違法タイムトラベラーを取り締まることになった現代人の廻(吉岡里帆)と、未来人の翔(永山瑛太)。元恋人同士だった二人は、さまざまな出来事を解決する中で再び思い合い、恋の逃避行を図るも連行されてしまう……。廻と翔の未来はどうなるのか。話題のSFラブコメディードラマ「時をかけるな、恋人たち」最終回を前に、主演・吉岡里帆の作品に対する思い、共演者とのエピソード、10周年を迎えた女優業について聞いた。
瑛太さんと芝居を重ねていった結果、アドリブが多発しました(笑)
――SFラブコメディーという、これまでにないジャンルの脚本に、個性的な俳優の方々がキャスティングされ、“濃厚”な撮影現場になったのではないでしょうか。
「(永山)瑛太さんからは、とにかく刺激を受けましたし、レギュラー出演の俳優陣も、ゲスト俳優の方々もみなさん個性的で、素敵なお芝居をされる方ばかりでした。この作品は切ない部分もあるんですが、笑いも常に混在していて。そのメリハリというか、笑いと切なさのバランスは、みなさんが絶妙なところに着地させてくださっていました」
――演劇のジャンルの中でもコメディーが一番難しいという話を耳にしたことがあります。今作はアドリブが多発し、しかも採用されていると伺いました。
「アドリブ炸裂の現場でした(笑)。たとえば6話の、廻がお母さんを足止めするために翔へ『ナンパして来て!』と指示を出すシーンは、瑛太さんが『え、どうしたらいいの? ジローラモでいい?』とアドリブを入れたので、私も『ジローラモでいいよ!』と返したんです(笑)。でも、私たちのアドリブはその場で突発的に発生したものではなくて、二人で日々重ねてきた芝居から出てくるものが多いんですよね。そういえば、あの話のときアレをしていたから、ここでコレできるよね、みたいに」
(※4話で翔が令和のファッションを勉強したのが、パンツェッタ・ジローラモ氏がモデルを務めていた雑誌「LEON」だった)
――ドラママニアには堪らないお話ですね。もう一度見返したくなります!
「演じているこちらも本当に楽しかったです。そういうことができるのって、やっぱり上田誠さんの書く脚本が、演者の個性を出しやすかったり、上田さんが私達にどうしたいか逐一聞いてくださる方だったからだと思います。例えば、未来人のキスはおでことおでこをくっつけるというのは瑛太さんが現場で思いついて採用されたものですし、私は、大人なのに男女が手を繋いで全速力で走るというのに昔から憧れていて(笑)、時を超えるというテーマにも合っていていいなと思い、提案してみました」
――脚本家の上田誠さん、とても柔軟な方なんですね。
「顔合わせの段階から『どういう時にキュンとしますか』とか、『どんなシーンを演じてみたいですか』とか、いろいろと聞いてくださいました。演者だけでなく、製作陣の話も聞いてくださる方なので、現場も自然とさまざまな部署のやってみたいこと、理想とする形を話し合って作っていくスタイルになった気がします。プロデューサーの岡光寛子さんも自分の考えだけを押し付けないというか、やっぱり寛容ですごく柔軟な方で。あまりに真剣に話を聞いてくれて取り入れようと検討してくださるので、的外れなことを言わないように、逆に責任感が要った場面もありましたが(笑)、すごく楽しかったです」
――ちなみにですが、地下にあるパトロール基地内や、そこで着られている制服は、未来のはずなのにレトロでかわいいですよね。どういう経緯でそうなったのでしょうか。
「あれは、製作の方々がレトロフューチャーを愛していて。美術の後藤レイコさんが古いものをたくさん集めてレトロポップな世界観を作ってくださいました。そもそも上田さんがレトロフューチャーを前提に脚本を書いていらっしゃるので、オープニングでも昔懐かしいテイストのアニメーションが使われています。すごくかわいいですよね!」
このドラマ、最高ですよね!
――違法にタイムトラベルをした人は記憶を消されてしまうというドラマの内容にちなんんで、良い思い出で消したくない記憶はありますか?
「良いことはありすぎますね……。2018年にエランドール賞の新人賞に選出していただいたんですけど、当時の私はいろんなことに自信を持てない時期で。その年に出演したドラマ『ごめん、愛してる』の脚本の浅野妙子さんがプレゼンターとして花束を渡してくださったんですけど、『あなたは充分に輝いています。あなたのこれからを本当に楽しみにしています。だから、そんな風に自信がないように振る舞わず、応援してくれている人がいるから、自信を持って』と言ってくださって。その言葉に本当に救われました。嬉しかったですし、忘れられないです。こういう方を絶対に裏切らない仕事の仕方をしようと思いました」
――今更ではありますが、今作では主演を演じられていました。現場に入る上で意気込みや覚悟はあったのでしょうか。
「作中で私が演じた廻は、普通の生活をしているOLなんですよね。そんな普通の人が、突然未来から来た人に告白されて、しかもその人と昔恋に落ちていたと言われるところから始まるお話なので、そのファンタジーに違和感のない普通っぽさと“受け”の瞬発力を意識したというか……。みなさんがぶつけてくる『未来人って、こうでしょ!?』というセリフとお芝居に、『いや、おかしいでしょ』、『何やってるんですか』と、ものすごく正当に突っ込み続けるというか(笑)。周囲から影響を受けながらも、“普通”をみんなに説く生徒会長っぽさを楽しむことを大事にしました。撮影現場では、ゲストに来てくださった方含めて、キャスト全員とちゃんと会話をして、このドラマって最高だよねって、伝えていました」
楽しくて楽しくて、幸せな毎日を過ごさせてもらった作品です
――もしタイムトラベルができるとしたら、いつ、何をしに行きたいですか?
「2018年に発売したファースト写真集の撮影で、オーストラリアを横断したんですけど、あの旅の最中はハプニングも面白いこともいろんなことがたくさん起きて(笑)。あの時に戻って、記録に残したいですね。私を撮ったメイキングはあると思うんですけど、私が見たものを残したいんです。そういう意味で、もしタイムトラベルできるならデビューしてからの日々の、ちょっとしたことをちゃんと録っておきたいです。その時は印象に残らなかったことでも、今見たらすごく面白いと思うし、当時は普通にしていたことが、今思えば一生懸命だったなと思えたり、そんなことで悩んでいたのか、みたいなこともたくさんあると思うんですよね」
――いよいよ明日、ドラマは最終回を迎えます。特に思い出に残っているシーンはありますか?
「7話で廻と翔がミッションコンプリートして、嬉しくなって二人で相撲をするシーンがあるんですけど、そこが大好きですね。台本のト書きには無かったんですが、お芝居をしていたら自然と瑛太さんと相撲になったんですよ。あの回は子供時代に戻って初恋を助けたりしながら、何度もタイムボードを使ってつじつま合わせをして、本当にややこしくて。ようやく全部終わって『イエーイ!』 ってハイタッチした後に、そのまま『ドスコイドスコイ、うりゃー!』となるんですけど、それがもう楽しくて楽しくて! やっていて、なんだこのシーンとも思ったんですけど(笑)、完成したものを見たら、やっぱりこのドラマでしかできない動きをしていて、すごいなぁと。さまざまな場面で話をしてきた演者、スタッフと、受け入れてくれる脚本家、監督、プロデューサーがいなければ放送に乗らなかったシーンだと思うんです」
――とても素敵な人々と作品に出会えたんですね。
「このドラマ、30分なのもいいですよね。描き過ぎないから想像力も膨らむし、エンドロールでエピローグを見せる構成も洒落ていて好きです。あそこに救いがあるというか、全キャラクターに愛を注ぐ上田さんの脚本だからこその作りだなと思いました。私も演じていて心から楽しくて、皆さんにお届けするのが心から楽しみで、幸せな毎日を過ごさせてもらった作品です」
■Profile
吉岡里帆(よしおか・りほ)
1993年1月15日生まれ。京都府出身。映画「怪物の木こり」が公開中。おもな近作にドラマ「ガンニバル」、「しずかちゃんとパパ」、映画「ハケンアニメ!」、「アイスクリームフィーバー」、「ゆとりですがなにか インターナショナル」など。
Instagram @riho_yoshioka
<番組情報>
「時をかけるな、恋人たち」(最終回)
カンテレ/フジテレビ系
12/19(火)後11:00~
※これまでの放送回はTVer、FODで配信中
<書籍情報>
「時をかけるな、恋人たち」公式シナリオブック
発売日:2023年12月25日(月)※一部、発売日が異なる地域がございます
定価:2,200円
発行:東京ニュース通信社
取材・文/歌田美結