町田啓太インタビュー「逆境に身を置くことに、意味がある」

2023/07/07 06:06

今週末よりスタートする「連続ドラマW フィクサー Season2」(WOWOWプライム)。今回のキーマン、新聞記者・渡辺達哉を演じる町田啓太さんのインタビューを紹介。

正義感や探究心を、色濃く表現しているシーズン2

──余談ですが、町田さんのイメージする“フィクサー”とは、どういった人物像しょうか?

「(一瞬、考えて)得体の知れない存在です(笑)。僕自身は会ったこともないですし、『本当にフィクサーと呼ばれる人たちっているのかな』といったイメージではあります。今回、渡辺達哉を演じさせてもらう中で、思っていた以上に人のことをよく知っているんだな、と思いました。なるほど、と妙に納得してしまうところがあると言いますか…」
  
  

──唐沢寿明さんの演じる主人公・設楽拳一でいうと、どうすれば人が動くのかを熟知しているような印象があります。

「人の動かし方も上手ですし、いろいろな人間がいる中で、それぞれの心理だったり行動原理だったりを分かっていて、情報もたくさん持っている。“頭がいい”というとちょっと語弊があるかもしれないですが、そういった感覚で捉えている部分もあったりしますね」
  

──といったお話を踏まえまして、もし町田さんがフィクサーになったとしたら、どんなことをしてみたいですか?

「う〜ん…、フィクサーにはなりたくない、というのが正直な気持ちですね(笑)。というのは、とにかく大変そうだから。性格的にフィクサーという立場を楽しめたら対人的にも楽なんでしょうけど、僕はもう少しゆっくりしたいと思ってしまうタイプなので、感情的にも思考的にも、僕には忙しすぎる役割なのかもしれません」     
  
           

──確かに、設楽を見ていると「気が休まる時ってあるのかな?」と思ってしまいますね。

「僕自身が『ちょっと気を休めたいな』と思うのとは反対に、フィクサーとして人や政財界を動かしていることで満たされているのだろうな、と想像していて…。ただ、設楽という人物はダークヒーロー的にも見て取れる描かれ方をしているので、一概に『こうだ』とは言えないところに、このドラマの魅力や面白さがあるように感じてもいるんです」

──なるほど。一方、町田さんの演じている達哉は、シーズン1では受け身の印象が強かったですが、シーズン2ではアクションを起こすのかどうか? というところにも期待を寄せています。
  
「あまり詳しくは言えないですが、シーズン2も基本的には受け身なんですよ。誰かの影響を何かしら受け続けているので、その受け方という面での表現に苦心したところがありましたね。ただ、達哉という人物を演じる上で核となる部分でいうと、母親(斉藤由貴演じる響子)に対する思い以外にはない、と個人的には解釈しています。新聞記者になろうと思ったのもシングルマザーの家庭に育ったことが影響していて、本来なら知りたかったことや聞きたかったことがあっても、その感情や欲求を母の前ではなかなか表に出せなかったんじゃないか、と想像しています。だからこそ、真実や本当の気持ちにフォーカスする思考も強まっていったのだろう、と。それがどんどん強くなり、事件を探究して真実を明らかにする新聞記者という職業を志したのかもしれないと思うと、なるべくしてなったのかな、と腑に落ちるんですよね。それともう一つ、子どもながらに母を守らねばという思いもあったはずなので、そのためにも自分は強くあらねばと考えつつ、守るにはどうすればいいかを突き詰めていったのかな。それによって、自分と同じような立場の人、例えばマイノリティーの方々、社会的に立場の弱い方たちに寄り添うことが、彼の中では正義と定義づけられたようにも感じていて…。そうやって深掘りしていくと、行動原理がすべて母への思いに通じるんです」 
  
  

──今のお話で、渡辺達哉という人物の解像度が上がりましたし、シーズン2への期待がさらに高まりました。
  
「僕自身も撮影に臨みながら、『ここからさらに面白くなっていくんだな』という楽しみが増していくのを感じていたので、シーズン2を心待ちにしている皆さんにも早く観ていただきたいなという気持ちがあります。そういう意味では、達哉も視聴者の皆さんと同じ目線と言いますか、劇中の出来事を一緒に追っている立ち位置だったりもするんですよね。繰り返しになりますが、達哉を演じる上では母との関係性がすごく大事だと思っていたので、正義感と行動原理を念頭に置きつつ演じようと心掛けていました。そして、その正義感や探究心をさらに色濃くすることで、観てくださる方々にもこれからの展開に興味を示していただけるのではないかなと、僕は捉えています」

現実に起きたら、僕は戦えるか? 信念を貫けるか?

──何しろシーズン2では、ついに唐沢さん演じる設楽拳一との対面も果たします。実際に唐沢さんと顔を合わせてみて、どのような感触を得ましたか?
  
「もう、圧倒的な説得力があるので、視線を合わせただけで目が離せなくなるんです。『この人は何をするんだろう?』『何を考えているんだろう?』といったことを思わせる人物という意味でも魅力的ですし、唐沢さんご自身も設楽の裏側が気になるようなお芝居をされているので、思わず引き込まれる感覚がありました。達哉として初めて対面を果たしてみて、『ようやくだ、この人か!』という、言葉にし難い感情を抱いたんですが、この先も対面するシーンが増えていく可能性はありますし、もっともっとお芝居で絡みたいという思いが増しました」
  
  

──達哉のモノローグに「地獄の門をくぐる」という一節がありますが、シーズン2も苦難が続きそうな予感がしています。
  
「そうですね、もし現実に起こったら果たして自分は戦えるかな、信念を貫けるかなと思うくらい、大きな力とうねりに巻き込まれていくので、日常生活を送っていてもどこか気が気じゃなかったと言いますか…。達哉ほどじゃないにしても、自分の身に何かが起こったとしても不思議じゃないなと考えることも、少なからずあったのも確かです」 
  
  

──達哉自身は新聞記者としての信念や矜持のもとに行動してきたからこそ、設楽の真意を知った時の心情は、想像を絶するものだったのかな、と思ったりもしました。
  
「達哉からすると、何が真実か分からなくなっている状態で、誰を信じていいのか分からない。なので、設楽の言葉だけを鵜呑みにもできないんですよね。そういう意味では、すごく表現が難しかったですね。真に受けすぎても、逆に受けなさすぎてもニュアンスが違ってきてしまうので。そこは西浦(正記)監督にも細かく見てもらって話をさせてもらい、丁寧に演じましたが、何しろ設楽の圧力が想像以上にすさまじかったので、率直に言うと鳥肌が立つような感じでした」

──唐沢さんご本人は本当にカラッとしたお人柄で知られていますが、『フィクサー』の撮影現場ではどんな様子でしたか?
  
「今(取材日)の時点では、ご一緒した日数も多くありませんが、それこそ達哉と同じように『本当の唐沢さんは、どういう方なんだろ!?』と、想像をふくらませている状況です。この先、もっと深く知ることができるのかどうかは、ストーリー次第でもあると思いますが、お芝居に集中されていらっしゃる姿勢がすごく格好良くて、あらためて背筋が伸びる思いです」

江口のりこさんと再会! 場所は、またしても“法廷”(笑)

──シーズン2の達哉は殺人未遂容疑で身柄を拘束され、行動を制限される状況でのお芝居ならではの見せ場もあるかと思います。その辺りを町田さんはどのように捉えているのでしょうか?
  
「心の中に渦巻いているものはシーズン1よりもさらに動きが増しているので、どれくらい表現できるかを芝居のテーマにして臨んでいるかもしれません。行動を制限されて初めて気づくこと、覚える感覚や抱く感情もあるだろうと思うと、今の逆境に身を置くことが達哉の人生において、すごく大きなターニングポイントになるのは間違いないだろうな、と。そんなふうに自分は捉えています。西浦監督から撮影の最初の方で、『どんどん状況が変わっていくし、大きなうねりに巻き込まれていく中で、達哉自身も人間として変化していく部分がある。それを楽しんでもらえたら」と言っていただき、達哉の状況を柔軟に受け止めながら、蓄積されていくものをそのつど表現していければ、と。これから先、さらに巨大な流れに巻き込まれたとしても、その中に入っていった時に達哉がどうなるのかを僕自身は楽しみながら演じたいなと考えています」
  
  

──また、町田さんの出演作を長らく見ていらっしゃる方々からすると、『SUPER RICH』(2021年/フジテレビ系)で共演された江口のりこさんとの再共演も、シーズン2の激アツポイントかなと思っておりまして…。

「そうなんですよ、役柄の関係性は違いますが、また法廷で“再会”することになりそうで…。それこそ『SUPER RICH』以来だったので、『お久しぶりです!』とご挨拶したところ、『お久しぶり。また、気の毒な役をやってんなぁ』と言われました(笑)。でも、江口さんは本当に心からリスペクトも信頼もしている俳優さんの1人なので、今回またご一緒させていただけると聞いて、すごくうれしかったです。アクリル板越しに面会するシーンのほか、いろいろなシチュエーションを共にできそうですし、実際に撮ったシーンではやはり面白かったので、そちらも楽しみにしていただけたらと思います」

■Prolife
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年7月4日生まれ、群馬県出身。近年の主な出演作に、ドラマ「テッパチ!」(22年/フジテレビ系)、NHK正月時代劇「いちげき」(23年)、「unknown」(23年/テレビ朝日系)、映画「チェリまほ THE MOVIE~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」(22年)ほか。「漫画家イエナガの複雑社会を超定義」(毎週金曜 後11:150~/NHK総合)に出演中。待機作に、9月15日公開の映画「ミステリと言う勿れ」、24年1月スタートの大河ドラマ「光る君へ」(NHK)など。’

「連続ドラマW フィクサー Season2」放送情報

WOWOWプライム 
7/9(日)スタート 毎週日曜 後10 :00~
WOWOWオンデマンドで配信中

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【締め切り】2023年7月30日(日)

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撮影/蓮尾美智子 取材・文/平田真人