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TVガイドみんなドラマ編集部
2021.12.16
✒変革と挑戦が続く2時間ドラマ……極上のエンターテイメントの魅力とは!?
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1977年、「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日)から始まった2時間ドラマ・40年の歴史。
2000年代以降、主役交代や番組終了など試練を乗り越えながら、放送局が続けてきた変革と挑戦をひも解きます!

※本稿は、大野茂『2時間ドラマ 40年の軌跡 増補版』(東京ニュース通信社)の一部を再編集したものです。

テレビ東京の市場参入

 2000年に入ると、フジの月9に代表される連続ドラマが失速気味になる。
 好不調の波が激しい連ドラに対し、2時間ドラマは固定客がおり、ほぼ毎週15%前後をとる。敵失と言えなくもないが、2時間ドラマは主流のシリーズものが半年など適度に間隔が開くので、程良い「お待たせ感」があり、昔からのなじみ客をなんとか維持していた。
 もう一つ、2時間ドラマに少なからず味方したのはフジテレビ系で放送された『警部補 古畑任三郎』(’94〜’06年)と『踊る大捜査線』(’97〜’98年)の存在である。2時間ドラマがあれこれと試行錯誤していた’90年代の中期から後期、この二つの番組が人々の興味をサスペンス、刑事ドラマにつなぎとめておいてくれたのだ。

 さらに2000年の秋には民放各局へ驚きの知らせが入った。かつて番外地と見なされていたテレビ東京が、ついに2時間ドラマに参入すると表明したのだ。
 月曜はTBS、火曜は日テレ、金曜はフジ、土曜はテレ朝と、各局が並ぶ中、水曜にテレ東の『女と愛とミステリー』が割って入る構図になった。
 内容も、松本清張、夏樹静子、西村京太郎、内田康夫といった人気作家の原作から選び、主演には渡辺謙、舘ひろし、黒木瞳、浅野ゆう子、沢口靖子といった大物が名を連ねた。

看板番組で主役交代

 老舗の土ワイでも看板番組のリニューアルが進んでいた。最多の作品数を誇る『西村京太郎トラベルミステリー』で、十津川警部役を三橋達也(当時76歳)から高橋英樹(当時56歳)へと交代した。平均視聴率は19・96%と安定した人気を保っている今こそ、若返りを図りたい。そう考えたのは塙淳一プロデューサーである。
 それまでは、三橋の年齢も考慮して、十津川は主に本部で指揮、コンビの亀井刑事(愛川欽也)は現場へ、と分けていた。しかし、シリーズ34作目を迎え、亀井役の愛川も齢66(当時)に。「カメさん一人で動くのも大変だろう」と、塙は十津川を行動的なキャラクターに生まれ変わらせることにした。そこで満を持しての登場が高橋英樹である。

 新・十津川の高橋は出番が少ないどころか、亀井の愛川と一緒に移動する場面もかなり増えた。それにより全体のテンポもかなりアップ、番組自体も若返った。今まではあまり描かれなかった2人の心の交流にもスポットが当てられ、小料理屋の女将(後に十津川の妻)として浅野ゆう子も新たにレギュラーに加わった。
 プロデューサーの塙は、当時の取材で「2人とも行動的になったが、カメさんは従来通り人情の人、高橋さんには巨悪に立ち向かう役割を割り振りたい。警察の縄張り意識の弊害なども描いていく」とコメントしている。

40年を前に、さようなら

 それは、本当に突然のことだった。国産テレフィーチャーが始まって、40周年を迎えようという2017年、2時間ドラマの放送に大きな地殻変動が起きた。
 TBSの2時間ドラマ『月曜名作劇場』は、スタートを従来の夜9時から1時間繰り上げ、8時にした。視聴のメインは50〜70代で、この層は夜8時台の視聴がピークで、ドラマが佳境にさしかかる10時にはテレビを消す人が多いことが調査で分かったからだ。渡瀬恒彦、伊東四朗コンビで放送していた『十津川警部シリーズ』は新たに十津川警部に内藤剛志、亀井刑事に石丸謙二郎を起用した。

 そして対する『土曜ワイド劇場』には終演の鐘が鳴り響き、日曜への移設が告げられた。土ワイ最後の演目は『西村京太郎トラベル67 箱根紅葉・登山鉄道の殺意~』。かつて三橋達也が演じた十津川警部は高橋英樹、愛川欽也が長らく演じていた亀井刑事は高田純次に代わっていた。
 殺害法は定番の撲殺、中盤にホワイトボードに写真を貼っての情報整理と推理、紅葉が燃える箱根に「(山村)紅葉」も加わり大団円。富士山を望むススキの原で、犯人が涙ながらに告白し、いつも以上に「土ワイらしく」「広い画で」終わった。最後の幕引きをしたのは、ベテラン・村川透監督。視聴率は12・9%だった。
 土ワイ最後の3年は、放送枠が2時間6分、長いときは2時間21分にも及んだ。それまでより15分も長い。ドラマで15分を延ばすことは、バラエティーで15分を延ばすのとは、大変さが違う。本来は1時間50分で犯人が独白するシーンなのに、視聴者を引きつけたまま、さらに話を15分も続けなくてはならない。
 ある制作者は、筆者の取材に応えて「10時・11時と2回も時刻をまたぐ。2回もどんでん返しをすることが、土ワイの命を縮めたのではないか」と語った。
 「やらなくてもいいことまでやる過剰なエンタメ」それが土ワイの特色だった。いつからか、それを人々が当たり前と思うようになった。が、人の心はうつろい易い。気まぐれな大衆に翻弄され続ける2時間ドラマを更なる試練が襲うのだ。

▶▶2時間ドラマ タイトルの変遷

復活の救世主・テレ東、老舗のテレ朝は新ジャンルを試行中

 だが、2時間ドラマ40数年の軌跡には、まだどんでん返しの続きがあった。民放で2時間ドラマ最後発のテレビ東京が’20年4月から『プレミア8』を新設したのだ。バラエティとの混成枠であるが、ほぼ半分の比率でミステリー/サスペンスの放送が再開された。独自路線のテレ東ゆえに視聴率の合格点も他局より低めである。平均7〜8%、たまに10%越えを記録し、むしろテレ東としては有力な番組といえる。他局が2時間ドラマから撤退したことで残存者利益を独り占めした格好だ。個々の作品も、コメディータッチの素人探偵よりも、小杉健治・堂場瞬一・今野敏など原作のある本格刑事ものを指向した原点回帰の内容が多い。過去の名作リメークにも果敢に挑んでいる。ハードルが低いぶんだけ企画が通りやすい好循環も生んでいるようで、コンスタントに2時間ドラマを作り続けるテレ東の今後に一筋の光明が見える、と言ったら期待しすぎだろうか。

 テレビ朝日も『欠点だらけの刑事』(欠点称賛ミステリー)や『警視庁ひきこもり係』(全員部屋から出ないでリモート捜査)といった新ジャンル開拓に意欲を燃やしている。これらが、世相に合わせた新しいタイプの作品として定着するのか、時代の徒花となるのか、2時間ドラマの老舗・テレ朝のチャレンジは続く。

高橋英樹さん主演! 2時間ドラマ 見逃し配信情報

月曜プレミア8「再雇用警察官3」
 
【出演】
高橋英樹 本仮屋ユイカ 林泰文 石黒賢 ほか
 
 
 
📺見逃し配信はこちらから!

『2時間ドラマ 40年の軌跡 増補版』

著者:大野茂

1977年にスタートした「土曜ワイド劇場」から、2時間ドラマの伝説は始まった! 
テレビ映画としてのスタート、スピルバーグとの意外な関係、人気シリーズの誕生、火曜サスペンス劇場のスタート&2時間ドラマの戦国時代、時代を映す鏡・長いサブタイトル、そして2時間ドラマの未来…詳細なデータと、製作に関わった主要人の証言に基づく「2時間ドラマ」の歴史の全てがここにある。2時間ドラマを愛する、すべての人におくります。今回の増補版では、出演者データやスタッフデータ(主演、助演、監督、音楽、脚本、テレビ局別ヒストリー)など、データ部分を大増強! これまでになかった「2時間ドラマ」本の超決定版です。

● 発売⽇:2021年12⽉22⽇(水)※⼀部、発売⽇が異なる地域がございます
● 定 価:1,980円
● 発 ⾏:東京ニュース通信社
● 発 売:講談社

イラストレーション/岡田成生

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