ系ヒューマンコメディがうれしい受賞となった。お祝いに登壇した主演の安藤サクラは、制作チーム陣とハイタッチ! 制作チームのメンバーを自分の横に呼び込み、5人で並びながら喜びのコメントを述べていました。

■受賞の言葉・水野格(演出)
「プロデュースワークの観点から、この番組を振り返ってみると、プロデュースの皆さんが、すごく汗をかいていただいた作品だったと思います。このドラマには、平成の『たまごっち』とか懐かしのアイテムがいっぱい出てくるんですけど、当然一個一個全て許諾を得る作業が必要だったり、そういう地味だけどものすごく汗をかいた結果が、作品の完成度につながっていた。そして、いろんな部署から出てきたアイデアが採用されたり、本当にみんなで知恵を出し合って作った作品だったなと思いますし、そのチームワークもやっぱり、プロデュースワークの賜物だと思います」

■お祝いゲスト・安藤サクラ

「このドラマの一ファンとして、チームの一員としてめっちゃうれしく思います! 本当に海外の方からも、近所の公園でも、『ブラッシュアップライフ』大好き!って声をかけていただいていて、そのときに『ありがとうございます』ではなく、『ねー! めっちゃ面白いよね!』と言うようにしています」

新人賞は磯村勇斗、今田美桜、眞栄田郷敦、小芝風花、目黒蓮、堀田真由の6人が受賞

エランドール賞 新人賞は一年を通じて最も活躍した、将来有望な新人俳優に贈られるもの。 1956年の第1回では石原裕次郎、高倉健などが選ばれており、その歴史と伝統から業界の中でも最も権威のある賞のひとつとなっています。今年は男女6名が受賞し、副賞・TVガイド賞として銀座和光製作の銀の写真立ても贈られました。
 

磯村勇斗(いそむらはやと)

映画「最後まで行く」、「波紋」、「渇水」、「月」、「正欲」、ドラマ「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」(テレビ朝日系)、「きのう何食べた? season2」(テレビ東京系)など、2023年は数多くの出演作が公開・放送された磯村勇斗。お祝いゲストには磯村が尊敬する役者であり、「最後まで行く」でも共演した綾野剛が登壇し熱いエールを送りました。


■受賞の言葉
「昨年はテレビドラマや映画など、たくさんの作品に携わることができ、たくさんの人たちと出会いました。先ほど裏でお世話になったプロデューサーの方や制作陣の方々に久々にお会いして、あらためていろんな周りの人に支えていただきながらここに立てているんだなと感じました。自分はすごい巡り合わせで助けてもらってきた部分は大きいので、しっかりと今後返していけるように頑張っていきたいと思います」

■お祝いゲスト・綾野剛

「勇斗、おめでとう。あなたの見る人の心震わせる演技は、勇斗の作品への愛と圧倒的な努力が生んだと心から思っています。僕はこれからどんどん動かなくなっていく体と向き合う中で、心が動くまで芝居を続けるんだということをあなたから学びました。こういった場に立たせていただき、一緒に時を過ごせることをとても幸せに思っています」
 

今田美桜(いまだみお)

2023年には映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命- / -決戦-」、「わたしの幸せな結婚」やドラマ「トリリオンゲーム」、「いちばんすきな花」(ともにTBS系)などに出演。授賞式には、キラキラと輝くタイトなドレス姿で登場。「ラストマン-全盲の捜査官-」(TBS系)で共演し、今田美桜ファンを公言する吉田羊がお祝いに駆けつけた。


■受賞の言葉
「このたびは素晴らしい賞をありがとうございます。昨年は本当にたくさんの作品で共演者、スタッフのみなさんに出会って、あらためて振り返ると愛のあるみなさまに支えられながら、作品に参加していたんだなと思います。まだまだ未熟ではありますが、みなさまに支えられながら、自分にできること、役に丁寧に向き合いながら携わっていきたいと思います」

■お祝いゲスト・吉田羊

「昨年初めてご一緒したとき、その人間力とひたむきさに大変度胆を抜かれました。ずっとにこやかで穏やか、誰に対しても敬意を忘れない人です。これからも、私たち今田美桜ファンを末長く楽しませていただきたい。マスコミの皆さん! 今田美桜ちゃんが歌う、中島みゆきの『悪女』は最高です」
 

眞栄田郷敦(まえだごうどん)

昨年は大河ドラマ「どうする家康」で武田信玄の若き後継者・武田勝頼を演じたほか、映画「ゴールデンカムイ」など話題作に次々と出演し、いま最も注目を集めている俳優のひとり。お祝いのゲストにはドラマ「エルピス」(TBS系)で共演した鈴木亮平が登場。先輩として暖かく見守る心優しい言葉をかけていました。


■受賞の言葉
「正解がないこの表現の世界で、こうやって形として評価していただけるのはすごく嬉しいし、すごく自信になります。またいただけるように、これからも役や作品に丁寧に向き合っていきたいと思います」

■お祝いゲスト・鈴木亮平

「現場では筋トレの話しかしていなかったけれど(笑)、なんて素晴らしくて可能性に満ちあふれた俳優さんだろうと思っていました。彼の先には明るい未来しかないと信じています。これからも黄金の飛翔を続けてもらいたいです」
 

小芝風花(こしばふうか)

2023年は映画「レディ加賀」、ドラマ「波よ聞いてくれ」(テレビ朝日系)、「転職の魔王様」(フジテレビ系)、「フェルマーの料理」(TBS系)などへ出演した小芝風花。なかでも「波よ聞いてくれ」では金髪マシンガントークの主人公に扮し、その演技の振り幅で視聴者を驚かせた。この「波よ聞いてくれ」で共演した北村一輝が登場し、「この賞は誰がエランドール?」と笑いを誘いつつ花束を贈呈。


■受賞の言葉
「昨年は幅広い役をさせていただいて、自分の中でも本当に学びの多い一年だなと感じていたので、このような歴史のある素晴らしい賞をいただけて本当に嬉しく思います。そして、いろんな役に出会わせてくれた関係者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。この受賞に恥じないよう、今年も来年以降も頑張っていきたいなと思っています」

■お祝いゲスト・北村一輝

「台本を最初いただいたとき、実験的な作品だなと思うのと同時に、彼女のセリフの量が凄くて、きっとNG出すんじゃないかなと思っていたんですけど、見事に一度も出さずで、本当にびっくりしました。空いている時間の現場での姿勢も、スタッフに愛されるというか、やっぱり気遣いもできていて、本当にいい女優だなと、僕も勉強になりました」
 

目黒蓮(めぐろれん)

昨年は映画「わたしの幸せな結婚」、「月の満ち欠け」、ドラマ「silent」(フジテレビ系)、「舞いあがれ!」(NHK)、「トリリオンゲーム」(TBS系)など多数の作品に出演、その役どころの幅広さが評価された目黒蓮。Snow Manのメンバーとして活動しつつ、この実績はさすがというほかない。当日は「silent」で共演した川口春奈がお祝いに登場。川口が来てくれるとは全く知らなかったという目黒にとってまさにサプライズとなった。


■受賞の言葉
「歴史ある賞をいただいて本当にうれしいです。共演者、スタッフのみなさん、なにより作品を愛してくださったみなさまに支えられてここまで来られたと思うので、全ての方に感謝しています。これからも見てくださる方々の気持ちを動かすことができるような真っすぐなお芝居ができるように邁進していきたいと思います。(この受賞を誰に一番伝えたい?)日頃支えてくださるファンのみなさんだったり、スタッフだったり、みなさんに伝えたいのはもちろんなんですけど、一番は……家にいるワンちゃんに伝えます(笑)」

■お祝いゲスト・川口春奈

「本当にひたむきに、ストイックに役や作品と向き合う姿、忙しい毎日でもぶれない強い芯を持っている姿を近くで見ていてすごく刺激的だったし、まぶしかったです。『silent』ではタイトなスケジュールの中、約4カ月走り切れたこと、勝手に戦友だと思っております。本当におめでとうございます」
 

堀田真由(ほったまゆ)

映画「バカ塗りの娘」、「禁じられた遊び」、「翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~」、ドラマ「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)、「大奥」(NHK)、「たとえあなたを忘れても」(テレビ朝日系)などに出演し、バラエティ豊かな活躍を見せた堀田真由。男装の女将軍・徳川家光を演じた「大奥」で夫婦役として共演した福士蒼汰がお祝いに駆けつけ、収録時の裏話を披露してくれました。


■受賞の言葉
「これまで私が携わった作品や活動を評価していただけて、今回この場に出させていただけて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。昨年は本当にたくさんの作品に携わらせていただいて、いろんな経験や挑戦をさせていただきました。これまで自分自身がお芝居が好きという気持ちがいつもそばにあったんですけど、昨年はお芝居をしていて、お芝居が楽しいなって思う瞬間がたくさんありました」

■お祝いゲスト・福士蒼汰

「(徳川家光は)難しい役柄だったと思うんですけど、一緒に作品を通して、難しい壁に何回も何回もぶつかったことがありました。そのとき一緒に考えて話し合って、2人でキャラクターを作っていくことができて、その時間が僕にとってはとてもかけがえのない時間でした。そばで見ていて、すごく魅力的な人物像を作っていく彼女がとても魅力的でした」


取材・文/袴塚信彦 撮影/尾崎篤志