座右の銘を聞かれるたびに「公私混同」と即答している私にとって、「大奥2」ガイドブックは、まさにぴったりの仕事だった。Season1で八代将軍・徳川吉宗(冨永愛)が颯爽と登場した瞬間から、このドラマに魅了された私は仕事依頼のメールに「喜んで!」と返信した。30年以上、時代劇の仕事をしているが、四文字でお引き受けしたのは、初めてである。
取材を始めたのは、まだ絶賛撮影中で、キャスト・スタッフどなたの記憶も鮮明なのは、とても助かった。取材を通じて「発見」したことも多い。たとえば、瀧山役の古川雄大さんには、「あまり語り過ぎないところも瀧山の魅力」と言われた。確かに瀧山は、幕末編で、家定の将軍就任前から大奥に仕え、大奥の終幕まですべての場面の目撃者となる。虐待を受けた家定はじめ、志半ばで翼が折れた阿部正弘、家定を失う胤篤、心優しき家茂、孤独だった和宮、みんなの悲しみを知りつつも、瀧山は大奥を少しでも居心地のいい場所、安心できる場所にしようと尽くす。あの名セリフ「どうぞ、この身を請け出してくださりませ」、「我らが大奥だ!!」や死を前にした正弘との会話も含めて、くどくどと語らないからこそ、瀧山が心の内をチラ見せた場面は心に残るんだな。古川さんの言葉で、気づかせてもらえた。
考証の先生方のご苦労も、面白話のように聞かせていただいたが、本当に大変だったとよくわかった。男の花魁はどんな姿なのか、といった正解のないことにていねいに向き合った先生方には頭が下がる。そして、ドラマの中で右筆の村瀬らが書き続けた「没日録」を画面用に実際に毛筆で書き、「医療編」で黒塗りされて見えなくなる下の文言までもしっかりと書いた“リアル村瀬”が、時代考証担当の大石学先生だったと判明したのはうれしかった。
こんなネタをぎゅっと詰め込んでガイドブックはできあがった。ぜひ、手に取って自分だけの「発見」をしてください。
筆・ペリー荻野