10/25(月)からの第24週が最終週となる、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜午前8:00ほか)。
百音と菅波先生の関係はどうなるの? あの人たちの決意・決断の行方は? など、結末が気になっている方も多いはず。
そこで最終週を迎えるにあたり、「おかえりモネ」制作統括・吉永証さんにドラマのこれまでと最終週のみどころをお聞きしました!

――2019年の春にドラマの構想がスタートしてから約2年半、まずは率直にどう感じていらっしゃいますか?
「これまでを振り返って、『早かったな』と思いましたね。取材やリサーチを進め、撮影自体は昨年9月末くらいからでした。特に撮影が始まってから今日に至るまでが、あっという間だったなぁっていうのが実感です」
――清原果耶さん演じる主人公・永浦百音(愛称:モネ)、宮城県気仙沼や登米、気象予報士など、ドラマのテーマ設定はどこから作られていったのでしょうか。
「まず、放送が2021年・春と予定されていたので、“東日本大震災があってから10年という時期に始まる朝ドラ”と考えたときに、やはり東北を舞台に、というところから始まりました。
震災を背景に、宮城県を舞台にして、どのような人物・ヒロインが成長していく物語にするか。朝ドラはちょっと前の時代のものが続きましたが、私たちのチームや脚本の安達奈緒子さんとも話して、現代を舞台にしたドラマにしようと決め、そこから取材を重ねていきました」
――「あのとき、そこにいた」「そこにいなかった」という点が、このドラマの底にあるように思います。そのなかで、どのように主人公のイメージを作り上げたのでしょうか?
「私たちは東京で震災を体験していますが、津波など震災を直接には経験していません。取材をして、震災の経験やその受け止め方は本当に人によって異なる、当事者でない自分たちが震災を描くことは非常に難しい、と感じました。
そこで主人公のモネは、震災のとき故郷にいなくて津波を見ていない。そうした場合、周囲の体験やそのとき感じた自分の想いを、故郷の人たちや家族、自分のこれから進む道にどういった形で生かしていくのか……このテーマで描いていくことにしました。
自分たちが想像できることや、直接体験した方たちに寄り添うことであれば、ドラマとして描いていけるんじゃないかと考えたんです」

――こうして始まった「おかえりモネ」ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、制作は苦労されたと思います。
「準備していた一昨年はまだ発生していませんでしたが、2020年になって怪しくなり、クランクインするときは感染拡大が続いている状況でした。緊急事態宣言が出ている状態ではロケをすることが非常に難しく、いろいろと場所を変えたり、スタジオのセットでの収録にもっていったり、少し時期をずらしたり……ということが何度も繰り返されました。
長期間のドラマは最後まで撮りきることが大変だな、ということを感じましたね。ドラマはリモートで作れないので、非常に難しかったです」
――撮影を進めていくなかで、演出面において新型コロナの影響を受けたことはありましたか?
「言われて気づいたんですが、朝ドラはホームドラマという意味合いがあるので、本来は食卓で食事をするシーンが多いんです。しかし感染対策をしなくてはいけなかったので、食事シーンを撮るのは大変でしたね。時間や手間がどうしてもかかるので、台本段階で調整をしました」
――このドラマで印象的だった一つが、安達奈緒子さんによる脚本です。主人公・百音のセリフが比較的少なく、周囲の登場人物たちの言葉によって百音が描かれる、そんな印象を受けた視聴者の皆さんも少なからずいたと思います。“安達脚本”について、どのように思われていますか?
「モネ自身が先頭に立って、積極的に自分からつき進んで行動していくというよりは、モネがいることによって、いろんな人が話をし、気持ちを述べる。“媒介”という言葉を使うんですが、モネがいることによって周囲が変化する。清原さんが演じるということもあってか、安達さんはそういう立ち位置のヒロインを書かれたと思います。
安達さんが書かれるセリフって、ストレートではない部分があると思うんです。菅波先生(坂口健太郎)のモネに対する気持ちも、直接『あなたのことが好きです』じゃない。でも思いやりの言葉として自分が考えていることを伝えることで、『この人、モネのことをとても大事に思ってるんだな』っていうことが分かるんです。『実は、こういうことを思ってるから言ってるんだ』と想像して、噛みしめることによって、より伝わる点が安達さんの特徴かなと思います」
――また、「おかえりモネ」は劇中に流れる音楽も心に残ります。音楽を担当した音楽家・高木正勝さんの印象は、いかがでしょうか?
「高木さんが作る音楽は気持ちを揺さぶる加減が大きく、それでいて『おかえりモネ』の“自然との関わり”という点とも非常に相性が良いのではと思って、高木さんにお願いしました。高木さんには、モネを中心としたドラマの内容と描こうとする事柄を説明して、そこからご自身のなかで湧き上がってきたものを書いてください、と。すると高木さんもすごく考えてくださって、ご自身の人生や今の気持ちを反芻するなかで曲を書いてくださいましたね」
――録音は、どのように進行したのでしょうか?
「ドラマが進み、主人公・百音のステージが変わっていくにあたり、それぞれに合った曲が必要となり、3回ほど録音の機会を作りました。1年近くの長い期間、同じ作品のこと考えて曲を作ってくださって、高木さんは最後に『音楽人生のなかで、やりきった』とおっしゃっていました。『明日から、大工仕事でもやろうかな』なんて(笑)。でも、それだけの熱意と思いを込めて、持てる力をこのドラマにつぎ込んでくださったんだな、と感じましたね」

――では、誰もが気になる最終週は、どのように展開するのでしょうか。まずは、やはりモネと菅波先生の2人が気になります!
「最終週は、それぞれの次なる一歩への踏み出しが、怒涛のように描かれます。
まず菅波が永浦家に行き、耕治(内野聖陽)や亜哉子(鈴木京香)、龍己(藤竜也)の前で、もちろんモネもいるなかで、どういう風に自分たちのことを伝えるか。とても菅波らしく、永浦家のみんなの受け止め方もある種微笑ましい、ほっこりする部分があります。モネと菅波がどのように2人の未来を描くか、というところも、そのやりとりが面白いですよ」
――他の登場人物たちは、どのようなエンディングを迎えるのか……それについても、少しだけ教えていただけますか?
「モネと未知(蒔田彩珠)の関係は、2人の間でより心が通じ合うところが描かれます。いま未知が抱えている思いが、実はもうちょっとこういうことがあったと分かり、皆さん、ああそうだったんだ、と思われると思います。それから、モネと幼なじみのある展開や、耕治と龍己の少し変化した様子とか……、いろいろですね」

――最後に、メッセージをお願いします!
「どうやって収まるんだろう……って、視聴者の皆さんも心配していらっしゃると思います(笑)。全てがスカッと解決するわけではありませんが、ちゃんとこのドラマらしく、それぞれの幸せと希望が見つけられるようになっているので、ぜひご覧いただければと思います」
「気持ちが前向きになれる、楽しんでいただけるところがドラマの魅力。そうなっていただけるようなドラマを作りたい」と語った、吉永さん。
「おかえりモネ」らしい、登場人物にも視聴者である私たちにも寄り添ってくれるエンディング、期待しましょう!
Profile
吉永証(よしなが あかし)
1965年生まれ、神奈川県出身。1989年NHK入局後、ドラマ演出・プロデュースを手掛ける。主な制作作品に「夏目漱石の妻」「1942年のプレイボール」「トクサツガガガ」「詐欺の子」など。

TVガイドみんなドラマ編集部
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