安田顕&白石聖インタビュー「主役なのに実働5分(笑)」

2022/01/05 10:10

平凡な女子高生がアプリをダウンロードしたことから謎のおじさんと出会い、夢や恋に前進するドラマ「しもべえ」から、安田顕さんと白石聖さんのインタビューを紹介。

スタートを前に、無言で現れ無言で立ち去る男・しもべえを演じる安田さん、女子高生ユリナを演じる白石さんにお話を伺いました。

“喋らない”芝居はストレスがあるけど、それに変わる表現の仕方が見つかればいいな

――「しもべえ」の台本を読んだ印象はいかがでしたか?

安田「率直な印象としては“青春”ですね。あとは白石さんが言うからね(笑)」

白石「私も一話の台本を初めて読んだ時に、自分の学生時代を思い出したんですよね。あの頃って学校がすべてというか、学校で起きたことがすべてで。今考えたらすごく小さなことも、当時は大きな悩みだったなということを思い出しました。そこに不思議なおじさんが現れて…というのがほかに見たことがない作品で、すごく面白いなと思いました」


――ユリナを演じる上で意識されていることはありますか?

「私はいろんな声を出そうと思っています。序盤は叫ぶことがすごく多くて、コメディーなので反応を大きく、声を大きくというのを求められますが、それだけだと物足りないのではという気持ちがあったので、ポイントになるセリフはいろんな声を出してみようと思っています」

――一方、しもべえはまったく話さないキャラクターです。安田さんは“喋らない”ということと、どう向き合われていますか?

安田「今も試行錯誤ではあるんですが、手先に感覚を持つようにしています。人と話している時って、相手が何を考えているか、どんな思いかっていうのは顔だけじゃなくて結構手先に出たりするんですよね。おしぼりをずっとひっくり返している人もいれば、持っている人もいるし、その辺にきっと感情が表れてくるんだろうなということは、しもべえを演じる上で気をつけてはいるけれど、なかなかできない…。難しいですね。あと喋らないというのは、とにかくストレスがたまる(笑)」

――どなたかからアドバイスなどは?

「現場で矢田(亜希子)さんと一緒なので、矢田さんが参加されたドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)のお話は聞いたりしましたね。『矢田さん、セリフないのってやっぱりきついわ』と言ったら、『そうでしょ! ただ“愛している〜”は手話があったから』と。手話は感情が伝わるからとてもやりやすいそうなんです。なので今回、手話に変わるものが何かないかとすごく考えています。そういう表現の仕方が見つかればいいなというきっかけを与えてくれたドラマです」


――そんな喋らない安田さんのお芝居を、白石さんはどのように受けとめていますか?

白石「しもべえが喋らないということにそこまで重きを置いていなかったです。セリフはなくても、そこに存在するだけで伝えたいことや、言葉みたいなものが聞こえる気がして。伝わってくるものはちゃんと伝わってくるので、もはや気にしたことがなかったです」

安田「白石さんは勘がいいというかね、ちゃんとリアクションを待ってくれるんです。しもべえはどういうリアクションをするの、っていうのを、ちゃんと待ってくれるからありがたいですね」

白石「安田さんに汲み取ってもらえているというのが、今すごく嬉しかったです!」

しもべえという“魅力的なおじさん”は、安田さんだからこそ

――共演されてお互いの印象はいかがですか?

安田「白石さんは空間把握力に長けている気がしますね。あとは、ベタついていない。サラッとしている印象。僕は共演者の私生活がどうのとか全く興味がなくて、現場でどうかっていうことしか興味がないから、現場での白石さんしか知らないですけど、とにかくベタついていないんですよ。これは今後仕事をしていく上で、すごく大事なことだと思います」

白石「安田さんは、しもべえをチャーミングに魅せる提案を監督にすごくされている印象があります。なんかその姿も魅力的というか、かわいらしいというか。しもべえという“魅力的なおじさん”は、安田さんだからこそ、ここまでできているのではないかと思います」

安田「“魅力的なおじさん”って一番嬉しい言葉ですね。最近は若い方と共演することも多くなってきまして…ある方は言いました、“曲者のおじさん”。またある方は言いました、“変なおじさん”と…。今までで一番嬉しいなぁ。僕はそんなにお喋りはしないんだけど、白石さんは神輿を担ぎたくなるというか。全然、力はないけど、そんな僕でも支えとしていたいとか、そういうふうに思わせてくれる役者さんです。この間も、バスタオル1枚で携帯電話を部屋中さがすというシーンで、僕の姿を『いい構えですね』って褒めてくれました」

白石「曲線もすばらしいんですよ(笑)」

安田「20代の女性がね、40代のおっさんの半裸のフォルムを褒めてくれた時には嬉しかったけど、よくよく考えたら、これ、NHKでやるんだよな…と(笑)」

47年間で生まれて初めて“ソックタッチ”を使っています

――原作コミックでは、しもべえはちょっとコワモテで、ユリナはギャルっぽい印象ですが、ビジュアルのこだわりはありますか?

安田「昭和の香りは意識したかな。’80年代の一世風靡セピアさんみたいな匂いは監督と共通して持っていましたね」


――スーツのシルエット的に、ですか?

安田「そうですね。例えば、マイケル・ジャクソンの衣装って、寸足らずで格好良いけど、ちょっと面白いじゃないですか。あと当時って、なんでそんなに肩パッド入れていたの? とか。そういうちょっとした違和感を残しながらも、“あるっちゃあるよね”というラインで見た目は考えた気がします。僕は元々華奢でもないし、ガタイがいいわけでもないから、マイケルが寸足らずなのは格好良いけど、僕が真似すると面白くなっちゃうから、あえて靴下の長さを意識したりとか」

白石「ユリナは話数ごとにピン止めの色が変わっていますね」

安田「へー!」

「3つ付けていますが、監督が毎話変えたいとおっしゃっていたらしくて、メイクさんが毎回変えてくださっています。靴下の長さだと、私が女子高生の時もそうでしたが、ふくらはぎまであるソックスはあまり履いていなくて、ちょっと短めのものを衣装合わせの時に選びました。そっちの方が今っぽいかなと」

安田「僕は逆だなぁ。しもべえは逆に靴下をのばしたいと思って、僕は47年間で生まれて初めてソックタッチを使っています」

白石「あははは(笑)」


――しもべえの靴下ってそんなに見えるんですか? 

安田「いや、見えないと思いますよ。気分の問題ですね(笑)」

――お二人には、しもべえのようにピンチを救ってくれた方がいますか?

白石「私はピンチになったことがあまりなくって(笑)。いつも支えてくれているといった意味では、母かなと思います」

安田「二人の友達ですね。僕が仕事を辞めてバイトをしていた時に家賃が払えなくなって『悪いんだけどお金貸してくれない?』と言った時に、親は貸してくれなくて、二人に相談したんです。ひとりは『ごめん、そういうことをしたら僕は君と友人として付き合っていけなくなるかもしれないから、つらいのは分かるけど貸すことはできない』って。もうひとりは『分かった』と言って家まで来てポストにお金を入れてくれた人。断ってくれた人と貸してくれた人がいるんですけど、その二人とは出会って30年、あの日からは20何年たっていますが、いまだに親交があります。困った時に助けてもらった人です」

最近は、猫の声を翻訳してくれるアプリがお気に入りです!

――しもべえは謎のアプリがきっかけでユリナの前に現れますが、お二人はお気に入りのアプリありますか?

安田「アプリ、なんだろうな…? 白石さん、何か思い浮かんだ?」

白石「私はわりとすぐインストールしちゃう派で、ゲームとかもいろいろ試しているので『これいつ取ったっけ?』というアプリが結構ありますね。その中で一番いいなと思って使っているのが『ニャントーク』です。猫を飼っているのですが、猫の声を録音すると翻訳してくれるんですよ」

安田「へー!」

白石「結構楽しくって実用的に使っています」

安田「『ニャー』で、何て言っているか出てくるの?」

白石「出てきますね。今そんなかわいいことを言っているのか~。みたいな」

安田「昨日は何って言っていた?」

白石「“私を見て”って言っていました」

安田「あははは(笑)」

白石「“ここに来て”とか、結構、愛が重た目なことを(笑)。そういう言葉もあれば“激おこ!”っていうのも出てきたり。猫本人に聞いたら『いや、違うよ』って言うと思いますけど、喜怒哀楽は、わりと当てはまっています」

安田「ニャントークがあるということはたぶん“ワントーク”もあるのかな? 僕は犬を飼っているから、今度そのアプリの犬版を手に入れてみたいな」

昔、親父に言われた言葉を、逆に言う側になったんだなと、そんなことを思わせてくれる作品です

――先程、安田さんは「しもべえ」を“青春”とおっしゃていましたが、そう感じる理由が何かあるのでしょうか?

安田「僕が19~21歳ぐらいの学生の時に、酔っ払った親父が、さだまさしさんの『案山子』を歌っている留守電が入っていたことがあったんです。『元気でいるか~、お金はあるか~今度いつ帰る~♪』って(笑)。気が付いたら、そういうことを自分がする側になってきているんだなと。もう二度と戻ってこない青春というものを「しもべえ」を通して俯瞰で見ることができる、そんなことを思わせてくれる作品なんです。僕は「しもべえ」はいいドラマになるという気がしています。その理由というのは、ネタバレを気にする必要がないドラマだなと思うんです」


――ネタバレ込みで楽しめる作品であると?

安田「今、僕はネタバレしないように頑張って話しているけど、『ネタバレしたから何? 分かった上で見た方がより面白いんじゃないの?』って言われそうな、そういう作品かなと思います。この間、映画『猿の惑星』を見たんですけど、自由の女神がラストを飾るって分かっているのに、何度見てもいいなってなるじゃないですか。冒頭から自由の女神出てくるのに(笑)。だからあまりネタバレを気にする必要ってないんじゃないのって思いがあります」

白石「ネタバレ的なことで言えば、ユリナのピンチの時にはいつもしもべえが助けてくれますが、青春といった意味で、その中で彼女が何を感じ、成長していくかっていう所は見てほしいポイントですね」

――最後に、こっそり言えるエピソードを教えてください。

安田「現場では悔しいから言わないでいるんですけど、筋肉痛がひどいです。特殊な早送りやコマ送りをしてくださるみたいで、えらい距離を走るんです(笑)。あと今回、主役で呼んでくださっていると思ってはいるんですけど、毎日、“主役で呼ばれたはずだよな”とこっそり思ったりしていますね(笑)。今日も午前中に15分だけ撮って、移動1時間、スタンバイ1時間、実働5分で帰りましたから(笑)。ゴジラ、ガメラ、ウルトラマン、エヴァンゲリオン、ガンダム…。ウルトラマンは30分に3分しか出ませんから、自分に言い聞かせるんです。しもべえもそんな感じだけど、ちゃんとユリナを助けてるんだぞって(笑)」

■Profile
安田顕(やすだ・けん)

1973年12月8日生まれ。北海道室蘭市出身。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。舞台、映画、ドラマなどを中心に幅広く活動。2022年1月15日(土)スタート「逃亡医F」(日本テレビ系)に出演。22年は出演映画が「とんび」、「ハザードランプ」(4月15日公開)、「リング・ワンダリング」と続々控えている。

白石聖(しらいし・せい)
1998年8月10日生まれ。神奈川県出身。2016年にデビュー。「推しの王子様」(フジテレビ系)、「やっぱりおしい刑事」(NHKBSプレミアム)など多くのTVドラマに出演。

「しもべえ」放送情報

NHK総合
1/7(金)スタート 毎週金曜 後10:00~ 
※NHKプラスでも配信中

  
文/木村友美