話題のスーパーマーケット・ミステリーは後半へ!CPに聞く第2弾

2023/09/02 05:05

中京テレビが開局54年目にして初めて制作した連続ドラマ「スーパーのカゴの中身が気になる私」。作品の手応えや終盤の見どころ、撮影の裏話、本作に続く今後のドラマ制作に向けての構想などについて聞いた、池田京平CPインタビューの第2弾をお届けします。

全10回のシリーズは、9月2日(土)の放送・配信で第6回と、物語もいよいよ後半に突入。 7月の放送開始から回を重ねるごとに「めっちゃ面白い」「舞台がスーパーってところがいい」「あったかい気持ちになれる」「コメディー調だけどセリフは考えさせられる」など、SNSを中心にドラマの世界観に共感を寄せる視聴者が増えていて、池田CPも手ごたえを感じているようです!

視聴者の反応から、あるあるネタが詰まっていると実感

――作品をご覧になった方々からの反響はいかがでしょうか?

「ありがたいことに、SNSでとても好評をいただいています。『たまたま見たら面白かった』っていう言葉がめちゃくちゃうれしいですね。特に視聴者の皆さんからの熱量を感じたのは、品物を陳列棚の手前からではなく奥から取る人の描写や、カゴを覗かれるお客さん側の視点からのご意見です。本当にこのドラマには、皆さんにとって身近な『あるある』が詰まっているんだと実感しました」

――来店する客のカゴの中身を見て主人公の雄三(戸塚純貴)が妄想し、最後に種明かしがされるという基本設定を毎回踏襲しながらも、スーパーのあるあるネタや、一見コワモテの男たちや有名女子アナ、料理評論家など、千差万別な来店客の不思議なカゴの中身から始まる意表をつく展開がクセになってきます。

「共同テレビのプロデューサー・吉見健士さんと脚本の和田清人さんがストーリーのベースを作っていますが、確かに見るたびにクセになるような、引っかかるポイントがこのドラマの中にはたくさんあります。そこに妄想パートをアメコミタッチのアニメーションにするといった新しいアイデアも盛り込まれ、主人公・雄三の元恋人・由里子(新谷あやか)も現れるなど、30分の本編にコメディー、ミステリー、ヒューマンドラマとさまざまな要素が入ってくるところがこの作品の良さだと思っています」

撮影では本物のスーパーマーケットの店舗を使用

――ハリウッド俳優としてマーベル作品への出演を夢想する雄三は、脳内の妄想が勝手にアメコミ風に変換されてしまうと前回うかがいましたが、あの斬新なアメコミはどなたが描いているのでしょうか。

「アニメーションのベースとなるイラストを描いてくださっているのは、世界最速と呼ばれるライブパフォーマンスで海外でも活躍するjbstyle.さんです。実はトークバラエティー『太田上田』(中京テレビ 毎週火曜深0:59~)のタイトルロゴも手がけるなど、名古屋での活動歴が長かったイラストレーターの方。アメコミタッチのイラストレーターを探していた佐々木豪監督が、偶然jbstyle.さんの作品を見つけて打診したところ、名古屋、そして中京テレビとの縁もあるということで引き受けてくださいました。登場人物たちをモデルにした番組の公式LINEスタンプのイラストも、jbstyle.さんに描き下ろしてもらいましたので、みなさんに楽しく活用していただけるとうれしいですね」

――舞台となっているスーパーマーケットは、実店舗のように見えますが、撮影場所はどう確保されたのだろうと気になりました。

「千葉県旭市にあるスーパーマーケットにご協力いただいて、週1回の定休日にお店をお借りして撮影しました。エキストラの手配やバックヤードのシーンでは旧市庁舎の一角を使わせていただくなど、旭市さんには全面的にバックアップしていただき、大変感謝しています。都心から2時間ほどかかるところですが、旭市でのロケのたびに、まるで合宿のような雰囲気となり、撮影現場に一体感が生まれる要因の一つになったと感じています」

出演者、スタッフからは早くもシーズン2を期待する声

――前回の取材では、第2回でゲスト出演した竹中直人さんの突き抜けたお芝居をきっかけに、現場にアドリブを積み上げていくような空気ができあがっていったというお話もうかがいました。それは、どのような場面に表れているのでしょう。

「ぜひ、番組の公式Instagramをご覧ください! 実際に現場でテストの時にお互いのアイデアをぶつけ合っているシーンを放送後にアップしているので、改めて本番と見比べてもらうと、本編が一層楽しめると思います」


――撮影が進むにつれて現場の温度感に変化はあったのでしょうか。印象的なエピソードがあれば、教えてください。

「日に日に現場の空気が良くなっていきました。それは、どんな業種の現場でも同じだと思うのですが、若手でも自分の意見が自由に言える職場って活気がありますよね。第7話でゲストの松村沙友理さんが事前に考えてきたアドリブをテストで披露して、ほかの出演者も監督もカメラマンも『おー!』と感嘆の声が漏れたのは印象的でした。ゲストの方が自分の演技プランを初めての現場で口にする勇気もすごいし、それを言いやすい現場の空気もとても素敵だと思いました」

――既に撮影は終了されたそうですが、クランクアップの時の様子を聞かせてください。スタッフやキャストの方々から続編希望の声なども出ているのでは?

「戸塚さん、君枝役の石田ひかりさんをはじめ、みなさんから『シーズン2をやりたいです!』と言われました。『なかなかこんなに愛しい現場は無いから、また集まりたいね』と。ただ、それを決めるのは、見てくださる視聴者のみなさんの評価なので、そのためにもよりたくさんの人にこのドラマを知ってもらおうと、PRに力を入れています」

由里子の秘密が明かされるラスト2回の反響が楽しみ

――9月2日に放送・配信開始の第6話から物語も後半に入っていきます。第6回で雄三は、意外な作品のオーディションにも行くようです。物語の最後でハリウッド進出という雄三の夢は叶うのでしょうか?

「はたして、どうでしょう? 雄三の夢が実現しちゃうと、それこそシーズン2ができなくなりますから(笑)。これまで僕は連続ドラマを制作したことがなかったのですが、やるからには人が成長していく物語が良いなと考えていました。主人公が1話ごとに何かを身に付けていくような、挫折も含めて一人前になっていく物語を作ってみたかったんです。雄三の成長物語という点で最終回である第10話は、すごく良い話になっていると思います」


――由里子は、謎めいた部分も多いキャラクターですが、どのような秘密を抱えているのでしょうか。

「雄三と元恋人の由里子、そして職場の同僚であるめぐみ(清水麻璃亜)も含めて、3人の関係がどうなっていくかというのも、第1話からこの物語の縦軸にもなっていて、最終回で大団円を迎えます。由里子の秘密は、第9話、第10話を見てください。『えー!?』となるか、『やっぱり!?』となるか、ご覧になった皆さんの反応が逆に早く知りたいです」

――由里子役の新谷あやかさんは、とても雰囲気がありますね。

「TikTokerの『ばりやわとんこつ』として人気のある新谷さんですが、キャスティング段階から由里子のイメージにぴったりということで、今回の役をお願いしました。彼女自身、連続ドラマへの出演は初めてだったのですが、すごくお芝居が上手ですよね」


――雄三を気にしているようにも見えるめぐみは、自分の気持ちに素直になる日は来るのでしょうか?

「めぐみ役の清水麻璃亜さんの目のお芝居、めっちゃ良いですよね。ドラマを見ている側からすると、素直になってほしいけど、素直じゃないからこそ、めぐみは魅力的なのだと思います。めぐみがどうなるかも楽しみにしてください」

――後半も毎回ゲスト参加の多彩な出演陣が登場します。ゲストの方の収録時のこぼれ話などがあれば教えてください。

「9話に登場する女性ゲストさんが『このドラマ、とても好き』と言ってくれました。タレントさんってスーパーでは、たぶん僕ら以上に買い物カゴを覗かれるだろうし、スーパーの精肉部でバイトしていた経験がある牛久保役のドロンズ石本さんは、『実際、いつも2人前買ってくださっていたお客さんが、ある日を境に1人前になると、“あー、別れちゃったのかなぁ”って思う』と言っていたので、スーパーのカゴの中身が気になるのって、リアルに『あるある』なんだと思います。本当は『覗く』って迷惑な行為だけど、本能的にみんなやってみたいことなのかもしれません。それを楽しく描くエンターテインメントって素敵ですね、とその方が褒めてくださいました。でも実際は、あまり覗いていると『どこ見てんのよ!?』って怒られるのでほどほどに! ですね」

まるでドリフ!? 深夜ドラマでも小学生が楽しめる中京テレビらしさ

――第6回は他の回と雰囲気が異なり、真夏のホラーテイストともいえる幻想的な作品だと感じました。異色の回ですね。

「第6話は、脚本の打ち合わせからかなりの時間をかけました。もともとはお盆時期の放送に合わせ、それっぽいことをやろうという話でしたが、リアルとファンタジーが入り交じる内容に、このドラマ的にその境界線をどこに置くか――スタッフ間でのすり合わせが必要だったので、議論を重ねました。第1話からの伏線回収もあり、脚本家の和田さんの才能のすごさを体感できますし、サブカル的センスが抜群な佐々木監督の編集も感動的で、個人的に大好きな回です」

――開局初の連続ドラマだけに、地上波の放送局として培ってきた安心・安全な家族で見られる作品を作りたいということでしたが、“中京テレビらしいドラマ”作りへの手ごたえはいかがでしょうか?

「店長・西尾役の永野宗典さんの8歳になるお子さんが第1話を見終わってすぐ、『もう終わり? 面白いから全話一気見したい!』って配信世代っぽいことを言っていたそうです。ただ、まだ第2話以降ができていなかったので、永野さんと一緒に第1話を一気に3回も見てくれたとか。特に主人公の雄三がカゴを覗くためにお客さんの後ろを付いていくシーンでは、「ずっと付いてってるやん!」ってワーワー言っていたそうで。それって僕ら世代が幼少期に家族みんなで『8時だョ!全員集合』を見ながら、『志村、うしろー!』と叫んでいた光景と一緒じゃないですか。それこそが僕らが目指していた“家族で見たいテレビドラマ”の姿だったので、永野さんからその話をうかがって、めちゃくちゃうれしかったですね」

グルメの次にイメージしているテーマはお笑い芸人とドキュメント

――ドラマで中京テレビらしさを発揮するために、グルメの次のテーマは、どのようなものを構想されているのでしょうか。

「ホップ・ステップ・ジャンプのステップで取り組んでみたいテーマが、“お笑い芸人”です。芸人さんが主人公になるドラマや、芸人さんが脚本を書いた物語に挑戦してみたいです。僕自身、長年バラエティー制作に携わってきましたので、芸人さんたちの発想力をリスペクトしていますし、中京テレビで25年間仕事をしてきた中で学んだのが、ストレートに“泣かせる話”や“社会に問題提起をする”というよりも、笑って、笑って、笑って、最後にちょっと泣ける、ちょっと考えさせられる、くらいのバランスで番組作りをすると、観ている人にも届きやすいということ。それはドラマに限らず、中京テレビのコンテンツ制作に息づくイズムといえるものかもしれません。最終的に作品に込めたメッセージを伝えるために、視聴者の方にまず笑って楽しんでいただく、それを表現するのに芸人さんのドラマは合っているのではないかと感じています」

――ホップ=グルメ、ステップ=芸人、では、ジャンプにあたるテーマもイメージされているのですか?

「3つ目のキーワードは“ドキュメント”です。キー局が持っていない我々の武器は何かと考えた場合、うちの報道局の記者たちが自分のライフワークのように追いかけているネタがあり、取材対象の方々がいます。全国のニュースではまだ知られていない、地方の現場で記者たちが日々根気よく取材を積み重ねたリアルを、笑って泣けるドラマとして発信することで、たくさんの人に知ってもらいたいという思いがあります。堤幸彦監督と制作した開局50周年ドラマ『翔べ!工業高校マーチングバンド部』(2020年)の男の子ばかりのマーチングバンド部も実際にあった話ですし、室井滋さん主演で“特別養子縁組”をテーマにしたスペシャルドラマ『マザーズ』シリーズ(2015~2018年)も、もともとは報道のドキュメンタリー番組から始まりました。スポーツや24時間テレビも含めて、中京テレビのチームがきちんと取材をしてきたもの、東京とも大阪とも異なる地方で暮らす人たちが実際に抱えている悩みや喜ぶ笑顔を、ドラマ化することで多くの人に届けるチャンスがあるのだったら、いつか挑んでみたいと思っています。とはいえ、連続ドラマ化するには、ハードルがかなり高いので、あくまでもホップ・ステップ・ジャンプのジャンプで実現できたらと考えています」


――次回作など、具体的な作品で動いているものはあるのでしょうか。

「発表できる段階のものはまだないのですが、自分でも早くみなさんに話したいワクワクしたプロジェクトがいっぱいありますので、今後の中京テレビの連続ドラマを楽しみに待っていてください!」

自分のホームグラウンドがあるという幸せ

――「スーパーのカゴの中身が気になる私」には、平穏な日常の中には、ささやかながらも愛すべきものがたくさん詰まっていることを見逃さないでほしいというメッセージを感じました。全10回を通して伝えたいことを改めて教えてください。

「地元に根付いたスーパーマーケットは、家族代々で愛されている、お客さんにとっても家族みんなでの思い出がある場所だったりします。それがギュッと詰まっているのが第6話のお話かもしれません。おしゃべり好きのレジの人って今の時代、少ないかもしれませんが、本作での君枝さんのおせっかいで心が救われる10話=10人それぞれの物語の先にあるのは、『自分の居場所のような、ホームグランドと言える場所がある幸せ』だと思います。それをぜひ家族で見て、感じてもらいたいです」

■Profile
池田京平(いけだ・きょうへい)
1996年中京テレビ入社。「PS」「アンデュ」「キャッチ!」の総合演出や、CPとして「前略、大とくさん」「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。」「ROOMIC」ほか数多くのバラエティー、情報、音楽番組を手がける。また、ドラマでも開局50周年ドラマ「翔べ!工業高校マーチングバンド部」のCPを務める。2022年コンテンツ開発グループに異動、CPとして4話ドラマ「君が、おにぎり好きだから。」の制作に続き、初の連続ドラマ「スーパーのカゴの中身が気になる私」を制作。

「スーパーのカゴの中身が気になる私」放送情報

中京テレビ
毎週土曜 深0:55~
※9/2(土)は深1:05~
TVerLocipo、Hulu、U-NEXTで配信
番組公式サイト




撮影/尾崎篤志 取材・文/桑原雄太