名作ドラマの陰に、名曲あり――。
ドラマに欠かすことができないもの、その一つが音楽。
国民的大ヒットとなった主題歌や、名シーンの後ろで流れていた劇伴(げきばん=BGM)など、あの曲がドラマを観る側の気持ちをぐーっと高めてくれた……そんな経験は誰しもあるはず。
今回はミュージシャン/音楽プロデューサーのクニモンド瀧口さんに、ご自身が手掛けたドラマ「タリオ -復讐代行の2人-」(NHK総合、2020年放送)のサウンドトラック『Talio』や、ドラマ音楽の魅力についてお聞きしました。

浜辺美波と岡田将生がダブル主演を務めたドラマ「タリオ -復讐代行の2人-」
――瀧口さんご自身もNHKドラマ「タリオ -復讐代行の2人-」で、音楽を担当されました。どんな風に曲作りをされたんですか?
比較的自由にやらせていただいたので、そんなに苦労はなかったです。ただ、曲を作るのが楽しくなってしまって……。1日に7曲ぐらいのペースで録音を始めて、途中で作り過ぎてしまったことに気づいて修正をしました。
シーンに合わせてお題をもらい、曲を作っていくんですが、実際にはアクションシーンの曲は多くあるけど、感動するシーンや、悲しいシーンの曲が足りなかったり。
さらに、“悲しい”にもいろいろなシチュエーションがあるので、後半は少しバリエーションが足りなくなってしまい、焦った覚えがあります。

――作られた曲は、瀧口さんが聴かれてきたドラマ音楽のエッセンスが感じられます!
“復讐代行をする探偵事務所”が舞台のドラマだったので、真っ先に浮かんだのが「探偵物語」(日本テレビ系、1979年)や「傷だらけの天使」(日本テレビ系、1974年)などでした。打ち合わせのときに「ザ・ハングマン」(テレビ朝日系、1980年)というワードも出ていましたね。
制作サイドから言われたお題は、“シティ・ポップ”。でも、探偵ものをやるのであれば、やはりジャズファンクとかが合うな〜と考えていて。大野雄二や、井上堯之、大野克夫などを意識して、曲を作りました。
最近はバンドサウンドの劇伴が減ってしまったので、そんな古き良き劇伴を今の時代にやったら面白いかな、と思っていましたね。
――主題歌も劇伴も担当したことについては、どう感じていますか?
昔は劇伴を作っている音楽担当が主題歌も作っていたこともあり、主題歌から劇伴まで一貫しているものが多かった。なのでサントラにしても、作品としてまとまるものが多かったんです。それが、1980年代ぐらいからタイアップが増えていった、という流れがあります。
たまに面白いアーティストを起用することもありますが、今の時代もタイアップが中心であることに変わりはないと思います。そういうなかで「タリオ」は、主題歌も劇伴も流線形と一十三十一でやらせていただいた。珍しかったと思いますね。
流線形/一十三十一「悲しいくらいダイヤモンド」(NHK総合「タリオ -復讐代行の2人-」主題歌)
――最後に……ドラマと音楽のイイ関係とは何でしょうか?
音楽は、あくまでもドラマを引き立てる役割です。なので主題歌は、ドラマの方針が集約されているのがベストだと思っています。歌詞にキーワードが盛り込まれていれば、さらに良いですね。
劇伴はもっとテーマがフォーカスされていて、スリリングなシーンは緊張感のある楽曲にしたり、走っているシーンはテンポが早かったり、そのときの感情や状況を表現する曲であってほしいと思います。
Profile

クニモンド瀧口(流線形)
2003年に、流線形として音楽活動を開始。
2020年、NHKドラマ「タリオ -復讐代行人の2人-」のサウンドトラック『Talio』を流線形/一十三十一の名義で発表のほか、3枚のアルバムをリリース。
音楽プロデュースの代表作として、一十三十一『CITY DIVE』、ナツ・サマー『葉山ナイツ』、古内東子「Enough is Enough」などがある。
2019年にはクリエイティブディレクター南貴之氏と、シティポップとファッションのイベント『FASCINATION』を開催するなど、今日のシティポップブームの立役者の一人。

TVガイドみんなドラマ編集部
ドラマにまつわるコラムや、出演者・スタッフインタビューなど、ドラマがより楽しくなる記事を紹介!