9月30日(土)で最終回を迎える「湯遊ワンダーランド」。女性サウナの金字塔と言われた原作を映像化した作品も残すところあと1回です。
まだまだ「きつこ」と一緒にドラマの世界にひたりたい! そんなあなたに、本日発売の「ドラマ『湯遊ワンダーランド』公式サウナガイド きつことととのう初めてのサウナ」より、過酷な撮影の裏側をたっぷり語ったスタッフ座談会を特別にお届け。プロデューサーの石田雄三さん、佐々木梢さん、監督の熊坂出さん、脚本の舘そらみさんらが「脳を揺らせ」を合言葉に作りたかったものとは?
熱い中で意識が朦朧…サウナでの撮影は、 近年稀に見る大変さでした(熊坂)
——まずはドラマの制作のきっかけを教えてください。
石田「前回の土曜深夜枠はダブル不倫やセックスレスを描いた作品だったので、今回はまったく違った趣味系の作品を作りたいと考えていたら、佐々木さんから、まんきつ先生の原作をご提案いただいて。女性メインのサウナドラマは見たことがないなと思って。ドラマ化したら面白いんじゃないかと思ったのがきっかけですね」
佐々木「私は上司から、『こんな面白い原作があるよ』って言われていたんです」
石田「僕も『湯遊ワンダーランド』が面白いことは知っていたんですけど、実写化には向いていない作品かなと思っていて。でも、『我々みたいな局がやるべき挑戦的なものかな?』と思いまして(笑)。女性のリアルを描くのが非常にお上手な舘さんに脚本を依頼させていただいたんです」
舘「私もサウナに行くんですけど、サウナを意味のあるものとして描くためには、‟サウナがあるから日常が頑張れる”っていう塩梅が大事だなと。それで『こじらせまくっている主人公の理想と現実を大事にしようね』ってみなさんと話していたんですよね。監督の熊坂さんからは『悪ノリ大歓迎だから自由に書いて』と言われたので、恐れずドンドン悪ノリさせてもらいました」
熊坂「いやもう、そらみさんの脚本が素晴らしくて。みんなで悪ノリしたけど、撮影自体は近年稀に見る大変さでした。って監督も務めた佐々木さんがめちゃくちゃ頷いてます(笑)」
佐々木「そうですよね~」
熊坂「撮影用にサウナの温度は低くするけど、熱いことは熱いから機材トラブルは発生するし、熱い中で意識が朦朧としてくるし…。(主演の)ともさかりえさんは本当に大変だったと思います」
裏テーマは‟悩んでいる人がちょっとしたきっかけで気楽になれる” (石田)
——思い出深かったシーンを聞かせてください。
石田「女性サウナのリアルを描くということで、モザイクの掛け方にはこだわりました。女性は隠すところが多くなるので、それが女性サウナドラマができてこなかったひとつの理由だと思うんですが、そこに我々は挑戦しようと。熊坂監督を中心に、エロくならずにバカバカしく、と意見を出し合いながらイラストでやらせてもらったら、視聴者の方から非常に好印象に捉えてもらえた。ドラマの色になって面白かったし、いいシーンになったと思っています。監督にはご苦労をおかけしましたが」
熊坂「いやいや」
石田「それに、ともさかさんのコメディエンヌっぷりが本当に面白い。まさに‟きつこ”でしたよね。第1話のラストで、きつこが『生きるぜ』って言うところからのエンディングの入り方とか、何回見てもいい。そらみさんの脚本のときから好きだったんですが、映像になってさらに良くなった。単純に『サウナ気持ちいい』じゃなく、悩んでいる人がちょっとしたきっかけで、生きることに気楽になれるというのがこのドラマの裏テーマでもあると思うので」
事前にサウナに行ってリサーチ。その体験が 大好きな第4話のアカスリのシーンに(佐々木)
佐々木「私は第4話の『ルビーパレス』のアカスリのシーンがすごく好きです。脚本を作るにあたって、そらみさんも私も実際にサウナに行って、どういうお客さんがいるかリサーチしたんです。それで『ルビーパレス』で私が体験したことをそらみさんに報告したんです、『施術師さんの胸が当たる』って。ドラマだとちょっと下品かなと思ったんですけど、ともさかさんと、藤田記子さんという役者さんの演技と熊坂監督の演出ですごく面白くなって。ルビーパレスで実際に働いている韓国の方々に脇を固めていただきました」
——「ルビーパレス」は、ともさかさんも楽しかったとおっしゃっていました。
佐々木「第4話できつこが外を歩くシーンを撮っているとき、たまたま出勤中のルビーパレスのおばちゃんと会って、『みんな~』みたいに声をかけてくれて。撮影を通じておばちゃんたちと親密さが生まれたのも、すごく良かったですね」
グッともくるけど、「なんじゃこりゃ!」が両立している、 理想的な人間の描き方(舘)
舘「モノを書く側の人間としては、普段、出来上がった作品を観て、『ここはこうだったんだけどなぁ』みたいな箇所もあったりするんですよ。でも今回は、毎回毎回『めっちゃ面白い!』って感動しかない。きつこの人間としての強さと弱さが入り混じったコアな部分が出ている瞬間と、荒唐無稽な瞬間が往復する感じが最高に好きで。第2話で、水風呂に入れなくて泣きそうになっていたきつこが、そこから一生懸命サウナに入って、最終的には空想の世界で馬の被り物をしたおばちゃんたちが踊っているっていう(笑)。グッともくるけど、『なんじゃこりゃ!』が両立している。それって理想的な人間の描き方だなと思って。今回、『脳を揺らす作品を作りたい』っていう合言葉があったんですけど、『こういうことだよね』って。人間を愛おしく描きつつ、バカにもしつつ、弱さも抱きしめつつみたいな。そのバランスが共存しているのが最高でした」
熊坂「そう言っていただいて感謝感激です。そらみさんとまんきつ先生の親和性がすごく高いんだろうなと思いましたね。映像の良さって、やっぱり文化祭なんですよ。みんなで作っていくっていう。そらみさんの‟血が通った”脚本があって、演者さんたちの演技にも本当に救われました」
石田「そうですね。みなさん本当に素晴らしかったです。このドラマを通して、少しでも女性サウナが盛り上がればうれしいですね!」
(本稿は、ムック「ドラマ『湯遊ワンダーランド』公式サウナガイド きつことととのう初めてのサウナ」から一部を抜粋して掲載しています)
ドラマの世界観を追体験できる公式サウナガイド
大胆な演出で話題のドラマ「湯遊ワンダーランド」の公式サウナガイドは、収録裏話やロケ地サウナのほか、女性目線のおすすめサウナ満載の決定版ガイドブック。
ドラマを観て、サウナに興味を持った方、初めてサウナに行ってみたという方に、ドラマの世界観を追体験しながらサウナの奥深い魅力にたっぷり触れていただける必見の一冊です!
■主な内容
ドラマ登場サウナ全紹介/全12話ストーリー解説/スタッフ座談会/原作者まんきつ先生インタビュー/清水みさとに聞くQ&A/日本サウナ学会・加藤容崇先生コラム/女子サウナ―座談会/全国おすすめサウナ施設紹介 ほか
■商品情報
ドラマ「湯遊ワンダーランド」公式サウナガイド きつことととのう初めてのサウナ
発売日:2023年9月25日(月)
※一部、発売日が異なる地域がございます
定価:1,800円
発行:東京ニュース通信社
■Profile
石田雄作(いしだ・ゆうさく)
2009年テレビ大阪入社。営業、報道・スポーツ番組のディレクターを経て、22年コンテンツビジネス局・ドラマプロデューサーへ。プロデュース作品は「わたしの夫は―あの娘の恋人—」、「イケメン共よ メシを喰え」など。
熊坂 出(くまさか・いずる)
2008年、長編初監督作品「パークアンド ラブホテル」がベルリン国際映画祭にて日本人初の最優秀新人作品賞を受賞。主なテレビ演出作品に「liar」、「おじさんはカワイイものがお好き。」、「きみはペット」、「玉川区役所 OF THE DEAD」など。
舘そらみ(だて・そらみ)
2015年に映画「私たちのハァハァ」でゆうばり国際映画祭の観客賞などを受賞。脚本をはじめ、演劇、教育、ロボット、漫画など活動は多岐に渡る。主な脚本に映画「手」、ドラマ「来世ではちゃんとします」「サレタガワのブルー」など。
佐々木梢(ささき・こずえ) バラエティや情報番組のディレクターを経て、ドラマプロデューサーへ。これまで手がけた主な作品は、「私と夫と夫の彼氏」「俺の美女化が止まらない!?」「部長と社畜の恋はもどかしい」「私の夫は冷凍庫に眠っている」など。
「湯遊ワンダーランド」番組情報
Leminoで配信中
DVD-BOX が2024年2月2日発売決定!
取材・文/幸野敦子