名作ドラマの陰に、名曲あり――。
ドラマに欠かすことができないもの、その一つが音楽。
国民的大ヒットとなった主題歌や、名シーンの後ろで流れていた劇伴(げきばん=BGM)など、あの曲がドラマを観る側の気持ちをぐーっと高めてくれた……そんな経験は誰しもあるはず。
ミュージシャン/音楽プロデューサーのクニモンド瀧口さんが紹介するドラマの名音楽、今回は2020年に話題となった“大人のラブコメ”を彩った劇伴です。
今回ご紹介するドラマは、2020年10月26日から12月7日まで、テレビ東京系の「ドラマプレミア10」枠で全6話が放送され、同年12月14日に特別編が放送されたテレビドラマ「共演NG」です。
実力派大物俳優・遠山英二(中井貴一)と人気女優・大園瞳(鈴木京香)は、業界では公然の共演NG。かつて2人は付き合っていたが、25年前に恋愛関係のトラブルから破局します。
そんな二人が日本一小さな在京キー局・テレビ東洋の新ドラマで、25年ぶりにW主演で共演することに。しかも、キャスティングされた共演者たちも共演NGばかり。このドラマで製作総指揮・脚本・広報の一切を仕掛ける市原龍(斎藤工)の思惑とは何か?
共演NGだらけのキャストや、翻弄されるスタッフの様々な思惑が交錯する撮影現場で、遠山と大園は息の合った演技ができるのか? 25年間共演NGだった俳優2人の共演を描く、大人のラブコメディーです。

テレビ東京系「共演NG」
▶イラスト:emi555
とにかくテーマが面白い!
誰もがなんとなく気になっている“共演NG”というワードをドラマにしてしまうなんて。今回の原稿を書くために、改めてネットで“共演NG”を検索したら、本当にいろいろ共演NGの方がいるみたいで、危うくネットサーフィンしてしまうところでした(汗)。
このドラマの企画・原作は秋元康さん、監督は大根仁さん。
秋元さんといえば作詞家の顔や、僕の世代だと、おニャン子クラブだったり、アイドルの企画として時代を築いたAKB48などが有名ですが、テレビドラマの企画や原作なども多く手がけています。現在放送中のドラマでは「真犯人フラグ」(2021年~、日本テレビ)、「もしも、イケメンだけの高校があったら」(2022年、テレビ朝日)、「ユーチューバーに娘はやらん!」(2022年、テレビ東京)などが話題になっています。
これも秋元さんだったの?と、びっくりするほどの意外なジャンルや仕事量は、もう圧巻としか言いようがありません。
一方、大根監督といえば、ドラマ版「モテキ」(2010年、テレビ東京)の印象が強いです。原作も面白いのですが、ドラマがとにかく面白かった。脚本、演出、BGMが秀逸で、これがきっかけで大根監督のドラマや映画を観るようになりました。
そう、面白くないわけがないメンバーが名を連ねているんです。
そして音楽担当は、KIRINJIの堀込高樹さん。
テーマ曲「共演NGのテーマ」はフィリーソウルやディスコを彷彿とさせる、かっこいい曲です。残念なことに、ドラマ用なので1分と短いのですが、これは名曲だと思いました。
また、高樹さんのプログラミングによる劇伴は、KIRINJIのバンドサウンドとはまた違い、ドラマのシーンに深い印象を与えています。
※編集部注
フィリーソウル……1970年代前半に米国・フィラデルフィアで生まれたソウル・ミュージック。
さらに、このドラマの見どころは、何よりキャスティングが素晴らしいこと。
主演の中井貴一さんは、「ふぞろいの林檎たち」(1983年、TBS)から、僕の好きな俳優の1人でもあります。真面目でニヒル、ダンディーなオーラを醸す中井さんですが、そんなタイプがコメディーをやるから面白い。「ふぞろいの林檎たち」からその片鱗はありましたが、「共演NG」でも期待を裏切りません。
一方、W主演の鈴木京香さんは、「オンリー・ユー〜愛されて〜」(1996年、日本テレビ)がきっかけで、好きになった女優さんでした。「オンリー・ユー」では華麗なモデルの役を演じていましたが、このドラマでは人気女優という役どころ。
この2人の掛け合いや表情が、高樹さんによる劇伴のリズムとマッチして、観ていて飽きませんでした。
ところで、実は同時期に、僕のプロジェクト・流線形は一十三十一さんと「タリオ 復讐代行の2人」(2020年、NHK総合)の音楽を担当していました。
そのオープニング曲「金曜日のヴィーナス」を歌ってもらったのが、なんと高樹さんの弟・堀込泰行さん。
局は違えど、同じタイミングで兄弟が主題歌を歌っている!
「共演NG」は、それを知って偶然に驚いた、記憶に残るドラマです。
📺番組情報
テレビ東京系「共演NG」
【出演】
中井貴一/鈴木京香/山口紗弥加/猫背椿/斎藤工/リリー・フランキー/里見浩太朗 ほか
Profile

クニモンド瀧口(流線形)
2003年に、流線形として音楽活動を開始。
2020年、NHKドラマ「タリオ -復讐代行人の2人-」のサウンドトラック『Talio』を流線形/一十三十一の名義で発表のほか、3枚のアルバムをリリース。
音楽プロデュースの代表作として、一十三十一『CITY DIVE』、ナツ・サマー『葉山ナイツ』、古内東子「Enough is Enough」などがある。
2019年にはクリエイティブディレクター南貴之氏と、シティポップとファッションのイベント『FASCINATION』を開催するなど、今日のシティポップブームの立役者の一人。
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