地上波とは一味違うWOWOW製作のオリジナルドラマ「ドラマW」が2003年に誕生して20年。単発ドラマからはじまって、2008年には連続ドラマWが開始、近年は、連続ドラマW-30など短編枠も人気です。ドラマのジャンルも、ミステリー、社会派サスペンスものからコメディ、時代劇まで幅広く、年々、ますますジャンルレスになって、大人も若者も楽しめるハイクオリティなドラマだらけ。ドラマに詳しい4人が、もう一度見たい過去の名作たちを振り返りながら、これからの期待も含めて熱く語り合います。
■座談会参加者
木俣冬(ライター、ノベライズ作家)
ペリー荻野(コラムニスト、時代劇研究家)
綿貫大介(編集者、ライター、テレビっ子)
武内朗(東京ニュース通信社・TVガイド元編集長)
原作、脚本、監督、俳優、題材、どれをとっても魅力的!
武内朗(以下武内)「司会進行を務める武内です。本日は、ドラマWに代表される2時間ドラマ、60分の連続ドラマW、近年意欲的に制作されている30分の連続ドラマW-30の3つに分けて、おすすめ作品を語り合っていただきます」
木俣冬(以下木俣)「私はライターとしてテレビドラマの取材をしはじめたのが、ドラマW が誕生した頃とほぼ同じになります。第2作『ご近所探偵TOMOE』(2003年)がWOWOWドラマの初取材でした。その後、『ふたがしら』(15年)では京都の撮影所に密着し公式サイトの記事を書きました」
ペリー荻野(以下ペリー)「私は時代劇が好きなので、いま話に出た『ふたがしら』も楽しんで見ていました。『空飛ぶタイヤ』(09年)が平成21年日本民間放送連盟賞の番組部門テレビドラマ番組で最優秀賞を獲ったとき、地上波ではできない問題作がいよいよ見られるようになったなあと感慨深かったことがいまだに強く印象に残っています」
綿貫大介(以下綿貫)「WOWOWドラマでは、近年の『フェンス』(23年)が本当に好きで、台本を読んだ時点で傑作だと確信し、いろいろな媒体で取材をしました。さらに最近ますます意欲作が増えている印象があるので、いろいろお話しできたらと思います」
武内「まず、私のほうから、WOWOWドラマの流れを簡単に説明させていただきます。90年代の地上波テレビドラマは非常に勢いがあって、多くの視聴者に支持されました。ひとつのピークだったと思います。エンタメ業界ではバブルが遅れて来ていて、そろそろ勢いが一段落してきたのが2003年頃。ここでWOWOW製作のオリジナルドラマ・ドラマWが登場しました。初期は単発枠で、大人の鑑賞に耐えうる劇場映画のような作品を目指していたかと推察します。地上波ではなかなか見られないその傾向が、一部で注目を集めていたなかで、大きな契機となったのは、2008年。連続ドラマWがはじまり、作品傾向も変わってきました。また制作本数も年間10本以上と、地上波に追随する勢いを感じました。近年では連続ドラマW-30という30分枠ができ、非常に挑戦的な作品も多くなってきています。まず、皆さんのWOWOWドラマの印象をお話しください」
木俣「劇場用映画のような作品を目指していたものもあるということで、実際に劇場公開された作品もありますが、2000年代に、映画とテレビドラマの中間みたいなところで楽しめるものが出てきたという気がしました。なんといっても、優れた原作ものを次々作っていて、これだけ原作権がとれるのはすごいですよね」
武内「軒並み、原作権を落としている気がしますよね」
木俣「WOWOWなら安心だったのでしょうかね」
武内「作家のかたも安心して原作を託せると。宮部みゆきさん原作で、劇場公開もされた大林宣彦監督の『理由』(04年)は、たくさんの登場人物が並列で出てきて、映像化するのは大変と思ったのですが、まさに、WOWOWでなければできなかったものと思います」
木俣「池井戸潤さんの作品も早くからドラマ化されて。地上波でもドラマ化されていきますが、まずWOWOWなんですよね(09年『空飛ぶタイヤ』、10年NHK『鉄の骨』、13年TBS『半沢直樹』と続いていく)。そして、徐々にオリジナルにも挑戦してきているという感じですよね」
ペリー「初期は、監督の名前にびっくりします。市川崑監督や久世光彦さんなど、70年代からドラマを見ている世代からするとすごいな!と思ったし、シナリオライターも錚々たる方々が参加していて。原作強い、脚本強い、監督強い、三大強いドラマですよね。徐々にWOWOWカラーが出てきて、初期の流れを汲みつつ遊び心が出てきて、幅がどんどん広がっていったと感じます」
武内「山田洋次監督が書いて、堀川とんこうさんが撮った『祖国』(『戦後60年特別企画 祖国』、05年)など、映画界の巨匠が非常にたくさんの作品を残しています。ラインナップが自由っていうか――」
ペリー「そうそう、強さがあったからこそ、自由にできたと思います」
綿貫「僕はドラマWがはじまったばかりの頃は、家でWOWOWを見られる環境になくて、良作と言われるものはTSUTAYAで借りていました。気軽に見られる地上波の作品に対して、WOWOWは重厚で社会派な作品を量産している。そこに明確な差別化を感じました。ただ、当時は、僕の世代(当時10代)はターゲットじゃないなと思っていたんですね。ホモソーシャルな世界を描く大企業ものなど、40、50代のマジョリティ男性好みの作品が多いという印象がありました」
武内「自分は狙われてない、と」
綿貫「狙われてないなあと(笑)。でも、近年、バラエティに富み始めたのと、女性が主役の作品なども増えて、ジャンルが細分化してきて、どんどん面白くなっていると思います」
異色のコメディや現代的な時代劇
意欲作が揃った単発ドラマ
武内「2時間の単発ドラマで、記憶に残る作品は?」
木俣「『大空港2013』(13年)は三谷幸喜さんらしいシチュエーションコメディ。三谷さんは連続ドラマも面白いですが、演劇を主としてやられているかたなので、2時間くらいの、転がっていく作品は真骨頂というか。2時間ものなら映画もありますが、WOWOWという場で軽やかな2時間ものをやってくれて、『待ってました!』という感じでした」
武内「DVDで見た人も多そうですね」
綿貫「全編カメラを止めずに最後まで撮り続けるワンシーン・ワンカットという技法で撮影されていることを思うと、よりすごさを感じます。いったい何を見せられているんだろうと驚いてしまいました。これは、人におすすめしたくなります」
武内「三谷さんはこの前に『short cut』(11年)という作品でも全編ワンシーン・ワンカットをやっていますね」
ペリー「『short cut』は中井貴一さんと鈴木京香さんのふたりが延々喧嘩している異色作。あれがあったからこそ『大空港2013』があったのでしょうね」
綿貫「僕は、マニアックなところでいうと、『稲垣家の喪主』(17年)が好きです」
武内「WOWOWシナリオ大賞の受賞作をドラマ化した作品ですよね」
綿貫「小山ゴロさんの脚本が斬新だったし、子どもが喪主というテーマも面白かったです。主人公の子どもが叔父と叔母の喪主を務めないといけないんじゃないかという義務感に苛まれる話で、叔父を森山未來さん、叔母を広末涼子さんが演じています。あらためて見ると広末さんの魅力を存分に味わえます。バカリズムさんの喪主挨拶が流れるエンドロールまで見逃せない作りで、意欲的でした」
ペリー「私は京極夏彦先生原作で、堤幸彦監督の『巷説百物語』(05年、06年)。これが実写になるんだって驚きました。笑わすところもあり、ひたひたと迫ってくるような怖さもちょっとあり。楽しく見られる単発作品です」
木俣「主人公は渡部篤郎さん。1999年に地上波ドラマ『ケイゾク』(TBS)で堤監督と渡部さんが組んで、それが最高だったんですけど、そのふたりが再び組んだという。京都の撮影所に取材に行ったら、現場の雰囲気もすごく良かったです。最近、『巷説〜』以来、渡部さんが堤作品に出演されたことが話題になりましたが(『ノッキンオン・ロックドドア』、23年/テレビ朝日)たぶん、渡部さんは堤さんの世界にとても合っているんだなと思います」
武内「『ケイゾク』から、堤さんは大人にも通用するドラマを作っていましたね」
木俣「大人向けの、ちょっとクールなミステリー。映像も凝っていてアートぽい感じを、90年代に堤さんが地上波で切り拓いて。それがWOWOWに移植され、いろんなクリエイターのかたたちによって、成熟していったという印象があります」
綿貫「京極先生ファンがどう思うか分からないですが、堤監督ファンとしては楽しめる。時代劇でも現代的なテンポ感で、見やすかったです」
ペリー「あんまり時代劇時代劇してないよね」
踏み込んだテーマや俳優の個性が光るWOWOWならではの連続ドラマ
武内「続いて60分枠にいきたいと思います。連続ドラマW は2008年、井上由美子さんのオリジナル脚本作『パンドラ』ではじまりました。そして、『空飛ぶタイヤ』など、地上波ではスポンサーとの関係もあって扱いづらい作品もドラマ化されました。いまも連続ドラマWは精力的に作られています」
綿貫「個人的マストは『フェンス』(23年)です。沖縄のことを知りたい人はまず、これを見て!とおすすめしたい。本当に大傑作だと思います。地上波では放送できない、ガイドブックには載らない沖縄の現状を“全部乗せでやるぞ“という気合いはもちろんですけど、たくさん調べたことをドキュメンタリーでなく、エンターテインメントとしてやったことがすばらしい。演者のかたもしっかりテーマを背負われていると感じました」
武内「脚本家の野木亜紀子さんも力を入れてアピールしていましたね」
綿貫「脚本家でいうともう1作、岡田惠和さん脚本で有村架純さんが主演した『そして、生きる』(19年)という作品もとても好きです。近年、地上波の岡田作品は見ていて癒やされるものが多いと思うのですが、これは、震災が題材で、見ていてつらいこともあえて描いているように思いました。WOWOWだからこそ、踏み込んだものになったんじゃないかな。『フェンス』も『そして、生きる』も、見たら傷つく人もいるかもしれない。それでも諸手を挙げておすすめしたいのは、ちゃんと気づきがあるからです」
武内「なるほど、傷が気づきにつながる」
綿貫「気づくことによって、傷はつくけど、学びにもなるんですよね。それって今後生きていくときの武器に絶対になっていく。知らないより知っていたほうがいいっていうことを、ちゃんとエンタメでやってくれていると思います」
武内「岡田さんはWOWOWでも多く書いていますが、たぶん地上波とは、スタンスを変えているような気がしますよね」
ペリー「俳優の印象も、WOWOWだと違うことがあります。『空飛ぶタイヤ』の仲村トオルさんは、『あぶない刑事』(86年~/日本テレビ)のイメージしかなかったから、こんなお芝居されるんだ!と衝撃を受けたんですよ。『仲村さん、申し訳ありませんでした!』と頭を下げたくなるくらい(笑)。あと、もうおひと方、すみませんでした、と謝罪したいのは、吉川晃司さん。浅田次郎さん原作の『黒書院の六兵衛』(18年)に出演されました。江戸城が無血開城したとき、謎の武士・六兵衛が居座ってしまう。この口を利かない六兵衛を吉川さんが演じていてかっこいいんです」
武内「吉川さんはこの数年、地上波でも大活躍されて。これまでのイメージを変えていかれていますよね。『空飛ぶタイヤ』が放送された2009年前後は、企業の隠蔽やコンプライアンスが注目されてきた時期。2011年は震災があって、時代が反映されたドラマが作られているようですね」
木俣「連続ドラマWは作品がいっぱいあり過ぎて、選べなくて困っていますが(笑)、『プラージュ〜訳ありばかりのシェアハウス〜』(17年)を挙げたい。星野源さんに当時、取材をしたとき、『今まで演じた人史上、最もダメな人』とおっしゃっていて(月刊スカパー!17年8月号より)。2017年時点ですけども」
武内「『逃げ恥』(『逃げるは恥だが役に立つ』、16年/TBS)の次の年ですね」
木俣「『逃げ恥』で星野さんが演じられたのは、風変わりではありますが、生真面目で信頼のおける、優秀な人物という役。そのイメージが一般的になったと思うんです。でも、星野さんは大人計画の劇団員で、そこでのお芝居ではけっこう、大丈夫?っていうような役をやっていた。WOWOWは、俳優の地上波の活動と、それ以外の活動の融合みたいなものを見せてくれるところもある気がします。WOWOWドラマは、職業もの、企業もの、あるいは刑事ものと、確たる肩書をもった人物が主人公のドラマが多いですが、これは違う。訳ありな人たちなんです」
武内「初期は40、50代の働く男性を対象にしていたがゆえに、企業ドラマが多かったですね。最近は、その縛りがゆるくなって、より自由になっている気がします」
木俣「社会の片隅に生きる人たち、引きこもりや、貧困層を主人公にした作品も増えていて、『プラージュ』はそのなかで見やすい一作かと思います。スガシカオさんも出ていて、星野さんとのミュージシャン俳優対決(?)が見られます」
武内「連続ドラマ枠は、非常に力の入った作品が多く、僕は『華麗なる一族』(21年)、『ソロモンの偽証』(21年)など、他局のドラマや映画と比べながら見たりするのが楽しみのひとつになっていました。『コールドケース』シリーズ(16年〜)はアメリカのドラマの翻案で、アメリカドラマのスタイルを踏襲していて興味深いです」
ペリー「事件をすごく突き詰めている一方で、登場人物の背景――人間ドラマに比重があるところがすごく面白い。女性刑事の妹との関わりや母親の問題など身近なものが描かれて、身につまされるんですよね。出てくる刑事たち、みんなに傷があって」
武内「犯人を追う側も無傷ではいられないようになっているんですね」
綿貫「ほかにおすすめしたいのは、『夢を与える』(15年)。小松菜奈さん演じるヒロインがキッズモデルからタレントになって、スキャンダルに巻き込まれる話で、テレビ業界や芸能界の裏側も描かれていて面白いです。母親役を演じる菊地凛子さんの演技も痺れますし、菊地さんが歌っているエンディングの曲もすてきなんですよ」
30分枠だからこそできるチャレンジングな作品
武内「では最後、30分枠を。初期にミッドナイトドラマという枠もあったのですが、2020、21年あたりに急激に30分ものが増えてきます」
木俣「『モザイクジャパン』(14年)の脚本の坂元裕二さんは90年代からトレンディドラマの旗手として人気でしたが、2010年代も、『カルテット』(17年/TBS)などで若者にすごく支持されています。その『カルテット』が好きなかたが『モザイクジャパン』を見たらびっくりしてしまうかもしれない。出演している高橋一生さんにも、こんな役を演じるの?と驚くところもあると思います。アダルトビデオの会社の話で、すごく露悪的ですが、坂元さんや高橋さんのもつ哲学性や詩的な面がちゃんと感じられるところが、坂元さんならではと思えます」
武内「地上波で活躍している人がWOWOWならできることに挑戦している感じがしますよね」
木俣「思い切ってここまで振り切ってみた意欲作。WOWOWはいろんなことをやっていますが、これはかなり異色ではないかと思います。チャレンジングな企画だなあと」
ペリー「異色といえば『文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』(21年)。『蜘蛛の糸』の舞台を少年院にしてやってみる(タイトル『クモの糸』)とか、文芸作品を新解釈して、映像化しちゃいました、という面白さがありました」
武内「もともとあった題材を、ドラマにして遊んでみる、想像力の楽しさ。しかも、30分だから、短い演目を少しずつ見られる寄席感覚っていうんですか。そういう楽しみがあります」
ペリー「『にんげんこわい』(22年)という落語を題材にしたものも面白かったですね」
武内「30分なので、気軽に見られるし、制作サイドも気軽にチャレンジできる良さがありますね」
綿貫「最近、作品のバリエーションがとくに増えたなと思っていて。映画『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(19年)を撮った長久允監督が、『オレは死んじまったゼ!』(23年)と『FM999 999WOMEN’S SONGS』(21年)と2作品つくられているのですが、ともにジェンダー感覚に優れた作品です。『オレは〜』は死後の世界を描いていますが、幽霊のなかにも多様性があって、LGBTQ+の幽霊が出てくる。それも何の前提もなく当たり前に出てくるところがいいですね。一方、“女って何?”という問いを投げかける『FM999~』はミュージカル調のつくりで。各話、歌い手としてゲスト出演するかたが豪華なんです。第1話は宮沢りえさん。研ナオコさんの登場する回も、すごく良かったです」
武内「いろいろな見方や楽しみ方がありますね」
綿貫「はい。もう1作、『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』(21年)は、BLが好きなオタクの主人公を、松本穂香さんが演じていて。それがすごくハマっています。BLは女性向けと思っている年配の男性がたも、これを見たら価値観をアップデートできるんじゃないかと思います(笑)。あと、もう1作、ショートドラマ『今どきの若いモンは』(22年)は、反町隆史さんが上司役のお仕事コメディ。いわゆる若者に文句を言う頑固上司かと思ったら、ちゃんと若者を評価する理想的な上司なんです。むしろ中間管理職のひとが、部下たちとのコミュニケーションを学ぶために見てもいいんじゃないかと」
WOWOWに期待するのは様々な層が楽しめる新感覚の作品
武内「話は尽きませんが、そろそろ締めの時間です。まだまだ紹介しきれなかった作品と、これからのWOWOWに期待することをお願いします」
木俣「30分もので『撮休』シリーズ(20年〜)がお気に入りなんです。フィクションのようなノンフィクションのような、俳優自身が撮休(撮影が休みの日)に何をしているか、俳優への先入観をうまいこと逆手にとったような作りになっていて。有村架純さん、竹内涼真さん、神木隆之介さん、杉咲花さんと、これまで4作が作られていますが、どんどんいろんな俳優さんでやってほしい。WOWOWさんに期待するのは、大人と若者が仲良く見られる楽しいものを作ってほしいです。いろいろな制約がある時代、WOWOWにしか希望がない。というのは言い過ぎかもしれませんが、いろんなことにチャレンジするドラマは、作家さんも俳優さんにも刺激になっていると思います」
ペリー「個人的に時代劇が大好きなんですが、WOWOWがまさかやると思っていなかったのに、『ふたがしら』などのスピード感のあるものをやってくれて。『大江戸グレートジャーニー〜ザ・お伊勢参り〜』(20年)というユニークな企画もありました。WOWOWの感覚で作った時代劇は本当にスピード感があって、監督が存分に想像力を発揮できる場だと思うんです。今年は時代小説が2作同時に直木賞を獲ったくらい勢いがありますから、ぜひとも、良い原作と出会っていただき、この監督とこのキャストでやったら面白そうという、WOWOWならではの感覚で新しいものを見せてもらえたらと思います」
綿貫「『ながたんと青と-いちかの料理帖-』(23年)は、朝ドラをWOWOWのクオリティでやってくれていると思ったんです。新しい俳優も起用しながら、古典的なテーマをやっていて。WOWOWでも、朝ドラのような毎日見る帯コンテンツを発信したら面白いんじゃないかなと感じました。広告主の枷がないだけで、こんなにも多様なすばらしいドラマが生まれるのかと、WOWOWを見ていて感じています。さらに、尺も厳密に決められてなくて、その自由度もいい。とても良い条件で作品づくりができていますよね。今後配信も含めいろんなことをやりやすくなると思うので、ますます挑戦していただきたいです」
武内「さて、ここまで駆け足で振り返ってきました。約30年前にWOWOWができたとき、有料テレビは珍しく、ハードルも高かったですが、いまは有料で作品を見るハードルはだいぶ下がって、若い人たちにとってもふつうのことになっているかもしれません。そういう意味では、WOWOWをいろいろな層のかたが見てくれるようになっていくと思います。後発のネットドラマはWOWOWがこれまでやってきた道のりをそのままたどっている気もするので、これからも先頭を走って、この先の景色を見せてほしい。『MOZU』(14年)などの他局とコラボしたシリーズにも可能性を感じていて、今後も様々なコラボが生まれることを期待しています。現在、WOWOWオンデマンドで多数の作品が見られます。この記事を読んでいる皆さんも、年末年始、面白い作品をみつけてご覧になっていただければと思います」
■Profile
木俣冬(きまた・ふゆ/写真左から2人目)
ライター、インタビュアー、ノベライズ作家。主な著書に「みんなの朝ドラ」「ネットと朝ドラ」「挑戦者たち〜トップアクターズルポルタージュ」「ケイゾク、SPEC、カイドク」、ノベライズに「コンフィデンスマンJ P」、「連続テレビ小説 なつぞら」「大河ドラマ どうする家康」など。2015年から毎日、朝ドラレビューを書き続けている。
ペリー荻野(ぺりー・おぎの/写真右から2人目)
コラムニスト、時代劇研究家。時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「ちょんまげ愛好女子部」を立ち上げるなど、多くの時代劇企画に携わる。主な著書に「時代劇を見れば、日本史の8割は理解できます」(山本博文氏との共著)「脚本家という仕事 ヒットドラマはこうして作られる」「テレビの荒野を歩いた人たち」など。
綿貫大介(わたぬき・だいすけ/写真右端)
編集者、ライター、テレビっ子。エンタメを中心としたカルチャー分野で編集・執筆を行いながら、2016年に編集長としてインディペンデントカルチャーマガジン「EMOTIONAL LOVE」を創刊。主な著書に「もう一度、春の交差点で出会う」「ボクたちのドラマシリーズ」。
https://www.instagram.com/watanukinow/
武内朗(たけうち・あきら/写真左端)
東京ニュース通信社「TV Bros.」「TVガイド」編集長を経て、現在はコンテンツ事業局アドバイザーとして、過去の作品のリサーチ、ドラマ分析に関わるほか、TVガイドアーカイブチーム代表を務める。編著書に「平成TVクロニクル Vol.Ⅰ~Ⅲ」「プレイバックTVガイド その時、テレビは動いた」。
WOWOWオンデマンドにて配信中!
座談会で上がった作品の多くはWOWOWオンデマンドで配信中。
下記より詳細をご覧ください。
『ふたがしら』(15年)
『空飛ぶタイヤ』(09年)
『フェンス』(23年)
『理由』(04年)
『戦後60年特別企画 祖国』(05年)
『大空港2013』(13年)
『short cut』(11年)
『稲垣家の喪主』(17年)
『巷説百物語』(05年、06年)
『パンドラ』(08年)
『そして、生きる』(19年)
『黒書院の六兵衛』(18年)
『プラージュ〜訳ありばかりのシェアハウス〜』(17年)
『華麗なる一族』(21年)
『ソロモンの偽証』(21年)
『コールドケース』シリーズ(16年〜)
『夢を与える』(15年)
『モザイクジャパン』(14年)
『文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』(21年)
『にんげんこわい』(22年)
『オレは死んじまったゼ!』(23年)
『FM999 999WOMEN’S SONGS』(21年)
『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッ』(21年)
『今どきの若いモンは』(22年)
『撮休』シリーズ(20年〜)
『大江戸グレートジャーニー〜ザ・お伊勢参り〜』(20年)
『ながたんと青と-いちかの料理帖-』(23年)
『MOZU』シリーズ(14年)
文/木俣冬 撮影/尾崎篤志