18日スタートの「大奥」は、まさにフジテレビの伝統&お家芸を感じさせる内容だった。それはズバリ、女の園の愛と憎しみを描くこと。
なんたって大奥は「将軍様以外、男子禁制」という超特殊環境。多いときには、三千人もの美女がひしめき、たったひとりの男の愛を奪い合う構図なのである。60年代からフジテレビ系では、悲恋、愛憎、毒、陰謀、バトルにいびりに開かずの間まで、なんでもこいで「大奥」を描いてきた。
名セリフも数多く、ドラマ「大奥83」の「思えば大奥とは女人たちの運命の坩堝(るつぼ)でございました…」や平成版「大奥」の「大奥は女の牢獄にございます」は、ドラマファンの心に残る。
新作は、初回からその坩堝感も牢獄感もいっぱいだった。
ヒロインは、公家のお姫様、倫子(小芝風花)。徳川家治(亀梨和也)に嫁ぐことになった倫子は、京からの付人お品(西川七瀬)と大奥に入る。しかし、大奥総取締の松島(栗山千明)は「生きる気力も失せるほどかわいがって差し上げる」と意地悪モード全開だ。おかけで倫子は持ち物は取り上げられるわ、お品は監禁されるわ、着物もめちゃくちゃにされる。一方で、酒と女好きの困った九代将軍・家重が急死(もしや毒!?)、家治が将軍になると、大奥の女子たちは上様の寵愛を受けようと、着飾って「お鈴廊下」に勢揃いする。
ここで気になったのは、登場人物たちの表情だ。
明るかったのに嫌がらせのために涙目になってる倫子以外は、やたら無表情なのだ。ツンツンと冷たい顔の松島、大きな目を細めながら倫子を監視するお知保(森川葵)、「悪人にはいずれ天罰が」と家重の死を予言するようなことをつぶやいた田沼意次(安田顕)、中でも一番の無表情が、家治だ。重臣たちと政治の話をしても無表情、華美すぎる大奥女中の解雇を命じたときも無表情、倫子が幼なじみの公家男子に書いた手紙をびりびりしたときも無表情。「無表情将軍」という新路線!?
いやいや、実はこれこそが、この「大奥」が目指す「大奥史上、もっとも切なくて美しいラブストーリー」の鍵なのかも。いろんなものが渦巻く大奥で、うっかりニコニコ、ラブラブになったら危険ですから!
新作では平成版「大奥」で総取締瀧山などシリーズの顔ともなった浅野ゆう子がナレーションを担当。平成版で人気になったおしゃべりなスリーアミーゴーズも新メンバーで復活した。伝統を感じさせつつ、どんな新展開が見られるか。楽しみだ。
文/ペリー荻野
「大奥」 放送情報
フジテレビ
毎週木曜 後10:00~10:54